第四百三十七話 高橋悠里と要は職員室前の廊下で萌花と合流し、矢上先生と校長室に行き、校長先生と向かい合ってソファーに座る
一階の職員室前には左手で鞄を持ち、右手に持ったスマホを覗き込みながら立っている篠崎萌花がいた。
要は悠里と手を繋いだまま萌花に歩み寄り、口を開く。
「篠崎」
要に呼びかけられた萌花は要と悠里に視線を向けて、目元を和らげる。
「藤ヶ谷くん。高橋ちゃん。来てくれたんだ」
「待たせて悪い。職員室に入ろう」
要の言葉に萌花は首を横に振り、口を開いた。
「実は、顧問の矢上に相談があるってもう言ってあるんだ。そうしたら『テスト前期間中だから生徒を長時間職員室内にいさせるわけにはいかない。話は聞くから廊下で待っていてほしい』って言われて。だから待ってるんだ」
「そうだったんですね」
テスト前期間は職員室に立ち入らないように気をつけようと思いながら悠里は萌花に相槌を打つ。
その直後、職員室の扉が開いて吹奏楽部顧問の矢上先生が現れた。
「篠崎。待たせたな。藤ヶ谷と高橋も何か話があるのか?」
要と悠里に視線を向けて言う矢上先生に、萌花が口を開く。
「先生。相談っていうのは藤ヶ谷くんと高橋ちゃんにも関係があることなんです。三人で相談させてください」
「わかった。じゃあ、校長室に行こう」
矢上先生はそう言いながら歩き出す。
なんで校長室に行くの……?
悠里は不思議に思ったが、問いかけようにも、校長室に向かう矢上先生との距離が空いてしまっている。
萌花は矢上先生を追って歩き出した。
悠里は問うように要を見上げ、悠里と視線を合わせた要は口を開く。
「とりあえず、行こうか」
「はい」
悠里と要は手を繋いだまま、萌花の後に続いた。
吹奏楽部顧問の矢上先生に部活のことで相談したいことがあるのに、なぜ校長室に行くのか聞けないままに、悠里たちは校長室前に到着した。
悠里たちは、矢上先生に先に校長室に入っているようにと言われ、萌花は言われた通りに校長室の扉を開けた。
矢上先生は廊下を見やり、誰かを待っているようだ。
「失礼します」
萌花が校長室に足を踏み入れ、悠里と要は萌花の後に続く。
校長室には校長先生がいるだろうから、要と悠里は繋いでいた手を離した。
いろいろあって矢上先生には要の悠里への恋情を知っているだろうから、手を繋いだままでいてもよかったけれど、個人として初めて対面する校長先生の前で恋人と手を繋いだままでいるのは抵抗があると要は思う。
校長室には赤い絨毯が敷かれていて、悠里は小学校三年生の時に、同じ班の児童たちと一緒に校長室で校長先生と給食を食べた時のことを思い出した。
小学生の時に見た校長室と、今、足を踏み入れた校長室はどことなく似ているような気がする。
「校長室、情報屋さんの『ルーム』に似てるね」
小さな声で言う要の言葉を聞いて、悠里は確かにそうかもしれないと思いながら肯いた。
入学式の時に見た校長先生が目元を和らげて悠里たちを歓迎し、ソファーに座るようにすすめる。
悠里を真ん中にして、両端に萌花と要が座り、校長先生は悠里たちの向かい側にあるソファーに座った。
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