第四百六十六話 マリー・エドワーズはログアウトして高橋悠里は幼なじみの晴菜とお喋りをしながら登校する



マリーはスロットマシーンをアイテムボックスに収納して自分のベッドに座った。

それから履いていた『疾風のブーツ』を脱いでアイテムボックスに収納する。

真珠はジャンプしてベッドに乗った。

マリーは真珠の頭を優しく撫でて微笑み、口を開いた。


「今度、真珠がスロットで楽しく遊べる椅子を買いに行こうね。真珠がひとりで座ってスロットのボタンを押せる椅子だよ」


「わんっ!!」


真珠はマリーの提案に尻尾を振って肯く。

そしてマリーと真珠はベッドに横になり、マリーは口を開いた。


「ログアウト」


悠里は自室のベッドの上で目を開けた。

無事にログアウトできたようだ。


「今、何時だろう……?」


悠里はそう呟いてヘッドギアを外す。

それから首を一回まわして、肩をまわしてからヘッドギアの電源を切り、ゲーム機の電源を切った。


「ゲーム機器の充電をしよう」


悠里はゲーム機器の充電をして明日の学校の準備を終えた後、スマホで時間を確認する。


「日付は変わってない。私、夜更かししてないってことになるよね。でも朝、起きられないとお母さんにまたゲーム機器を没収されちゃうかもしれないから、アラームセットしよう。……うん。これでオッケー」


悠里はアラームをセットしたスマホを枕元に置いて、それからトイレを済ませ、部屋の電気を消して就寝した。


……アラームの音がする。


「んん……」


悠里はアラームの音から逃れるために、スマホに背を向けた。アラームは鳴り続けている。

悠里は観念してスマホと向き合い、スマホを手にしてアラームを止めた。


「今何時……? 6:47かぁ……。そういえば7時より前に起きて『寝不足じゃないよちゃんと寝たよアピール』しようと思ったんだった……」


悠里は気合を入れて起き上がり、パジャマから制服に着替えてトイレに向かった。

一階に下りてトイレを済ませた悠里は、洗面所で髪を結い上げ、それから顔を洗う。

顔を洗い終えて鏡を見ると、眠そうな顔はしていなかった。

……若干眠いけれど、夜更かしをしてゲームで遊んでいることはバレないはずだ。たぶん。


その後、悠里は朝食を食べて歯を磨き、学校に行く支度をして通学鞄を持ち、家を出た。


いつも一緒に登校している幼なじみの晴菜と合流した悠里は、朝の挨拶をした後、気になっている話題を口にする。


「そういえば昨日、生徒会をやめるとか騒いでた人たちは結局、残ってくれることになったの?」


悠里の言葉を聞いた晴菜は首を横に振る。


「話し合ったけど、誰も生徒会に残らなかったって。あたしは、生徒会をやめたら拓海くんが困るってわかってるのに自分たちの都合だけで生徒会をやめるって決めた人たちのことは信用できないから、誰も残らなくてよかったって思ってる」


「そっか……」


「あたしも球技大会が終わるまでは生徒会を手伝うつもりだし、引退した三年生の生徒会メンバーにも声を掛けるって」


「生徒会って三年生の引退、早いんだねえ」


「うちの学校は一学期の始業式に生徒会役員の引退セレモニーと新しい生徒会役員への引継ぎがあるらしいの。その時に三年生が引退して、新たな生徒会役員が発表されるんだって」


「そうなんだ。生徒会役員を選ぶ選挙とか投票とかするの?」


「ううん。拓海くんは、生徒会役員が生徒会を手伝った生徒の中から自分の役職の後任を選ぶって言ってた。選挙とか投票とかだと人気がある生徒しか当選できないし、生徒会の実務ができる子に生徒会役員になってほしいからそういう体制になってるみたい」


「地味な活動を頑張ったら生徒会の先輩に認められて、後任を任されるってなんかいいね」


「あたしもそう思う。生徒会役員を決める投票とか選挙とか、今はコロナ禍だし、先生たちの負担にもなるかもだしね」


18歳になれば、悠里たちは選挙権を得る。

それからは死ぬまでずっと投票することができるのだから、中学生のうちは選挙も投票もしなくていいと悠里は思う。


「でも、生徒会の雑用をやるっていう人がいなかったらどうするの?」


「その時は学級委員とか体育委員、美化委員の子に先生や生徒会役員が声をかけるみたい。今年は希望者が多かったから生徒会活動をやりたくない子とかに声ををかけずに済んだって喜んでいたみたいなんだけどね……」


生徒会の雑用を担う希望者が多かったのは晴菜のカレシの拓海が人気があったからということだろうか。

悠里はそう思いながらため息を吐く。


「モテるのも大変なんだねえ」


「そうよ。よく知らない人から告白されたり、好みじゃない人から告白されて、断ると睨まれたり怒られたり嫌われたりするのよ。最悪よ」


「好きだから告白するのに断られたら一瞬で嫌いになるのかなあ?」


「その程度の『好き』ってことでしょ。拓海くんは私が告白を一度断っても待っていてくれたもの」


悠里と晴菜はお喋りをしながら歩き、学校に到着した。



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