第四百二十七話 マリー・エドワーズはユリエルと1房のラブリーチェリーの実を半分こして食べた後、ユリエルはラブリーチェリーの軸と実をアイテムボックスに収納する

「おはよう。マリーちゃん。真珠くん」


ユリエルにそう言われたマリーは照れた。

真珠はユリエルが目覚めたことが嬉しくて、尻尾を振りながら元気に吠える。


「わうわうっ。わううぅ……っ」


「おはようございますっ。ユリエル様」


真珠に続いてマリーもユリエルに挨拶する。

真珠の頭を撫でながら、ユリエルは口を開く。


「目が覚めてすぐにマリーちゃんと真珠くんの顔が見られるのは嬉しい。今日はゲームの制限時間が近そうだから、皆でベッドの上でお喋りしない?」


「皆でお喋り!! 素敵です……っ!!」


「わんわんっ!!」


ユリエルの提案にマリーと真珠は目を輝かせて肯く。


「あのっ。ちょっとお行儀悪いんですけど、ベッドの上でおいしい果物を食べませんか?」


マリーの言葉に真珠は何度も肯き、ユリエルも微笑んで肯いた。

マリーはステータス画面を出現させてハンカチを取り出し、ベットの上に敷いた後に『ラブリーチェリー』が入った木箱を出した。


「わおんっ!!」


真珠は大好きな『ラブリーチェリー』が入った木箱を見て歓声をあげた。

マリーは木箱から『ラブリーチェリー』を9房取り出して広げたハンカチの上に置き、木箱を収納する。

ユリエルは卓球で使うピンポン玉のような大きさのハート型のさくらんぼを見て口を開いた。


「『ラブリーチェリー』ってワールドクエスト『ウッキーモンキークイーンへの求婚騒動』の時に出ていたよね」


「そうなんですっ」


ユリエルの言葉を聞いたマリーは大きく肯き、言葉を続ける。


「友達のお父さんたちから買ったんです。それで、えっと、私、ユリエル様とラブリーチェリー1房を半分こして食べたいんですけど、いいですか……?」


マリーの言葉を聞いたユリエルは肯いて口を開いた。


「いいよ。ハート型のさくらんぼを半分こして食べるのは恋人っぽくて楽しいね」


ユリエルの言葉を聞いたマリーは照れながら肯く。

真珠はベッドの上でお行儀よくお座りをして、ハンカチの上のラブリーチェリーを凝視している。

マリーは真珠を見て苦笑しながら、真珠のために1房ラブリーチェリーを手に取って軸から実を取り、真珠の口元に持っていく。


「真珠。口を開けて。あーん」


マリーの言葉を聞いた真珠は尻尾を振りながら口を開けた。

マリーはラブリーチェリーの実を真珠の口に入れる。

真珠は幸せそうな顔でラブリーチェリーをもぐもぐと食べた。


「真珠。種があったら吐き出すんだよ」


マリーの言葉に真珠は何度も首を縦に振る。

ユリエルはマリーのハンカチの上にあるラブリーチェリーを1房手に取り、軸を裂いた。

そしてラブリーチェリーの実の一つを自分が食べ、もう一つをマリーの口元に寄せる。


「マリーちゃん。あーん」


「っ!!」


マリーは照れながら、口を開けた。

ユリエルはマリーにラブリーチェリーの実を食べさせる。

マリーはもぐもぐとラブリーチェリーの実を咀嚼した。種がある。

マリーはラブリーチェリーの種を吐き出してアイテムボックスに収納した。


「ラブリーチェリーって種があるんだね。俺が食べた実には種が無かったけど……」


ラブリーチェリーの実を食べ終えたマリーはユリエルの疑問に答えるべく口を開く。


「えっと、ラブリーチェリーは1房に二つ実がついているんですけど、どっちか片方に種があるんです」


「そうなんだ」


マリーの説明を聞いて納得したユリエルは肯く。


「わうー。わんわぅ、わううっ」


もっとラブリーチェリーの実が食べたい真珠はマリーに催促した。

マリーは真珠の口にラブリーチェリーの実を放り込み、ラブリーチェリーの軸をアイテムボックスに収納する。

真珠はラブリーチェリーの実をもぐもぐと食べ、マリーの手のひらにラブリーチェリーの種を吐き出した。

マリーは真珠が吐き出したラブリーチェリーの種をアイテムボックスに収納して口を開いた。


「ラブリーチェリーの種は地面に埋めると芽が出るかもしれないんです。あと、ラブリーチェリーの軸はアイテムランクがBランクなので取っておいています。よかったらユリエル様もラブリーチェリーの軸を持っていてください」


「いいの?」


「はいっ」


マリーは力強く肯く。

ユリエルはラブリーチェリーの軸をアイテムボックスに収納しながら口を開いた。


「ラブリーチェリーの軸がなんで高ランクアイテムなのか気になるから、後でフレデリックお兄様に鑑定してもらうね」


「ぜひお願いしますっ」


「わんわんっ」


レーン卿なら、情報屋の鑑定ではわからなかった情報を見抜くことができるかもしれない。


「マリーちゃん。ラブリーチェリーを1房貰ってもいいかな? フレデリックお兄様に鑑定を頼む時に軸と一緒に渡したいんだ」


「どうぞ。持って行ってください」


「ぎゃわんっ」


真珠は自分が食べる分が減ってしまって悲しい……!!

マリーはユリエルにラブリーチェリーを1房渡した後、真珠にラブリーチェリーの実を食べさせた。


***


紫月23日 夜(5時35分)=5月16日 21:35



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