第三百八十一話 マリー・エドワーズと真珠はユリエルと別れてフローラ・カフェ港町アヴィラ支店に入る
マリーは真珠を抱っこしてユリエルの傘に入れてもらい、孤児院を出て教会に向かう。
ロアーノとは孤児院を出てすぐに別れた。彼は兵士たちに孤児たちを攫った不審者を見かけなかったか聞き込みをする予定だ。
真珠を抱っこしたマリーとユリエルが一つの傘に入って教会の入り口に戻ると、馬に騎乗した、白地に赤いラインが入った制服を着た護衛騎士が二人、ユリエルを見つけて彼の名前を呼んだ。
どうやら領主館から姿を消したユリエルを探し回っていたようだ。
ユリエルは寝室にあるテーブルの上に『出かけてきます。心配しないで』と置き手紙をしてきたのだが、領主である父親には心配をかけてしまったようだ。
護衛騎士のうちの一人が馬から下り、雨に濡れながらユリエルの前に跪いた。
「ユリエル様。領主様が大変心配なさっています。領主館にお戻りくださいますようにお願いいたします」
「わかった」
「馬車を教会に向かわせますので、少々お待ちいただけますか?」
「いや。すぐに領主館に戻りたい。あなたの馬に乗せてもらえないだろうか?」
「御身が雨に濡れてしまいます。どうか、馬車をお待ちください」
護衛騎士はそう言ってユリエルに頭を下げる。
ユリエルは『聖人』なので体調不良になってもログアウトかリープ、死に戻りをすればまったく問題ないのだが、NPCの護衛騎士にその理屈は通用しないかもしれない。
ユリエルは雨の中、自分を探してくれた護衛騎士をこれ以上濡れさせるのは忍びなかったので肯き、口を開く。
「わかった。馬車を待つよ」
「ご英断に感謝致します。では恐れ入りますが、教会内でお待ちください。私もご一緒致します」
そう言った後、護衛騎士は立ち上がり、騎乗したままの同僚に視線を向けて肯く。
同僚の騎士は馬車を呼ぶために領主館へと馬を走らせた。
マリーと真珠は雨に濡れながら職務を全うする騎士たちを見て、騎士の仕事って大変だなあと思う。
ユリエルの護衛騎士は神官を呼び、馬を預けた。
そしてユリエルと護衛騎士、マリーと真珠は教会内に入る。
ユリエルと護衛騎士は神官に貴賓室へと案内され、マリーは真珠とフローラ・カフェ港町アヴィラ支店に向かった。
フローラ・カフェ港町アヴィラ支店に入ったマリーは抱っこしていた真珠を床に下ろし、アイテムボックスからフローラ・カフェの会員カードを取り出した。
カウンター内にいた白いローブを着た金髪の女性神官は背が低い幼女のマリーからカードを受け取るためにカウンターから出てきてくれた。
「聖人ひとりと聖獣ひとりですっ。よろしくお願いしますっ」
マリーはそう言いながら女性神官に会員カードを差し出す。
「会員NO178549マリー・エドワーズ様。確かにカードをお預かり致します。お帰りの際にはご返却を致しますので、お声がけください」
「わかりましたっ」
マリーは神官に肯き、真珠を抱っこして店内に足を進めた。
***
紫月22日 早朝(1時01分)=5月16日 11:01
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