第三百八十話 マリー・エドワーズたちは院長の話を聞き、子どもたちを助けるためにそれぞれに行動を開始する
真珠と院長の困惑の眼差しに気づいたロアーノは咳払いをして場の空気を一新しようとした。
「院長。子どもたちがいなくなった経緯を話してもらえないか?」
ロアーノの言葉に院長は肯いて口を開く。
「はい。危険を知らせる鐘の音が響いたので、神官の一人が教会に事態の確認に向かい、私と残りの神官は子どもたちと共に孤児院の食堂に集まっていました。そんな時、教会から戻ってきた神官が、孤児院の外に『教会に避難したいのだが人がいっぱいで避難できない。子どもだけでも孤児院内に避難させてもらえないだろうか』という男がいると知らせてきたのです」
院長の言葉を聞いたマリーはワールドクエスト『狼王襲来・港町アヴィラ攻防戦』で避難場所の教会に詰めかけたけれど教会内に入れずに、NPCが悲痛な叫び声をあげていたことを思い出して胸を痛めた。
ユリエルと真珠は真剣な表情で院長の話を聞いている。
ロアーノは院長の話に相槌をうち、彼女に続きを話すようにと促した。
「私は子どもだけなら預かろうと神官に申しました。それで、子どもを受け入れたのです。子どもというには背が高い男の子だったのですけれど……」
「それ、騙されてますよね!?」
「ぎゃおんっ!!」
マリーと真珠は院長の話を聞いて思わず突っ込む。
子どもというから、幼児かと思っていた。
「マリーちゃん。真珠くん。おちついて」
ユリエルはマリーと真珠を宥め、院長に視線を向けて口を開く。
「院長。話を続けてください」
「はい。ユリエル様。……お恥ずかしい話ですが、そちらのお嬢さんとわんちゃんの言う通り、私たちは騙されてしまったのです。受け入れた少年が『スリープ・ミスト』を発動させたところまでは覚えているのですが、その後は眠り込んでしまって。目覚めたら子どもたちがいなくなっていたのです……っ」
その後、院長は神官に命じて兵士詰め所に助けを求め、現在に至るという。
「院長。男と少年の顔に見覚えは?」
ロアーノに問われた院長は首を横に振る。
マリーはイヴのことを尋ねるために院長を見つめて口を開いた。
「院長様っ。孤児院に、イヴさんはいませんでしたか? イヴさんは孤児院出身で、スレンダーな体形の美少女ですっ。私と真珠はイヴさんの友達なんですっ」
「わんわんっ」
マリーの言葉に真珠も肯く。
「まあ。お嬢さんとわんちゃんはイヴの友達なのですね。ええ。イヴも一緒にいました。『危険を知らせる鐘の音が鳴り響いて、街中に猿が出現したから孤児院が心配で来た』と言っていました。イヴも子どもたちと一緒にいなくなってしまったのです」
院長の話を聞き終えたユリエルは少し考えて口を開いた。
「『スリープ・ミスト』を使った少年は聖人でなければ魔術師ギルドのギルド員か、ギルド登録を抹消された者かもしれない。とりあえず、俺は領主館に戻って、領主であるお父様に孤児たちが失踪したことを伝えて、魔術師ギルドのギルド員名簿やギルド登録を抹消した者のリストを入手してもらおうと思う」
「私と真珠はイヴさんからの連絡を待ちながら、情報屋さんにこの情報を売……んんっ。相談してみますっ」
ユリエルに続いてマリーが言う。
ユリエルと一緒に遊べないのは残念だし寂しいけれど、イヴのためには手分けした方がいいと思う。
マリーに続いてロアーノが口を開いた。
「オレは兵士たちにガキども……子どもたちを運び出した荷車等がなかったか確認するぜ」
「皆さま。子どもたちを助けてください。どうぞよろしくお願いします」
院長はマリーたちに深々と頭を下げる。
マリーたちはそれぞれに、院長に肯いて行動を開始した。
***
紫月21日 真夜中(6時51分)=5月16日 10:51
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