第四百八十三話 マリー・エドワーズはステータス画面に『デメリットスキル』という項目が増えたことに気づき、フレンドからのメッセージを確認する



「わうー?」


「どうした? マリー。なんでフリーズしてんの?」


虚空を凝視して固まっているマリーに気づいた真珠とクレムが問いかける。

真珠とクレムに声を掛けられたマリーは、今、自分が目の当たりにした事実を告げるべく、口を開いた。


「私の最大HP値が1になってる……っ!!」


マリーの叫び声が店内に響き渡る。

何事かと幼女を注目するプレイヤーたちに、マリーは頭を下げて謝った。


「うるさくしてごめんなさい……っ」


素直に謝る幼女に絡むマナーの悪いプレイヤーはいなかった。

フローラ・カフェに来られるのはプレイヤーレベル5以上で会員カードを持っているプレイヤーとその友人等だけなので基本的にマナーが良い。

謝罪を終えてため息を吐くマリーを見つめてクレムが口を開く。


「マリーの最大HP値が1になってるって本当か? 見間違いとかじゃなくて?」


「……見間違いじゃない。なんで? 状態は正常だし、ログインしたばっかりでバトルとかもしてないのに……っ」


マリーは混乱しながら自分のステータス画面を見つめ、そして見たことのないワードに気づいた。

スキル欄に『デメリットスキル』という項目が増えている……!!


「なんか、ステータス画面に『デメリットスキル』っていう項目が増えてるんだけど……」


「デメリットスキル? あー。スキルの説明を聞いた時に、サポートAIがなんかそんなこと言ってた気がするけど覚えてない」


「サポートAIさんが『デメリットスキル』についてなんか言ってたの!?」


クレムの言葉にマリーは食いつく。

サポートAIはマリーがデメリットスキル『大泣き』を取得した時にアナウンスをしていたのだが、マリーは大泣きしていてアナウンスを聞いていなかった。


「じゃあ、今すぐに転送の間に行ってサポートAIさんに聞いてくる……っ」


「ちょっと待て。マリー」


クレムは即座に『リープ』を唱えて転送の間に行こうとするマリーを引き留めて言葉を続ける。


「これって情報屋案件じゃね?」


「……そうかも。クレム、すごいっ。冴えてる……っ」


「だろ?」


マリーに褒められたクレムはドヤ顔をして口を開く。


「オレが情報屋に連絡を取ってみるからさ。マリーはフレンドからのメッセージを確認しろよ」


「そうだった。私、メッセージを確認しようと思ってステータス画面を開いたんだ」


クレムの言葉を聞いたマリーは慌ててフレンドからのメッセージを確認する。

クレムはそんなマリーを見て苦笑した後、ステータス画面を出現させて情報屋へのメッセージを書き始めた。

真珠はマリーとクレムの話を聞いていたが、特に自分にできることはないと判断して食べかけのバナナマフィンを食べ始める。


マリー宛てに届いたメッセージの差出人はアーシャだった。

アーシャの中の人である芝浦真子は桜台女子学院の二年生だ。

悠里と真子は『アルカディアオンライン』の中だけでなく、リアルでも顔を合わせて友達になった。


真子が通う桜台女子学院も今日、中間テストが終わったから真子もゲームをプレイしているのだろうか。

マリーはそんなことを考えながらアーシャからのメッセージに目を通す。





マリーちゃん!! サポートAIから『最愛の指輪』の説明を聞いた!?

ウチ、一秒でも早く『最愛の指輪』をフレデリック様に渡したくて領主館に行ったんだけど、フレデリック様に会えないの!!

『港町アヴィラ領主の感謝状』を使ったから領主館の客室までは入れたんだけど……っ。

助けて!! マリーちゃん!!

マリーちゃんのカレシのユリエル様に、ウチとフレデリック様を会わせてほしいって頼んでくれないかな?

わがままだってわかってるし、マリーちゃんには迷惑だと思うけど、でも、ウチ、真剣にフレデリック様に恋をしてるの……!!

領主館で、マリーちゃんからの返信を待ってます……!!





「アーシャさん……」


マリーはアーシャからのメッセージを読み終えて呟く。

マリーもユリエルに恋をしているので、恋を叶えるために必死になってしまうアーシャの気持ちはすごくよくわかる。

アーシャのためにマリーにできることがあるのなら、やってあげたい。

とりあえずユリエルにメッセージを送ってみようとマリーは思う。

今日、ユリエルは父親と過ごしたいと言っていたから領主館にいる可能性が高い。

マリーはユリエルへのメッセージを考え始めた。


***


風月8日 夕方(4時23分)=5月20日 14:23



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