第三百八十五話 マリー・エドワーズはマギーが情報屋から『ラブリーチェリーの種』を鑑定情報込みで金貨1枚で買っていたことを知って目を剥く
クラシックな書斎風な情報屋の『ルーム』には部屋の主である情報屋と彼の顧客でマリーのフレンドでもあるマギー・ジレンホールがいた。
「マリーさん。真珠くん。私の『ルーム』にようこそ」
「情報屋さん。お邪魔しますっ」
「わんわんっ」
マリーと真珠は情報屋に挨拶をして頭を下げる。
「マリーちゃん。真珠くん。私の隣に座って」
マギーがマリーと真珠に微笑んで、自分が座っているソファーの隣をぽんぽんと叩いて言った。
「ありがとうございます。マギーさん」
「わぅわううわううわ」
マリーと真珠はマギーにお礼を言った。
そして真珠を抱っこしたマリーはマギーが座るソファーに歩み寄り、真珠をマギーの隣に座らせた。
それからマリーは真珠の隣に座る。
真珠は赤毛で浅黒い肌のセクシーなマギーと大好きな主のマリーに挟まれて嬉しくて尻尾を振った。
マギーはマリーを見つめて口を開く。
「マリーちゃん。真珠くん。私、さっきね、情報屋から鑑定情報込みで『ラブリーチェリーの種』を買ったの。マリーちゃんはグリック村で『ラブリーチェリー』を買っていたでしょ? 種の鑑定結果を教える代わりに、私に『ラブリーチェリー』を少し売ってもらえないかな?」
「『ラブリーチェリー』1個なら、鑑定結果と交換でマギーさんにあげますよ」
マリーはそう言いながら、マギーが買った『ラブリーチェリーの種』は真珠が『ラブリーチェリー』を食べてぺっと吐き出した種かもしれないと思う。
「ちなみにマギーさんは、鑑定情報込みの『ラブリーチェリーの種』をおいくらで買ったんですか?」
「金貨1枚よ」
マギーの言葉を聞いたマリーは目を剥いた。
マリーが情報屋に銀貨5枚で売った『ラブリーチェリーの種』を、マギーは鑑定情報込みとはいえ金貨1枚で買わされている……っ!!
「今、マリーちゃん用に『ラブリーチェリーの種』の鑑定結果を書き写すわね。ちょっと待ってて」
マギーはマリーの驚きを『ラブリーチェリーの種』というアイテムに金貨1枚をつぎ込んだからだと思った。
まさか、少し前に真珠が食べた『ラブリーチェリー』の種をマリーが銀貨5枚で情報屋に売り、それをマギーが金貨1枚で買わされたことに驚いていたとは思わない。
マギーがアイテムボックスから白い皮の手帳を取り出して万年筆で『ラブリーチェリーの種』の鑑定結果を書き写していると、マリーは情報屋に視線を向けた。
情報屋はマギーに気づかれないようにマリーと真珠に向けて、唇に人差し指をあて、黙っているようにというジェスチャーをする。
情報屋は悪い男だ……。
だがマリーと真珠は沈黙する道を選んだ。
情報屋はマリーの大事な収入源だ。関係を悪化させることはできない。
正義の心は悪に負けた……。
マリーと真珠は項垂れた。
マリーはマギーに真実を打ち明けられない罪悪感を紛らわせるために、彼女に渡す『ラブリーチェリー』を2房に増やすことにした。
そして次に情報屋に『ラブリーチェリーの種』を売る時には種1個につき、銀貨50枚以上は貰おうと心に刻みながら、マリーはアイテムボックスから『ラブリーチェリー』が入った木箱を取り出した。
項垂れていた真珠はまた、おいしい『ラブリーチェリー』を食べられると思って嬉しくて元気になり、尻尾を振る。
マリーは木箱から『ラブリーチェリー』を2房取り出して木箱をアイテムボックスに収納した。
***
紫月22日 早朝(1時24分)=5月16日 11:24
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