第三百七十八話 マリー・エドワーズたちは孤児院の前で若い兵士から『孤児たちがいなくなった』と知らされ、マリーはイヴにメッセージを送信する
ユリエルとロアーノはフレンド登録を終え、そしてマリーたちは教会を出て孤児院へと向かう。
マリーは真珠を抱っこしてユリエルの傘に入れてもらい、ロアーノは自らを『ウィンドウォール・キューブ』で覆い、雨を避けた。
初めて傘に入った真珠は、不思議そうに傘を見上げ、マリーはユリエルと一緒に傘に入れて嬉しくてにこにこしている。
マリーたちが教会の裏手にある孤児院に到着すると、孤児院の前には数人の兵士たちがいた。
兵士の中には『銀のうさぎ亭』に盗まれた絵画を届けてくれた若い兵士がいる。
若い兵士は真珠を抱っこしたマリーに気づいて歩み寄ってきた。
「お嬢ちゃん。『銀のうさぎ亭』の子だよね?」
「そうですっ。マリー・エドワーズです。5歳です。おうちは『銀のうさぎ亭』という宿屋兼食堂です。よろしくお願いします。あと、抱っこしているのは私のテイムモンスターの真珠です。白い毛並みと青い目が綺麗な男の子です」
「わんわぅわんっ。わんわんっ」
「小さいのにきちんと挨拶できて偉いね。マリーちゃん。シンジュくん」
「そして私の隣にいる素敵でかっこよくて麗しい方は領主様のご子息のユリエル様ですっ」
マリーの言葉を聞いた若い兵士は目を丸くして口を開いた。
「ええっ!? 領主様のご子息……っ!? でも護衛騎士がいないようだけど……」
若い兵士は周囲を見回して言う。
ユリエルは兵士の言葉をスルーして口を開いた。
「君たちはなぜここに? 孤児院でなにかあったの?」
「はいっ。申し上げますっ。猿の群れが街を襲来した直後の混乱の隙に、孤児院の孤児たちが姿を消したとのことですっ」
若い兵士の報告を聞いたロアーノは彼を見つめて口を開いた。
「孤児を連れ去った怪しい人物等の情報は?」
探偵ロールをしているロアーノが事情を知りたがるのは本人にとっては当然の帰結だが、若い兵士は偉そうな小男に眉をひそめる。
マリーは兵士を見つめて口を開いた。
「兵士さんっ。私の友達のイヴさんはいませんかっ!? イヴさんはショートカットで、背が高くてスレンダーな美少女ですっ!!」
「僕が見た限り、孤児院に美少女はいなかったけど……」
マリーは孤児院内の女性NPCが聞いたら憤慨しそうなことを言った若い兵士の評価を前回の『女ごころがわかる』から『女ごころがわからないこともある』に下方修正した。
ユリエルはマリーに視線を向けて口を開く。
「マリーちゃん。イヴさんにメッセージを送ってみて。真珠くんは俺が抱っこするから」
「了解ですっ。ユリエル様っ。真珠をよろしくお願いします」
「わんっ」
マリーはユリエルに真珠を差し出し、ユリエルは傘を持っていない方の手で真珠を抱っこする。
マリーはイヴにメッセージを記載するためにステータス画面を出現させた。
♦
イヴさん。マリーです。
今、真珠とユリエル様、探偵ロールをしているプレイヤーと一緒に孤児院の前にいます。
力になれそうなことがあったらメッセージをください。
♦
マリーは自分が書いたメッセージを読み直して確認した後、送信した。
***
紫月21日 真夜中(6時35分)=5月16日 10:35
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