第四百六十九話 高橋悠里は『アルカディアオンライン』を封印して中間テストを乗り切り、放課後の教室で要と合流する



帰宅した悠里は『アルカディアオンライン』のゲーム機器を段ボール箱にしまって封印した。

ゲーム機器をしまった段ボール箱は、祖母に預かってもらうことにした。

自室にゲーム機器を置いていたら、誘惑に負けるかもしれないと思ったのだ。

悠里は自分の意志の弱さを知っている……。


そして、祖母にゲーム機器が入った段ボール箱を渡した後、翌日の中間テストに備えて勉強し、中間テスト終了まで『アルカディアオンライン』をプレイしない日々を過ごした。


中間テスト最終日……といっても、中学一年生の中間テストは二日間だけだったのだが……終了後、悠里はテストから解放された喜びを味わっていた。

中間テストが終了した翌日は教師たちが中間テストの採点をするため、一日休みになる。

テスト明け休み、万歳!!

悠里はテスト結果のことは考えないようにしながら、これからの時間をどう過ごすか考える。

今日も、教室に要が迎えに来てくれるのも嬉しい。


「悠里。今日は『アルカディアオンライン』で遊ぶ?」


カレシの拓海が迎えに来てくれるのを待っている晴菜が悠里に尋ねる。

悠里は笑顔で晴菜に肯いた。


「中間テストの前日からゲーム機器を段ボールに封印してたけど、今こそ封印を解くよ……!!」


「封印って、大げさじゃない?」


「大げさじゃないよ!! テスト勉強が嫌になって『アルカディアオンライン』で遊びたくなっても遊べないように、ゲーム機器を入れた段ボールをお祖母ちゃんに預かってもらってたの!! それで、テストが終わる日に私の部屋に置いておいてもらう約束なの!!」


「それは……封印と言っても過言じゃないわね」


晴菜がそう言った直後、晴菜のカレシの拓海が教室に現れた。


「時間が合ったらあたしとも『アルカディアオンライン』で遊んでね。じゃあね」


晴菜は悠里にそう言って手を振り、通学鞄を持って教室を出て行く。

……いつの間にか、教室内には悠里ひとりになった。

でも、今日は寂しいとは思わない。

大好きな要と一緒に下校できて、しかも家に帰ったらたっぷりと『アルカディアオンライン』で遊べるのだ!!

しかも明日は金曜日なのに学校は休み……!!

金・土・日の三連休なんて嬉しすぎる……!!


「『アルカディアオンライン』にログインしたら、まずは何をしようかなあ……」


まずは今日のGPを請求して、今日の傷ついたことを報告してKPを貰おう。

中間テストで人間の価値を測られるという苦痛を味わったのだから、きっとたくさんKPを貰えるはずだ。


「でも英語はちょっと自信あるかも。英単語カードで覚えた単語がいっぱい出てきたし」


いっぱいというほどの問題量ではないのだが、悠里は自分の基準で物を考えて呟く。

そして『アルカディアオンライン』でやりたいことに思いを巡らせながら口を開いた。


「真珠がスロットマシーンで遊ぶための椅子を作りに行きたいし……職人ギルドに行けばいいのかな? あと、うちの庭にラブリーチェリーの種を埋めたいし、あとグリック村で買った食材で料理もしたいし……っ。今、料理のレシピを検索しておこうかな」


『アルカディアオンライン』でやりたいことが多すぎる!!

だが悠里の頭には『マリーの武器を用意する』ということや『アイテムボックスに入れっぱなしのゴミを整理する』ということは思い浮かんでいない……。


「悠里ちゃん。待たせてごめん……っ」


悠里がスマホで『卵 小麦粉 牛乳 レシピ 検索』でレシピ検索をしていると息を切らして要が教室に駆け込んできた。


「要先輩……っ」


悠里は要が来てくれて嬉しくて、スマホを片手に立ち上がる。

悠里の席の前に立った要は息を整えて、悠里の目をまっすぐに見つめた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る