第四百二十六話 高橋悠里は晩ご飯分のGP1を請求し、マリー・エドワーズが『赤い珊瑚亭』の105号室のベッドの上で目覚めてブーツを脱いだ後、ユリエルも目覚める



イヴへの返信を終えた悠里は晩ご飯を食べた分のGPを貰おうと思いながら口を開く。


「サポートAIさん。私、今日、晩ご飯を食べました。GPをください」


「確認します。プレイヤーNO178549。高橋悠里様の脳波確認。確認中……。トゥルース。高橋悠里様にGP1が付与されました。高橋悠里様の現在の取得GPは14GPです」


「やった。GP増えた。そういえば、KPってもう申請したプレイヤーはいるの? 一番KPを貰ったプレイヤーってどのくらい貰ったの?」


「確認します。確認中……。確認終了。現時点で一番多いKP取得プレイヤーの取得KPは10540123です」


「一千万KPを超えたの!? すごい!! そんなに悲しくてつらいことがたくさんあったプレイヤーがいたんだね……」


「震災や豪雨災害、病気、怪我、失恋、離婚、職場や学校の人間関係等に加え、現在は新型コロナの蔓延で苦しんでいるプレイヤーが多いようです」


「そうなんだ……。でもKPが貰えてよかったね。よかったよね?」


「KPを取得したプレイヤーの多くは安堵したり喜んだりしています。心が軽くなった気がすると言うプレイヤーもいました」


「そっか。よかった。私も自分が傷ついたことを思い出して、サポートAIさんに伝えて、少しでも多くKPが貰えたらいいなって思うよ」


「過去のKPは初回KP申請でしか請求できないので、慎重になさってください」


「はいっ。サポートAIさん。私、そろそろ行きますね」


「それでは、素敵なゲームライフをお送りください」


サポートAIの声に送られ、悠里は鏡の中に入っていった。


マリーは『赤い珊瑚亭』の105号室のベッドの上で目覚めた。

前回ログアウトした時は慌てていたので『疾風のブーツ』を履いたままベッドに寝転がったのだが、泥で汚れていたブーツの裏が憑依直後のせいか綺麗になっている。

でも、布団は少し泥で汚れてしまっていた。宿屋の娘であるマリーは申し訳ない気持ちになる。


「わうー。わううぅ」


目覚めた真珠がマリーにすり寄る。可愛い。


「おはよう。真珠」


マリーは真珠を優しく撫でた後、『疾風のブーツ』を脱いでアイテムボックスに収納する。

もうブーツの底は汚れていないけれど、ベッドの上ではブーツを脱いだ方がいい。今さらかもしれないけれど。


ブーツを脱ぎ終え、アイテムボックスにしまい終えたマリーは同じベッドでまだ眠っているユリエルに視線を向けた。


「ユリエル様。寝顔、綺麗だね」


「わうわう。わうう」


マリーと真珠は小さな声でそう言い合いながら、ユリエルの寝顔を見つめる。

早く目覚めて話したいけれど、でも、このまま寝顔を見つめていたいような気もする。


……ユリエルがゆっくりと目を開け、一度瞬いた後、マリーと真珠の姿を捉える。

それからユリエルは、マリーと真珠に微笑んだ。


***


高橋悠里の取得GP 13GP → 14GP


紫月23日 夜(5時20分)=5月16日 21:20



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