第四百九話 マリー・エドワーズとアーシャは『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』を情報屋に見せる対価としてそれぞれ銀貨1枚を受け取る



「私の名前はデヴィット・ミラー。『アルカディアオンライン』で情報の売買を生業としています。情報屋とお呼びください」


情報屋はイヴとアーシャに微笑んで言う。


「なりわい?」


「仕事ってことじゃない?」


首を傾げるイヴにアーシャが言う。

それからアーシャは情報屋に視線を向けて口を開いた。


「情報を売ればお金が貰えるっていうことですか?」


問いかけるアーシャに肯き、情報屋は口を開いた。


「はい。私が対価を払う価値がある情報だと判断すれば、情報に対価を支払います」


「それって、おじさんが」


「イヴ!! 自己紹介してもらったのにおじさんとか言わないの!! ちゃんと情報屋さんって言って!!」


初対面の情報屋に対して失礼な態度を取り続けるイヴをアーシャが叱る。

イヴは憮然とした様子だったが態度を改めることにしたようだ。

居住まいを正して口を開く。


「情報屋さん。あなたが情報の価値を決めるっていうのは一方的じゃないんですか? だって情報の相場とかって、あたしたちにはわからないでしょ?」


イヴの言葉を聞いたマリーは深く肯く。

マリーは、マリーが情報屋に銀貨5枚で売った『ラブリーチェリーの種』を、マギーが鑑定情報込みとはいえ金貨1枚で買わされていたと知った時には衝撃を受けた。

イヴの疑問に答えるべく、情報屋は微笑んで口を開く。


「情報の対価としてふさわしくない金額を提示した場合は私のプレイヤー善行値が下がります。情報屋のロールプレイをしている者としてのプライドにかけ、適正でない情報の値付けはしません」


銀貨5枚で買い入れた『ラブリーチェリーの種』を鑑定情報込みで金貨1枚で売りさばくことが、適正。

マリーは情報屋の言葉を心に深く刻み込んだ。

情報屋はマリーに視線を向けて口を開いた。


「マリーさん。マリーさんが『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』を渡したフレンドが誰か、教えてください。教えて頂けたのであれば、マリーさんとそのフレンドの方に銀貨1枚ずつ差し上げます」


情報屋の言葉を聞いたマリーはフレンドの名前を口にしていいのか迷ってアーシャに視線を向ける。

アーシャはマリーと視線を合わせた後、情報屋を見て口を開いた。


「それってウチがマリーちゃんに貰った『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』を情報屋さんに見せれば、ウチもマリーちゃんも銀貨1枚ずつ貰えるってこと?」


「ええ。そうです。『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』を持っていたのはアーシャさんだったのですね」


情報屋の目に強い光が宿る。

情報屋とアーシャの会話を聞いていたイヴが口を開いた。


「ポストカードを見せるだけでマリーもアーシャも銀貨1枚もらえるならお得じゃない?」


イヴの言葉を受けてアーシャは口を開く。


「ウチは見せるだけならいいけど、マリーちゃんはいい?」


「アーシャさんがいいなら、私もそれでいいです」


「決まりですね。では先に『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』を見せて頂く対価をお支払いします。ステータス」


情報屋はステータス画面を出現させて、アイテムボックスから銀貨を2枚取り出した。

それから銀貨1枚をアーシャに渡して、銀貨1枚をテーブルの向かい側にいるマリーの元に滑らせる。

マリーは情報屋が滑らせた銀貨を受け取った目を輝かせ、口を開いた。


「かっこいい……!!」


「わっううう……!!」


真珠も青い目を輝かせて吠える。

真珠もテーブルに銀貨をしゅっと滑らせるのをやってみたい!!


「わうー!! わんわぅ、わうわう!!」


「真珠もさっきの情報屋さんの銀貨シュートをやりたいの?」


真珠の意図がマリーに通じた!!

真珠は何度も首を縦に振る。

ユリエルはマリーの『情報屋さんの銀貨シュート』という言葉を聞いて笑いそうになり、必死に笑いをこらえる。


「じゃあ、情報屋さんから貰った銀貨を真珠にシュートするね!! えいっ!!」


マリーは勢いよく銀貨をテーブルの上に滑らせた……はずだったが、のろのろと進んだ銀貨は真珠に届くことなくテーブルの真ん中で止まってしまった……。


「わうー。くぅん……」


真珠が悲しげにテーブルの真ん中で光っている銀貨を見つめる。


「なんで情報屋さんみたいにかっこよくシュって出来ないの……っ」


マリーはショックを受けてテーブルに突っ伏した。

情報屋はアーシャから見せてもらった『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』を鑑定して良いかアーシャに交渉している。

イヴはアイテムボックスから銅貨を1枚取り出して、テーブルに置いた。

そしてイヴは机に突っ伏しているマリーに視線を向けて口を開く。


「マリー!! 行くよ!!」


そして、イヴは銅貨をテーブルに滑らせ、テーブルの真ん中で止まってしまった銀貨にぶつけた!!

イヴに名前を呼ばれたマリーは顔を上げる。

銀貨はマリーの元へと滑り、銅貨も銀貨の軌道の後を追ってマリーの元に届いた。


「イヴさん、すごい……!!」


「わう、わっううう……!!」


銀貨と銅貨を受け取ったマリーは目を輝かせ、真珠はイヴを見上げて尻尾を振る。

イヴはドヤ顔をした後、明るい笑顔を浮かべて口を開いた。


「その銅貨はマリーにあげる。孤児院の食堂であたしのことを助けてくれたお礼だよ」


「ありがとうございますっ」


マリーは銀貨と銅貨をありがたく受け取り、アイテムボックスに収納した。

ユリエルは助けたお礼に銅貨1枚というのはショボイと思ったが、マリーが嬉しそうなので黙っていた。


「わんわぅ。くぅん……」


真珠は自分もイヴを助けるために頑張ったのにイヴからお礼を貰えなくて寂しくて、しゅんとして俯く。

真珠の耳がぺたんと頭にくっついた。

イヴは真珠の落ち込みに気づいて慌てる。


「真珠もあたしのこと頑張って探してくれたんだよねっ。えっと、真珠にお礼は……」


イヴは自分のアイテムボックスに収納しているアイテムを確認して、蜂蜜飴を見つけた。

イヴは蜂蜜飴を取り出して手のひらに乗せ、真珠に見せる。


「真珠へのお礼はこの蜂蜜飴だよっ。甘くておいしいよ……っ」


イヴの言葉を聞いた真珠は手のひらの上の蜂蜜飴を見て、それからテーブルの向こう側にいるマリーを見た。

真珠の視線を受けたマリーは力強く肯いて、口を開く。


「真珠。蜂蜜飴はすごく甘くておいしいから、イヴさんに食べさせてもらうといいよっ」


「わんっ」


真珠はマリーの言葉に肯いた。

いつも真珠においしいものをくれるマリーが食べていいと言ったのだから、食べてもいいのだ。

真珠はイヴの手のひらにある蜂蜜飴の匂いを嗅ぎ、飴を舌先で舐めた。

甘い!! おいしい!!

蜂蜜飴のおいしさを理解した真珠はぱくりと蜂蜜飴を口の中に入れて、舌の上で転がす。

イヴは嬉しそうに蜂蜜飴を舐める真珠の頭を優しく撫でた。

イヴの隣に座ったバージルはイヴに話しかけるタイミングを掴めずにいた……。



***


マリー・エドワーズが情報を売って受け取った対価とイヴから貰ったゲーム内通貨 銀貨3枚/銅貨1枚 ※第三百八十七話・第三百八十九話分も含む


マリー・エドワーズの現在の所持金 3494401リズ → 3497501リズ


紫月22日 夕方(4時52分)=5月16日 14:52



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