第三百八十六話 マリー・エドワーズは『ラブリーチェリーの種』の鑑定情報を知る



「マリーちゃん。『ラブリーチェリーの種』の鑑定情報よ。どうぞ」


マギーは自分の白い皮の手帳に記載されていた『ラブリーチェリーの種』の鑑定情報を書き写したものを手帳から切り離してマリーに差し出す。


「ありがとうございます。マギーさん」


マリーはマギーから紙を受け取り、お礼を言った。

それから渡された紙に『ラブリーチェリーの種』の鑑定情報が書き写されていることを確認して、アイテムボックスから取り出した『ラブリーチェリー』2房をマギーに差し出す。


「2房も貰っちゃっていいの?」


「ぜひ貰ってくださいっ」


「わんわんっ」


マリーの言葉に真珠も力強く肯く。

マギーが金貨1枚で買った『ラブリーチェリーの種』は、実は売値が銀貨5枚でしかないことをマギーに言えないマリーと真珠を許してほしい。


「ありがとう!! じゃあ、情報屋に『ラブリーチェリー』の鑑定をお願いしようかな」


「マギーさんっ。私、『ラブリーチェリー』の鑑定情報を持ってます……っ」


マリーはこれ以上、目の前でマギーが情報屋にぼったくられる姿を見たくなくて言う。


「本当? じゃあ、マリーちゃんから『ラブリーチェリー』の鑑定情報を買うわ。情報屋よりマリーちゃんにお金を払いたいし」


「あの、別にお金とかいらないですよ。マギーさんは私と真珠に何回も無料で『ウィンドウォール・キューブ』を使ってくれたし……」


マリーの言葉に真珠も首を縦に振る。


「そんなの当然じゃない。マリーちゃんと真珠くんは私のフレンドだし、一緒にパーティーを組んでいたんだもの」


「当然じゃないですよっ。だって私、今日『ウィンドウォール・キューブ』を使ってもらったら銀貨1枚払わなくちゃいけないところだったんですっ」


「わんわんっ」


マリーの言葉に真珠も肯く。

『ウィンドウォール・キューブ』でお金を要求するロアーノは優しくない!!

『ウィンドウォール・キューブ』でお金を要求しないマギーは優しい!!


マリーはアイテムボックスから『ラブリーチェリー』の鑑定情報が記載された紙を取り出してマギーに差し出す。


「だから『ラブリーチェリー』の鑑定情報をどうぞっ。でも、私は書く物も紙も持ってないのでマギーさん自身に鑑定情報を書き写してもらわないとけないんですけど……」


「そんなこと気にしないで。じゃあ、手帳に『ラブリーチェリー』の鑑定情報を書き写すわね」


マギーはマリーから『ラブリーチェリー』の鑑定情報が記載された紙を受け取って微笑む。

マギーに『ラブリーチェリー』の鑑定情報が記載された紙を渡し終えたマリーはマギーから受け取った『ラブリーチェリーの種』の鑑定情報が書き写された紙を、真珠にもわかるように読み上げた。


「ラブリーチェリーの種。アイテム/Cランク。甘酸っぱくておいしいさくらんぼの種。地面に植えるとラブリーチェリーの芽が出ることがある」


『地面に植えるとラブリーチェリーの芽が出ることがある』という記載に注目したマリーは『ラブリーチェリーの種』を『銀のうさぎ亭』の庭に埋めてみようかと思い立つ。

やりたいことがいっぱいあって、でも、クエストも進めたい。


「そうだっ。クエスト……っ」


「わんっ」


マリーと真珠はマギーとお喋りをしてまったりモードに入ってすっかり忘れていたが、マリーは時間制限があるクエストを抱えていて、その情報を情報屋に売ろうと思っていたのだ。


マリーは『ラブリーチェリーの種』の鑑定情報が書き写された紙をアイテムボックスに収納し、情報屋に向き直った。


***


紫月22日 早朝(1時28分)=5月16日 11:28



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