第四百六十七話 高橋悠里は教室で晴菜とお喋りをしながら要を待ち、晴菜を見送って教室内でひとりになる
朝のホームルームが終わり、一時間目の授業が始まった。
悠里は授業中、教科担任が『中間テストに出るかもしれない』と脅すように言った箇所を必死で書きとめて覚えようとつとめた。
4時間目の授業を終え、給食を食べて午後の授業を終えて帰りのホームルームになったその時、悠里は要と今日の放課後の予定の約束をしていないことに気がついた。
担任の話を上の空で聞き流しながら、悠里はスマホを確認した。
要からのメッセージが来ている……!!
悠里は急いで要からのメッセージを確認する。
♦
悠里ちゃん。昨日はゲームを一緒に遊べて楽しかったよ。ありがとう。
今日の放課後、教室まで迎えに行くから、一緒に帰ろう。待っててね。
都合が悪い場合は返信をください。
♦
悠里が要からのメッセージを何度も読み直しているうちにいつの間にか帰りのホームルームが終わっていた。
担任が教室を出て行くと、クラスメイトがお喋りをしたり帰り支度をして席を立ったりし始める。
「悠里。さっきからずっとスマホ見てるみたいだけど、先輩からメッセージ来たの?」
晴菜に問いかけられた悠里は肯く。
「要先輩、今日も教室に迎えに来てくれるって。はるちゃんは? 氷川くんと待ち合わせしてるの?」
「うん。拓海くんも教室に来てくれるって。それで今日は図書室で明日の中間テストのテスト科目の勉強してから帰ろうと思ってるの」
「明日から中間テスト……。嫌だ。無理……」
悠里は愚痴を零しながら帰り支度を始めた。
要が教室に来てくれた時にすぐに帰れるようにしたい。
愚痴を零す悠里を呆れたように見つめて晴菜は口を開いた。
「中1の中間テストなんてめちゃくちゃ範囲狭いんだから、今から無理とか言ってたらこれからどうするのよ……」
「そんなこと言ったって、嫌なものは嫌だし、無理なものは無理なの!! 人には向き不向きがあるんですーっ!!」
「あたしは悠里、勉強に向いてないとは思わないけど。お兄ちゃんと同じゲーム好きだし」
「ゲームが好きな人が圭くんみたいに勉強できるわけじゃないんだよ。はるちゃん」
「お兄ちゃんは家で全然勉強しないでゲームばっかりしているのに、なんで県内有数の進学校で普通に成績上位でいられるのか本当、理解に苦しむわよ」
「でも圭くんって夏休みの宿題、夏休み始まって、三日間で終わらせてたよね。毎年」
「そうそう。話しかけても聞こえないくらい集中しまくってやってた。だからあたし、夏休みの宿題は夏休みに入って三日間で終わらせるものだと思ってたんだよ。小学校三年生まで」
「はるちゃん。そんな勘違いしていたの? 可愛い……」
悠里と晴菜がお喋りをしていると、晴菜のカレシの拓海が教室に現れた。
晴菜は悠里に手を振って通学鞄を持ち、教室を出て行く。
……いつの間にか、教室内には悠里ひとりになった。
「寂しい……」
悠里はぽつりと呟く。
誰かを待つ時間は、寂しい。
……ひとりの時間は、寂しい。
「英単語カード、見よう……」
悠里は要を待ちながら英単語カードをパラパラと見る。
「悠里ちゃん。待たせてごめん……っ」
悠里が英単語カードを10回パラパラと見終えたその時、息を切らして要が教室に駆け込んできた。
「要先輩……っ」
悠里は要が来てくれて嬉しくて、笑顔になって立ち上がる。
そして二人で仲良く教室を出た。
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