第四百十九話 マリー・エドワーズはイヴからのメッセージを読み、ユリエルを待ちながら真珠と『ラブリーチェリー』を食べる



マリーと真珠が為す術もなくレーン卿を巡るマギーとアーシャの恋のバトルを見つめていると、可愛らしいハープの音が鳴った。

フレンドからのメッセージが来たようだ。

どうやらアーシャにもフレンドからのメッセージが来たようで、アーシャはどうするか迷っている。

マリーは真珠を床に下ろすか迷って、ひっそりと自分と真珠が寝ていた船室に後退した。


マリーは自分と真珠が寝ていた二段ベッドの下段に座り、ステータス画面を出現させてメッセージを確認する。

メッセージの送信者はイヴだ。





このメッセージはマリーとアーシャに送信してます。


ユリエル様と情報屋さんとあたしで、孤児たちを確認し終えて、今からユリエル様と情報屋さんは家来の人たちと船に戻るところ。

あたしはウェインと二人で話すことになったよ。

小太りのおじさんはカジノに遊びに行くって。聖人は死に戻れば教会で復活できるからって。

もう揺れる船には乗りたくないみたい。


とりあえずの報告でした。あたしも死に戻って教会で復活するつもりだから、あたしのことは気にしないでね。





「イヴさん。ウェインと二人で話すことにしたんだ。ちゃんと仲直りできたらいいな」


イヴからのメッセージを読み終えたマリーは呟く。

真珠はマリーの呟きを聞き咎めて首を傾げた。


「わうー。くぅん?」


「あっ。真珠にもメッセージの内容を教えるね。あのね、イヴさんからのメッセージでね、私とアーシャさんに来たんだけどね」


マリーは真珠にメッセージの説明を始め、真珠はマリーの言葉を肯きながら聞く。


「メッセージの内容を読むね。『ユリエル様と情報屋さんとあたしで、孤児たちを確認し終えて、今からユリエル様と情報屋さんは家来の人たちと船に戻るところ』」


「わうわうっ!! わんわんっ!!」


「そうだね。もうすぐユリエル様に会えるね」


マリーは嬉しそうに尻尾を振る真珠の頭を撫でて微笑む。

それからメッセージの続きを読み始めた。


「メッセージの続きを読むね。『あたしはウェインと二人で話すことになったよ。小太りのおじさんはカジノに遊びに行くって。聖人は死に戻れば教会で復活できるからって。もう揺れる船には乗りたくないみたい』」


マリーが『もう揺れる船には乗りたくないみたい』と読み上げると、真珠はめちゃくちゃ高速で首を縦に振る。

真珠はもう、揺れる船には乗りたくない……!!

マリーは真珠の頭を撫で、真珠の気持ちを上向かせる方法を考える。

……そうだ。真珠が大好きな『ラブリーチェリー』を一緒に食べようっ。


「真珠。ユリエル様を待ちながら『ラブリーチェリー』を一緒に食べようね」


「わううっ!! わんわぅ、わううっ!!」


マリーの言葉を聞いた真珠は高速で首を縦に振るのをやめて、吠える。

真珠の尻尾が高速で振られている。

マリーは真珠に微笑んで、アイテムボックスから『ラブリーチェリー』が入った木箱を取り出した。

真珠は目を輝かせて『ラブリーチェリー』が入った木箱を見つめる。


マリーは木箱から『ラブリーチェリー』を一房取り出して、木箱を左腕の腕輪に触れさせてアイテムボックスに収納した。

それからマリーはラブリーチェリーの軸を裂き、両手にそれぞれ持って真珠を見つめ、口を開く。


「真珠は右のラブリーチェリーと左のラブリーチェリー、どっちを食べたい? どっちかには種があるよ」


真珠はマリーが持っている二つのラブリーチェリーを真剣に見つめる。

どっちを食べよう……!?

真珠は迷った末に、向かって右側のラブリーチェリーを指し示す。


「わんっ!!」


「こっちね」


マリーは真珠が選ばなかった方のラブリーチェリーを自分の膝の上に乗せて、口を開いた。


「じゃあ、実を取ってあげるね」


マリーは真珠が選んだラブリーチェリーの実を軸から外して口を開く。


「真珠。あーん」


マリーがラブリーチェリーの実を真珠の口元に近づけて言うと、真珠は素直に口を開けた。

マリーはラブリーチェリーの実を真珠の口に放り込む。

真珠はラブリーチェリーの実を食べて青い目を細めた。

おいしい!!


「真珠。種、あった?」


真珠は舌の上でラブリーチェリーの種があるか探ったが、小さくて硬い石のような種を感じることはなかった。


首を横に振る真珠に、マリーは自分が食べる方のラブリーチェリーの実に種があるのだと思いながら、真珠のラブリーチェリーの軸をアイテムボックスに収納してから、自分の分のラブリーチェリーの実をぱくりと食べた。

おいしい!!

マリーは残った軸をアイテムボックスに収納して、右手の手のひらに種を吐き出す。


ラブリーチェリーの種もアイテムボックスに収納した。


「一房のラブリーチェリーを分け合って食べたから、私と真珠は前よりもずっと仲良しになったね」


マリーがラブリーチェリーの効能を思い出しながら言うと、真珠は嬉しそうに尻尾を振って吠えた。


***


紫月23日 早朝(1時18分)=5月16日 17:18



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