第三百七十七話 マリー・エドワーズと真珠はユリエルの傘と銃を見て歓声をあげ、ユリエルとパーティーを組み、ユリエルとロアーノはフレンド登録をする



情報屋の『ルーム』を出たマリーたちが教会を出ようとすると、外は雨だった。

雨空を見上げながら、ロアーノは口を開く。


「嬢ちゃんか坊ちゃんのどっちか『ウィンドウォール・キューブ』は使えるか?」


「私は使えないです」


「俺も使えないです。でも傘は持ってますよ。ステータス」


ユリエルはアイテムボックスから傘を取り出す。

この傘は、ユリエルの父親の港町アヴィラの領主の許可を得て、魔銃と共に領主館の宝物部屋から持ち出したものだ。


ワールドクエスト『ウッキーモンキークイーンへの求婚騒動』が発生した時に猿を討伐しに行こうとしたユリエルのために、領主の父親が宝物部屋から武器と防具を持っていくように取り計らってくれたのだ。


ユリエルが自分に合った武器や防具を選べるように、叔父で鑑定師ギルドの副ギルドマスターでもあるフレデリック・レーンがユリエルに付き添い、ユリエルが気になった武器や防具等はすべて、叔父に鑑定してもらった。

その時にユリエルが選んだものが『魔銃』と『ガード・アンブレラ』だ。

『ガード・アンブレラ』は鑑定してもらって知った性能もさることながら、雨が多い紫月を乗り切るために『傘』が欲しいと思って選んだ。


「わあっ。ユリエル様は傘を持ってるんですねっ。すごい……っ」


「わうわう。わうう……っ」


マリーと真珠はユリエルがアイテムボックスから取り出した傘を見て目を輝かせる。


「坊ちゃんの傘についているキラキラした石は、魔石か……? 価格も性能もすごそうだな」


ロアーノは粗暴な言動に似つかわしくない観察眼を発揮して言う。

ユリエルはロアーノに視線を向けて口を開いた。


「申し訳ないんですけど、この傘は真珠くんを抱っこしたマリーちゃんと俺で使わせてもらいますね」


「いいぜ。俺は『ウィンドウォール・キューブ』を使う。嬢ちゃんと坊ちゃんに使う場合には使用料として銀貨1枚ずつ貰おうと思ったんだが、残念だぜ」


「『ウィンドウォール・キューブ』でお金を取るのっ!? 私のフレンドのマギーさんは無料で何度も使ってくれたのに!!」


「ぎゃわんっ!!」


ロアーノの言葉を聞いたマリーと真珠は思わず叫ぶ。

マリーと真珠の絶叫を聞いたロアーノはにっと笑って口を開いた。


「嬢ちゃん。子犬。『よそはよそ。うちはうち』って言葉があるんだぜ。覚えておきな」


「それ、リアルでお母さんがたまに言う……」


「きゅうん……」


「マリーちゃん。真珠くんを抱っこしてくれる? 孤児院に行こう」


「ちょっと待ちな。坊ちゃん。武器を装備した方がいい」


ロアーノはそう言いながらアイテムボックスからワンドを取り出した。

ユリエルはロアーノの言葉に肯き、傘を腕にかけて、アイテムボックスからガンベルトホルスターを取り出して身に着け、それから、アイテムボックスから魔銃を取り出してホルスターにセットした。


「ユリエル様。かっこいいです……っ!!」


「わうわう。わっうわう……っ!!」


マリーと真珠は銃を装備したユリエルに目を輝かせて、彼を褒め称える。

ロアーノに見向きもしないマリーと真珠に、ロアーノは『美形キャラ優遇はゲームもリアルも同じか』と遠い目をした。


「褒めてくれてありがとう。マリーちゃん。真珠くん。バトルがあるかもしれないから、パーティーを組んでおこうね」


ユリエルはそう言ってステータス画面を操作すると、マリーの目の前に画面が現れた。





プレイヤーNO2985490ユリエル・クラーツ・ アヴィラからパーティー申請されました。

受領しますか?



       はい / いいえ





マリーは『はい』をタップした。

新しい画面が現れる。





プレイヤーNO178549マリー・エドワーズはプレイヤーNO2985490ユリエル・クラーツ・ アヴィラのパーティーに入りました。

パーティーメンバーの人数で、パーティーメンバーが討伐したモンスターの経験値が等分されます。

パーティーから離脱する場合は『フレンド機能』の『パーティー管理』をご利用ください。





「ユリエル様っ。私と真珠、ユリエル様のパーティーに入りましたっ」


「わんわんっ」


ユリエルは嬉しそうに言うマリーと真珠に微笑み、ロアーノに視線を向けて口を開く。


「ロアーノさん。俺とフレンド登録してもらえませんか?」


「いいぜ。坊ちゃんとフレンド登録はするが、オレは単独行動させてもらう」


「それで大丈夫です。よろしくお願いします」


マリーと真珠はユリエルとロアーノのフレンド登録を見守った。


***


紫月21日 真夜中(6時29分)=5月16日 10:29



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