第四百六十四話 マリー・エドワーズと真珠は港町アヴィラの教会に死に戻り、ユリエルと合流して教会を出る
真珠を抱っこしたマリーとユリエルがカジノのスタッフが出入りする扉を探せないまま、時間だけが過ぎていく。
ユリエルはスタッフがカウンター奥に退避して空っぽになっているアイテム交換カウンターに目を向けて口を開いた。
「マリーちゃん。真珠くん。カウンター奥に扉があると思うんだけど、行ってみない?」
階段が人で詰まって上がれずに最後尾にいる客のうちに数人が、受付カウンターを乗り越えてカウンター奥に向かった。
マリーはさっき大柄な男のNPCに絡まれたことを思い出し、カウンター奥の扉のところにいるパニック状態のNPCと接するのが怖くて、カウンター奥の扉に行くことを躊躇する。
「わうー?」
真珠はマリーがユリエルの問いかけに答えないことを不思議に思って首を傾げた。
ユリエルはマリーが怯えたような表情を浮かべていることに気づいて、カウンター奥の扉に行くことはやめた方がいいかもしれないと思いながら口を開く。
「リアルではたぶん、もう夜も遅いだろうから、教会に死に戻って家に帰ってログアウトしようか」
ユリエルの言葉にマリーはほっとしたように頬を緩めて肯いた。
それからマリーとユリエルはそれぞれに『ライト』を出現させて魔力枯渇になるまで『ライト』を使い続けた。
マリーはユリエルよりMPもHPも低いので、彼より先に魔力枯渇状態になり、HPが0になって死に戻った。
光になって消えたマリーと真珠を見て、ユリエルは『ライト』を消した。
「マリーちゃんと真珠くんを待たせたら悪いし、銃で死のう」
ユリエルは魔銃の銃口を自分のこめかみに触れさせて口を開いた。
「魔力操作ON。ショット」
ユリエルは致命の一撃を受けて死に戻った。
……時間は少し、遡る。
気がつくと、マリーは教会にいた。真珠も一緒だ。
マリーはユリエルの姿を探して視線をさ迷わせる。
「ユリエル様はまだ死に戻ってないみたい。ここで待ってると他のプレイヤーの邪魔になっちゃうかなあ……?」
「くぅん……?」
教会の復活の魔方陣に、死に戻ったプレイヤーが次々に現れる。
その中にはヘヴン島で龍と戦って死に戻ったプレイヤーもいるようだ。
一度だけ使える転送の間の転送魔方陣を使ってヘヴン島に行ったプレイヤーは、もうゾンビアタックが使えないと嘆いている。
ゾンビアタックがもう使えないと嘆いているプレイヤーの話を聞くともなしに聞いたマリーは口を開いた。
「大きくて空を飛んでいてブレス攻撃を仕掛けてくる龍と戦ったプレイヤーはすごいねえ。私の転送魔方陣、使わないから売ってあげられたらいいんだけど、でも転送の間には自分しか入れないっぽいんだよね」
「くぅん……」
真珠は『てんそうのま』というところに行ってみたいと思ったけれど、どうやら行けないらしいと知ってしゅんとする。
その直後、死に戻ったユリエルが現れた。
「ユリエル様!!」
「わうわう!!」
マリーと真珠はユリエルと合流できたことが嬉しくて満面の笑みを浮かべて喜ぶ。
ユリエルはマリーと真珠に視線を向けて微笑み、口を開いた。
「マリーちゃん。真珠くん。待たせてごめんね」
ユリエルの言葉を聞いたマリーと真珠は首を横に振る。
ユリエルは手に持っていた傘と銃を左腕の腕輪に触れさせて収納した後、マリーと真珠の頭を優しく撫でて口を開いた。
「じゃあ、行こうか。たぶん、教会の前でうちの馬車が待ってると思うんだ」
ユリエルはそう言って歩き出す。
マリーと真珠はユリエルの後に続いた。
***
紫月28日 早朝(1時25分)=5月17日 23:25
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます