第四百八十話 マリー・エドワーズと真珠はクレムとフローラ・カフェ港町アヴィラ支店に行き、カウンターで会員カードを出す
「マリーの学校も新型コロナで休校とかじゃないよな? もしかしてサボり?」
クレムはマリーを通学しているプレイヤーだと思っているようだ。
「違いますっ」
クレムの軽口にマリーはむくれる。
悠里は中間テストを乗り切るために『アルカディアオンライン』を封印したのだ。
学校をサボってゲームで遊んでいると思われるのは心外だ。
マリーは衆人環視の中でプレイヤー情報のやり取りをするのは気がすすまないと思いながら口を開く。
「クレム。時間があるならそこのフローラ・カフェでちょっと話さない? 私、奢るよ」
ここは中学生一年生の悠里が小学生のクレムに奢るべきだろう。
マリーは5歳だが、心はお姉さんなのだ。
「奢り? マジで? やったっ」
クレムは5歳の幼女に奢られることに何の抵抗も無いようだ。
「奢るのは、1000リズ以内だからね」
マリーは大喜びするクレムに言う。
ワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』でクレムはパーティーに出された料理やお菓子を食べまくっていた。
マリーはそれを見てクレムを大食いを生業とするフードファイターのようだと思ったのだ。
『アルカディアオンライン』には満腹度はなく、プレイヤーは食事をしてもしなくてもいい。
食べなくても空腹を感じず、能力値パラメータ等へのデメリットもない。
食べたいと思えば好きなだけ食べることができる。食べ過ぎのデメリットもない。
リアルでダイエットしているプレイヤーが好きなだけ甘いものを食べることができる。
『アルカディアオンライン』にはアレルギーはないので、食物アレルギーで苦労しているプレイヤーもゲーム内では自由に物を食べることができる。
だが『アルカディアオンライン』でおいしい物を食べるにはお金がかかる。
クレムのフードファイトに付き合っていたら、マリーの所持金が尽きてしまう。
だから、マリーはクレムに注文をつけた。1000リズ以内なら、奢りの許容範囲内だ。
「1000リズ以内。オッケー。目いっぱい選ぼう」
そこは小学生の発想か、クレムには遠慮が無いようだ。
マリーはおとなしくマリーとクレムの話をお座りをして聞いていた真珠の頭を撫でて口を開く。
「真珠。クレムと一緒にフローラ・カフェで話すことになったの。真珠もおいしい物を食べようね」
「わんっ!! わんわぅ、わうう!!」
「早く行こうぜ」
クレムがマリーと真珠を促し、早足でフローラ・カフェ港町アヴィラ支店に続く扉へと向かう。
マリーと真珠は小走りでクレムの後を追った。
マリーと真珠はクレムに続いてフローラ・カフェ港町アヴィラ支店に続く扉の中に入る。
フローラ・カフェ港町アヴィラ支店に入ったマリーは、アイテムボックスからフローラ・カフェの会員カードを取り出した。
カウンター内にいた白いローブを着た金髪の女性神官は背が低い幼女のマリーからカードを受け取るためにカウンターから出てきてくれた。
前に真珠と一緒に来た時に対応してくれた女性だと思いながらマリーは口を開いた。
「聖人ふたりと聖獣ひとりですっ。よろしくお願いしますっ」
マリーはそう言いながら女性神官に会員カードを差し出す。
「会員NO178549マリー・エドワーズ様。確かにカードをお預かり致します。お帰りの際にはご返却を致しますので、お声がけください」
「わかりましたっ」
クレムはマリーの受付が終わったことを確認すると席を確保するために歩き出す。
真珠はクレムについていった方がいいのかマリーを待った方がいいのか迷って視線をさ迷わせた。
「真珠。私が抱っこしてあげるね」
マリーは真珠を抱き上げ、店内に足を進めた。
***
風月8日 昼(3時58分)=5月20日 13:58
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます