第四百四十三話 5月17日/中間テストの勉強に飽きてログインし、サポートAIから『主人公選択・ランダムスロット』について聞く
悠里は充電していたゲーム機器をベッドに置き、ゲーム機とヘッドギアをコードで繋いで電源を入れ、ヘッドギアをつけた。
ベッドに横になり、目を閉じる。
「『アルカディアオンライン』を開始します」
サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。
気がつくと、悠里は転送の間にいた。
悠里は中学校の制服を着ている。
「私、部屋着じゃない。制服を着てるの、なんでだろう?」
悠里が首を傾げた直後にサポートAIの声が響いた。
「プレイヤーの意識の定着を確認しました。『アルカディアオンライン』転送の間へようこそ。プレイヤーNO178549。高橋悠里様。『アルカディアオンライン』アップデート情報があります。『アルカディアオンライン・プロジェクト』からの重要なお知らせがあります。お伝えしても宜しいですか?」
「よろしいです。お願いします」
「まずは『アルカディアオンライン』アップデート情報をお伝えします。転生システムの一つがプレイヤーに提示され、また『アルカディアオンライン』の総プレイヤー数が3500万人を突破したことを受けて、主人公選択時にランダムで主人公を選べる『主人公選択・ランダムスロット』を導入しました。従来の主人公選択の他に、スロットによる『主人公のランダム選択』が可能になります」
「それって人魚になってゲームをプレイしたりできますか?」
「できます」
祖母は『主人公選択・ランダムスロット』で主人公を選んで人魚主人公になったのかもしれないと思いながら悠里は口を開いた。
「『主人公選択・ランダムスロット』を見てみたいんですけど、見られますか?」
「では『主人公選択・ランダムスロット』を出現させます」
サポートAIがそう言うと、悠里の目の前にスロットマシンが現れた。
悠里はスロットマシンを眺めて口を開く。
「へえー。RPGに出てくるカジノに置いてあるスロットマシンっぽい。種族・性別/容姿・年齢/名前・ステータス等詳細の項目があるんだね」
「左様です。三項目を決定した後、プレイヤーが主人公のグラフィックとステータスを確認して納得すればその主人公でプレイすることになります。ランダムスロットでは無課金では選べないレア種族を無課金で選択することができます」
「そうなんだ。でも気に入らなかったらどうするの?」
「三回までなら、無料でスロットができます。『三回スロットをやったけど一回目の主人公がよかった』と崩れ落ちるプレイヤーの悲劇を阻止するために、一回目・二回目のスロット結果を保存することができ、プレイヤーは過去の主人公データの中から自分にとって最良の主人公を選ぶことが出来ます」
「親切!! 主人公のデータは3体までしか保存できないの?」
「主人公のデータの保存は100体まで可能です。ですが、データの保存期間は保存した直後から72時間だけです」
「72時間も保存できれば全然よくない?」
「どの主人公を選ぶか迷った挙句、75体の主人公データを消失させたプレイヤーがいます。そのプレイヤーは主人公データの消失を知らされて号泣しました」
「そっか……。それは……可哀想だね……。データ保存の制限時間をなくしてあげたらいいんじゃない……?」
「その場合、いつまでも主人公を選べず、主人公のデータだけが増えていく結果になるプレイヤーが一定数発生すると思われます」
「……うん。そうかも」
悠里は未だに主人公を選ばずに姿見の鏡で自分の姿を見て楽しんでいる母親のことを思いながら肯く。
いろんな人がいて、いろんな考え方がある。
データ保存の制限時間をなくした場合『いつまでも主人公を選べず、主人公のデータだけが増えていく結果になるプレイヤーが一定数発生する』というサポートAIの言葉を否定できない……。
「四回目からはスロット、有料になるの?」
「左様です。四回目以降はスロット一回につき1000円/1000リズが必要になります」
「ゲーム内通貨でもいいんだね。それはちょっとお得かも。もうスロットは見たので消してください」
「かしこまりました」
悠里の目の前にスロットマシンが消えた。
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