アルカディアオンライン【高橋悠里 中学一年生・一学期終了編】
第四百十八話 高橋悠里はワールドクエストを達成してくれたフレンドにお礼のメッセージを送信してゲームを始め、マリー・エドワーズと真珠の目の前で恋のバトルが始まる
第四百十八話 高橋悠里はワールドクエストを達成してくれたフレンドにお礼のメッセージを送信してゲームを始め、マリー・エドワーズと真珠の目の前で恋のバトルが始まる
「でも、誰がワールドクエスト『消えた孤児たちを追え!!』を達成してくれたんだろう? 私のフレンドっていうことは確定だから、一斉送信メッセージでお礼を言っておこう。だってクエストを達成して『識別の虫眼鏡』をWP交換できたのはそのフレンドがクエストを達成してくれたおかげだし……」
悠里はステータス画面の『フレンド機能』を使ってメッセージを記載する。
♦
このメッセージは一斉送信です。
さっきログインして、転送の間でサポートAIさんにワールドクエスト『消えた孤児たちを追え!!』が達成されたと教えてもらいました。
その時、ワールドクエスト『消えた孤児たちを追え!!』を達成してくれたのが私のフレンドの誰かだということも知りました。
でも、それが誰かはサポートAIさんは教えてくれませんでした。
サポートAIさんはゲームのネタバレに厳しいです……。
私は船の揺れがすごくて、船に乗ってからは全然ゲームをプレイしていなかったけど、欲しいWP交換品を入手できてすごく嬉しかったのでお礼を言いたくてメッセージを送信します。
ワールドクエスト『消えた孤児たちを追え!!』を達成してくれてありがとう。
全然関係ないのにこのメッセージを読むことになってしまったフレンドの方はごめんなさい。
これからも仲良くしてもらえたら嬉しいです。
♦
悠里は自分が書いたメッセージを読み返して送信した。
「じゃあ、私そろそろゲームをプレイしますね」
「それでは、素敵なゲームライフをお送りください」
サポートAIの声に送られ、悠里は鏡の中に入っていった。
マリーが目を開けると二段ベッドの下段に寝ていた。
真珠も一緒だ。
おそらく船室のベッドにいるのだと思うが、前回感じた胃がひっくり返るようなすさまじい揺れはなかった。
全然揺れていないということではなく、揺れはあるけれど……。
船は、停泊している……?
マリーは、マリーにすり寄る真珠を撫でながら口を開く。
「真珠。揺れてるけど大丈夫?」
「きゅうん。わん……」
真珠は力なく肯く。すさまじい揺れを経験したせいか、少しの揺れでも怖いようだ。
マリーはベッドから下りて真珠を抱っこし、船室の扉を開けて外に出た。
真珠を抱っこしたマリーが船室の外に出るとマギーとアーシャが立ち話をしていた。
マギーの姿を見たマリーと真珠は目を丸くする。
「マギーさん!? なんでいるの……っ!?」
「わんわんっ!! くぅん……?」
マリーと真珠はそれぞれにマギーを見つめ、疑問を口にする。
マリーと真珠に微笑んでマギーは口を開いた。
「情報屋からメッセージが来たのよ。『フレデリック様と船の旅がしたければ今すぐ港に来られたし』って。おかげでフレデリック様と同じ船に乗れたけど、情報屋に金貨5枚もぼったくられたわよ」
「金貨5枚っ!?」
「ぎゃわんっ!!」
マリーと真珠はマギーの言葉を聞いて目を剥いた。
アーシャも苦笑する。
「マギーは情報屋さんの太客なんだねえ」
「ふときゃく?」
「きゅうん?」
アーシャが言った『ふときゃく』という意味がわからず、マリーと真珠は首を傾げた。
アーシャは『太客』という言葉をホストやキャバ嬢に貢ぐ客ということを匂わせないように説明しようと言葉を探す。
「ええと、太客っていうのは……ものすごくたくさんお金を使ってくれる良いお客さんっていうことだよ」
「そっかあ。マギーさんは情報屋さんにとって良いお客さんなんだね」
「わんわんっ」
マリーと真珠はアーシャの説明を聞いて納得して肯く。
その後、マリーはアーシャとマギーを見つめて口を開いた。
「それで、二人はここで何してるの? お喋り?」
マリーの問いかけにマギーはアーシャと視線を合わせ、アーシャが小さく肯くのを見て口を開いた。
「フレデリック様が船酔いで具合が悪くなってしまったみたいで。だから回復して船室から出てきてくれるのを待ってるの」
マギーに続いてアーシャが口を開く。
「ユリエル様とイヴ、バージルさんと情報屋さん、あと小太りのおじさんは騎士と魔術師のNPCと一緒に孤児たちを保護している宿屋に向かったよ。ウェインから連絡が来たんだ」
「えっ!? イヴさんとウェインが会っても大丈夫なの!?」
マリーはリアルでのトラブルを思い出して叫んだ。
マリーの言葉を聞いたマギーが首を傾げて口を開く。
「イヴちゃんとウェインくんって喧嘩してるの?」
「あー。まあ、ちょっとした行き違い? みたいな……?」
アーシャが言葉を濁してへらりと笑った直後、マリーと真珠がいた船室の隣の船室の扉が開いて緋色のローブを着たレーン卿が現れた。
マギーとアーシャの目が獲物を見つけた狩人のようにギラリと光り、マリーと真珠は引いた。
レーン卿はやつれた顔をして、それでも美しく微笑んで口を開く。
「皆さん。船に残っていらしたのですね」
「私、フレデリック様が心配で……」
「ウチもですっ」
マギーとアーシャが口々に言う。
美形NPCをめぐる乙女プレイヤーの仁義なき戦いが始まった。
悠里は一人用の乙女ゲームは平和だったんだなあと思いながらマギーとアーシャの恋のバトルを見守り、真珠はいつも真珠とマリーに優しいマギーとアーシャのすさまじい迫力に気圧されて涙目になった……。
***
紫月23日 早朝(1時07分)=5月16日 17:07
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