第四百八十一話 マリー・エドワーズはクレムが席に戻るのを待ってから、真珠と一緒に自販機に向かう
真珠を抱っこしたマリーはクレムが確保してくれた4人掛けのテーブルに歩み寄り、クレムと向かい合う座席に真珠を座らせる。
そしてマリーは真珠の隣に座った。
「マリー。オレ、先に買ってくるから1000リズちょうだい」
クレムは満面の笑みを浮かべて右手の手のひらを上にしてマリーに差し出す。
マリーはアイテムボックスから銀貨1枚を取り出してクレムの手のひらに乗せた。
そういえば、会員カードが無いクレムでも銀貨で買い物ができるのだろうか?
「サンキュ。マリー。じゃあ、自販機で買ってくるっ」
クレムは銀貨1枚を握りしめて席を立ち、店内の自販機に向かう。
真珠は前にマリーと自販機で買い物をしたことを思い出しながらクレムを見送った。
マリーはクレムを羨ましそうに見つめる真珠の頭を優しく撫でて口を開く。
「クレムが戻ってきたら、私と真珠が買いに行こうね」
「わんっ」
マリーの言葉に真珠は肯く。
「真珠は何を食べたい? 私は今日はミルクレープの気分なんだけど」
「わうわうーう?」
真珠は『みるくれーぷ』がわからなくて首を傾げる。
マリーは真珠の困惑を感じ取って、口を開く。
「私がミルクレープを買って真珠に一口あげるね。気に入ったら次は真珠も買えばいいよ」
「きゅうん……」
「真珠はこの前食べておいしかったバナナマフィンを食べたらいいんじゃない?」
マリーの言葉を聞いた真珠は甘くておいしいバナナマフィンの味を思い出しながら肯く。
やがて『フローラ・バナナマフィン』を1つと『フローラ・チョコチップクッキー』2枚を乗せたトレイを持ってクレムが戻ってきた。
会員カードがなくても銀貨で買い物ができたようだ。
『アルカディアオンライン』はゲームだし、サポートAIがいい感じに処理してくれたのかもしれない。
クレムは嬉しそうな笑顔を浮かべて口を開いた。
「マリー。『フローラ・バナナマフィン』を1つと『フローラ・チョコチップクッキー』2枚でちょうど1000リズだったぜ。ゴチになりますっ」
「飲み物は買わなかったの?」
クレムが買ったものを見て、マリーは首を傾げて問いかける。
「飲み物を買ったら食い物の数を減らさないといけないだろ? オレは食いたい」
クレムはブレない。ある意味、清々しくさえ思える。
真珠はクレムのトレイの上にある『フローラ・チョコチップクッキー』に熱い視線を注いでいる。
「わうー!! わんわぅ、わっうー、わうう!!」
「真珠は『フローラ・チョコチップクッキー』を食べたいの?」
マリーは真珠の言葉を確認するために問いかける。
真珠は何度も首を縦に振った。
「真珠。オレのチョイスを真似していいぜ」
「わうう?」
真珠はクレムが言った『ちょいす』の意味がわからなくて首を傾げる。
クレムはなぜ真珠が首を傾げているのかわからずに首を傾げ、マリーに視線を向けて口を開いた。
「マリー。真珠はなんで首を傾げてるんだ?」
「たぶんチョイスの意味がわからないのかも?」
「そっか。チョイスは……えーっと、選ぶ? みたいな感じ。つまりオレが選んだのと同じように真珠も『フローラ・バナナマフィン』を1つと『フローラ・チョコチップクッキー』2枚を買っていいよって話」
「真珠。今のクレムの説明でわかった?」
「わんっ」
真珠はクレムとマリーに視線を向けて肯く。
真珠は『ちょいす』を理解した!!
「それで、真珠はどうする? クレムと同じメニューにする?」
マリーに問いかけられた真珠は少し考えて肯いた。
真珠はバナナマフィンもチョコチップクッキーも両方食べたい!!
「了解。じゃあ、自販機に買いに行こうね」
「わんっ」
マリーは席を立ち、真珠は椅子から飛び下りた。
***
風月8日 夕方(4時01分)=5月20日 14:01
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