第四百四十一話 高橋悠里は要とカフェデートをしてから帰宅し、祖母の『アルカディアオンライン』のゲーム機器が届いたことを知る



学校を出た悠里は要と一緒にフローラ・カフェ星ヶ浦駅前店に行き、おいしいお菓子を食べてカフェラテを飲み、気持ちを立て直した。

今日は絶対に自分が支払うと要に言い張り、要の分を含めて、悠里が店内の自販機に買いに行くことができたのも嬉しい。


フローラ・カフェ星ヶ浦駅前店を出て、要に家まで送ってもらった悠里は要の姿が見えなくなるまで見送ってから家に入る。


「ただいま!!」


悠里は元気よくそう言って玄関で靴を脱ぎ、家の中に入った。

母親が姿を現し、微笑んで口を開く。


「おかえり。悠里」


「お母さんっ。もう元気になったの?」


悠里が問いかけると、母親は肯いた。


「心配をかけてごめんね。今日の晩ご飯はお母さんが作るわ」


「私、お祖母ちゃんのシチュー楽しみにしてたのに……」


「お祖母ちゃんには迷惑をかけたから、今晩は私が作るわよ。市販のルーを使ってもシチューはおいしいから。妥協しなさい」


「お祖母ちゃんのホワイトソースのシチューが食べたい……。お祖母ちゃんは?」


「今、ゲームやってるわよ」


「ゲーム? もしかしてお祖母ちゃんが申し込んだ『アルカディアオンライン』のゲーム機器が届いたの?」


祖母の代理で悠里が『アルカディアオンライン』のゲーム機器を申し込む手続きをしたことを思い出しながら問いかける。

祖母はパソコンの操作が苦手なのだ。

でも料理上手で美人で優しく、いつもきちんとした服を着て、出かけなくてもメイクをしている祖母なので、パソコンの操作が苦手でも全然問題ないと悠里は思う。

悠里の言葉に母親は肯き、口を開いた。


「そうよ。今日の午前中に届いたの。私が先輩として、お祖母ちゃんにゲームの遊び方を伝えたわ」


母親はそう言ってドヤ顔をした。


「お母さん、主人公すら選んでない状態で先輩とか言う……?」


「ゲーム機とヘッドギアをコードで繋いで電源を入れてヘッドギアのつけ方と充電器の使い方を教えたのよ。先輩としての役目を果たしたわ」


「お祖母ちゃん、ゲーム楽しいって?」


「お昼ご飯を食べながらお祖母ちゃんのゲームの話を聞いたんだけど、楽しかったみたいよ。人魚になって海を泳いでるって言ってたわ。今もゲームの中で人魚になっているんじゃない?」


「人魚!? なにそれ、知らない種族……!!」


情報屋さんに売れそうな情報……っ!!

目を輝かせる悠里に鞄を置いて手を洗うように促して、母親は立ち去った。

悠里は母親が元気になってよかったと思いながら二階の自室に向かう。


自室に入り、学生鞄を置いてグレーの不織布マスクをゴミ箱に捨てる。

充電中の『アルカディアオンライン』のゲーム機器はそのままになっていた。

母親に没収されていなくてよかった。


それから悠里は一階に戻って手洗いとうがいをした後、トイレに入って二階に向かった。

生理の下腹の痛みは昨日よりずいぶん和らいでいる。


自室に戻った悠里は制服から部屋着に着替えて、通学鞄からノートパソコンを取り出して充電する。

その後、通学鞄に入れていたスマホを取り出した。


「篠崎先輩の電話番号を着信拒否にして、アドレスをブロックしよう」


今は美羽の名前は見たくないし、聞きたくない。

悠里はスマホを操作して萌花の電話番号を着信拒否にして、アドレスをブロックした。

萌花を拒絶した罪悪感を感じるかと思ったけれど意外と気持ちがすっきりして、悠里は苦笑した。



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