第三百七十六話 マリー・エドワーズたちは探偵と共に孤児院に向かう



「マリーさん。その種を鑑定させて頂けませんか? 鑑定させて頂けるのであれば対価として銀貨1枚をお支払いします。鑑定した後にはまた別途にお支払いをします」


情報屋に請われたマリーは真珠を見つめて口を開く。


「真珠。情報屋さんに種を鑑定してもらってもいい?」


「わんっ」


真珠はマリーに肯いた。

真珠は情報屋がマリーにお金をくれることを知っている。

お金は大事だ。お金があったから『ラブリーチェリー』を食べることができたと真珠はわかっている。

真珠の許可を得たマリーは情報屋に種を差し出して口を開いた。


「情報屋さん。種をどうぞ」


「ありがとうございます。では先に銀貨1枚をお支払いしますね」


情報屋はマリーに銀貨1枚を手渡し、マリーの手のひらの種を受け取って『鑑定』する。

そして情報屋が鑑定情報を黒皮の手帳に書き込んでいると、ロアーノがマリーに視線を向けて口を開いた。


「情報屋が言うには、嬢ちゃんのフレンドから『たすけて。いま、こじいんにいる』というメッセージが来たってことなんだが、このメンバーで孤児院に向かうのか?」


「イヴさん……っ!!」


「ぎゃうんっ!!」


マリーと真珠はイヴからのメッセージのことをすっかり忘れていた!!

カフェオレを飲むことや『ラブリーチェリー』を食べることに夢中になってしまっていた……。

ユリエルはイヴのことを忘れて『ラブリーチェリー』をおいしく食べてしまったことに震える真珠の頭を優しく撫でる。

情報屋はマリーと真珠が衝撃を受けていることには特に関知せず、マイペースに口を開いた。


「マリーさん。『ラブリーチェリー』の鑑定料金として銀貨5枚をお支払いします。それから種を売って頂けるのであればさらに銀貨5枚を追加します」


「種を売りますっ!! えっと、それでですねっ。港町アヴィラの孤児院ってどこにあるのか教えてくださいっ」


「嬢ちゃん。落ち着け。孤児院の場所ならオレが知ってる。教会の裏手にある建物だ。孤児院の運営はその街の領主と教会が共同で行ってるんだ」


ロアーノのおかげでマリーは無料で孤児院の場所の情報をゲットした!!

情報屋はマリーに銀貨10枚を支払い、マリーは受け取った銀貨10枚をアイテムボックスに収納する。

情報屋は『ラブリーチェリー』の種をアイテムボックスに収納した。


「マリーちゃん。真珠くん。今から焦って孤児院に行くより、ここでこれからの方針を話し合ってから出かけた方がいいと思う。カフェオレを飲んで。ね?」


ユリエルは真珠の頭を撫で、マリーに視線を向けて微笑んだ。

マリーと真珠はユリエルにご馳走してもらったおいしいカフェオレを飲み切っていないことに気がついた!!

金貨1枚のカフェオレ!! 残すなんてとんでもない!!

マリーと真珠はカフェオレを味わいながら飲み、ユリエルはコーヒーを飲み終えた。

情報屋とロアーノのカップはすでに空だ。


情報屋が情報料としてロアーノに金貨1枚を請求しているのを聞いて、マリーは飲んでいたカフェオレを吹き出しそうになった。

銀貨1枚で買った情報を金貨1枚で売る!!

ぼったくりの極み……!!


「嬢ちゃん。この情報、情報屋にいくらで売った?」


マリーに尋ねるロアーノの目が据わっている。


「え? えーっと……」


正直に『銀貨1枚で売った』と言ってしまって良いのだろうか。

マリーが情報屋に視線を向けると、情報屋は静かに首を横に振った。


「お金の支払いは事件解決後にするのはどうでしょう?」


困っているマリーを見かねてユリエルが言うと、ロアーノが満面の笑みを浮かべて肯き、口を開く。


「坊ちゃんの言う通りだ。とりあえず、ここにいるメンバーで孤児院に向かうぞ」


ロアーノは情報屋への支払いをうやむやにするべく、即座に出発したいと主張する。

ロアーノの言葉を聞いたマリーは首を傾げて口を開いた。


「ロアーノさんだけじゃなくて情報屋さんも一緒に行ってくれるの?」


「私は遠慮しておきます。いろいろやりたいこともありますし、顧客との商談もあるので。あと、マリーさんが所持している『ラブリーチェリー』の買い取りの交渉等もさせていただきたいので、お時間がある時にまた商談に応じて頂けると助かります」


「わうーっ!! わう!!」


『ラブリーチェリー』をたくさん食べたい真珠は、首を横に振って『ラブリーチェリー』を売ることに反対の意を示す。


「えっと、考えておきますっ」


そう言ってマリーはカフェオレを飲み干す。

真珠もカフェオレを飲み切った。

客人たちがコーヒーやカフェオレを飲み終えたことを確認して情報屋は微笑み、口を開く。


「片づけは私がやりますから気にしないでください。皆さん、お気をつけて」


マリーと真珠、ユリエルとロアーノは情報屋に見送られて『ルーム』を出た。

そして一行は教会の裏手にある孤児院に向かった。


***


マリー・エドワーズが情報を売って受け取った対価とラブリーチェリー1個・ラブリーチェリーの種1個の対価 銀貨19枚 ※第三百六十九話・第三百七十話・第三百七十五話分も含む ※銀貨1枚は真珠の分


マリー・エドワーズの現在の所持金 3477601リズ → 3496601リズ


紫月21日 真夜中(6時16分)=5月16日 10:16



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