第四百三十話 高橋悠里は晴菜からのメッセージを確認して返信し、傷ついたことを書き出した後に要からの返信が来て大喜びする

次は晴菜からのメッセージを読もうと思いながら、悠里はスマホの画面を見つめる。





悠里。お兄ちゃんに「要先輩ってどんな奴か知ってる? 悠里が好きな男っぽいんだけど、性格悪かったりしないよな?」ってうるさくしつこく聞かれたんだけど、何を言ったの?

とりあえず「お兄ちゃんには関係ないし、ちゃんとした人だから」って答えておいた。





「うわあ。圭くん何やってるの……? 心配してくれたのは嬉しいけど迷惑……。はるちゃん、ごめんね……」


とりあえず晴菜に謝罪のメッセージを送ろう。

悠里は晴菜へのメッセージを書き始める。





はるちゃん。迷惑かけてごめんね……!!

圭くんと通話してる時についうっかり、要先輩のことを話しちゃって……。

これからは圭くんに余計なことを言わないように気をつけるからね。


明日、学校に行く時に今日のランチデートのこととか話してね。

どんな惚気話でも聞くからね。じゃあ、また明日ね。





悠里は自分が記載したメッセージを読み返して送信した。


「あー。なんか疲れちゃった……。でも目は冴えてて眠れなさそう……。あっ。そうだ。バグ報告したいことを忘れないように書いておこう」


悠里はガラス戸棚にしまい込んでいた日記帳を引っ張り出した。


この日記帳は晴菜が小学校四年生の時に『読書日記をつける』というので真似をして買ったもので、張り切って少女漫画『エミリーと虹の城』の感想を書いたきり、ガラス戸棚の奥で眠ることになったものだ。


悠里は机の上に日記帳を広げて、シャープペンシルを手に取り、芯を出しながら口を開く。


「えっと、バグ報告は『マリーの識別情報は宿屋兼食堂の娘』で、ユリエル様の表記は『港町アヴィラ領主の子息』が正しい。あと真珠は『真珠(可愛くてかっこいいテイムモンスター)』に修正希望」


悠里は机に日記帳を広げて、丸い癖のある字で書き、読み直して満足した。

でも、まだ眠気はやってこない。


「トイレに行こう」


生理による下腹の痛みは少しずつ和らいでいるが、まだお腹は痛い。

悠里は自室を出てトイレに向かった。


トイレから戻った悠里は机に向かう。

まだ眠くない。眠くないのにベッドに入るのは、時間がもったいない気がする。


「KP申請するための『傷ついたこと』を書き出してみようかな?」


読書日記じゃなくて普通の日記をつけていたら、日記帳を読み返すだけでたくさんの傷ついたことを思い出せて、KPに変えられたかもしれないけれど、今さら言っても遅い。


「まずは、やっぱり佐々木先輩に意地悪なことを言われ続けて傷つきまくってるので、それを書こう」


悠里は呟いて、日記帳に書き始めた。


・佐々木先輩に私だけ意地悪なことを言われる(いっぱい言われる)


・佐々木先輩に嫌われて悲しい(嫌われている理由がわからない。嫌われるほど話してないと思うのに……)


「あと悲しかったのは……お母さんにゲーム機器を勝手に没収されたことだよね」


・中間テストの勉強をサボったのでお母さんが勝手にゲーム機器を没収した


「あっ。中間テストも嫌。悲しい」


・中間テストを受けたくない(人の価値はテストの結果では決まらないと思う)


「あと、高校受験も嫌。試験とかしないで、皆が行きたい高校に行けたらいいと思う」


・高校受験が嫌。皆が行きたい高校に行けたらいいと思う(仲良しの友達とか好きな人と同じ学校に行きたい。勉強ができなくても)


「ええと……後は、自分の顔のこととか……?」


・お祖母ちゃんに似た美人になりたかった(でもお母さん似の今の顔も好き)


「これ、KP貰えるかなあ……?」


いつの間にか、不満・愚痴の羅列になってしまっている気がすると思ったその時、スマホが鳴った。

メッセージが来たようだ。

悠里は手にしていたシャープペンシルを置き、スマホを手に取る。


「要先輩から返信が来た……っ」


悠里は満面の笑みを浮かべながら要からのメッセージを確認する。





悠里ちゃん。メッセージをありがとう。

俺も悠里ちゃん、真珠くんと遊べてすごく楽しかったよ。

月曜日から『テスト前期間』に入るから部活が休みだよね。

だから、帰りのホームルームが終わったら1年5組の教室に迎えに行くね。





「えええええええええええっ!? 要先輩、私のこと迎えに来てくれるの!? 嬉しすぎるんですけど……っ!!」


悠里は要からのメッセージを読み終えて嬉しくて、スマホを持ったまま部屋の中でくるくると回り始めた。

ひとしきり回った後、少し眩暈がした悠里はベッドにダイブし、そして要に返信していないことに気がついた。


「嬉しくて回ってる場合じゃないかった!! 『要先輩が迎えに来てくれるなんて、嬉しいです。待ってます』って返信しないと!!」


悠里はスマホを握りしめて飛び起き、そして急いで要に『要先輩が迎えに来てくれるなんて、嬉しいです。待ってます』とメッセージを返信した。



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