第三百七十五話 マリー・エドワーズたちは真珠が『ラブリーチェリー』の実(種がある方)を食べるのを見守る
「ロアーノさん。ポアロは女性や子どもに丁寧な態度で接する人物として描かれていたはずですが」
ユリエルが冷ややかな声でそう言うと、ロアーノはため息を吐いて口を開いた。
「わかったよ。坊ちゃん。残りのさくらんぼは嬢ちゃんに返すし、銀貨5枚を支払う」
「えっ。残りのさくらんぼはいらないです……」
「わんっ!!」
マリーはロアーノが軸を割いて食べた残りの『ラブリーチェリー』の受け取りを拒否し、真珠は残った『ラブリーチェリー』の実を食べたくて肯いた。
真珠はマリーが『ラブリーチェリー』の実をいらないと拒絶したことに驚いて吠える。
「わうー!! わんわぅ、わうう!!」
「真珠。どうしたの?」
マリーは真珠の訴えを聞いたが意味がわからずに首を傾げた。
「わんわぅ、わうう!!」
「子犬はさくらんぼを食いたいって言ってるんじゃねえか?」
「わんっ!!」
ロアーノの言葉に真珠は何度も肯く。
「えっ!? 真珠はロアーノさんが片方食べた『ラブリーチェリー』の実を食べたいの!?」
「わんっ」
目を丸くして言うマリーに真珠は力強く肯いた。
真珠は『ラブリーチェリー』の実を食べたい!!
「え……。ロアーノさんはプレイヤーで真珠はテイムモンスターだから友好度とか関係ない? 大丈夫かなあ……?」
『ラブリーチェリー』の効能を知っているマリーは不安になって真珠とロアーノの顔を見比べた。
誰と恋愛するかは自由だし、ゲーム内の恋愛はリアルよりもっと自由だと思うけれど、大事な真珠の恋人がロアーノになるのは嫌だ……!!
「マリーさん。プレイヤーには友好度設定がないので心配しなくても大丈夫ですよ」
マリーと同じく『ラブリーチェリー』の効能を知っている情報屋がそう言って微笑む。
テイムモンスターには友好度設定があるが、友好度が5上昇した程度では特に問題はないだろうと情報屋は判断した。
情報屋の言葉を聞いて安心したマリーはロアーノから銀貨5枚と実がひとつになった『ラブリーチェリー』を受け取り、銀貨5枚をアイテムボックスに収納する。
そしてマリーはロアーノに視線を向けて口を開いた。
「ロアーノさん。ロアーノさんがさっき食べたラブリーチェリーの実に種はありましたか?」
「種? 無かったぜ」
ロアーノの言葉を聞いたマリーは小さく肯いて口を開く。
「じゃあ、残った実に種があるのかも。真珠。この『ラブリーチェリー』の実には種があるかもしれないの。種はわかる?」
「くぅん?」
真珠は『タネ』がわからなかったので首を傾げた。
マリーは真珠に『種』の説明をするために口を開く。
「あのね。真珠。『種』っていうのはね……小さくて硬い石みたいなものなの。だから飲み込んじゃダメなんだよ。『種』は吐き出してね。できる?」
「きゅうん……。わんっ」
真珠は少し考えて、首を縦に振る。
真珠は小さい石のような『タネ』を吐き出す!!
マリーは真珠が肯いたことを確認して『ラブリーチェリー』の軸から実をもぎ、軸をテーブルの上に置いて実を手のひらに乗せた。
「真珠。どうぞ」
そしてマリーはテーブルの上に乗っている真珠に右手の手のひらに乗せた『ラブリーチェリー』の実を差し出した。
真珠はマリーの手のひらの上の『ラブリーチェリー』の実の匂いを嗅ぎ、舌先で舐め、それから実をぱくりと食べた。
甘い!! おいしい!! 少しすっぱい……?
マリーは『ラブリーチェリー』の実を食べている真珠を真剣な表情で見守る。
ユリエルはマリーの様子を微笑ましく見つめ、ロアーノは情報屋に自分を呼び出した理由を尋ねた。
やがて真珠がマリーの手のひらに『ラブリーチェリー』の種を吐き出す。
種は1円玉の硬貨より一回りほど小さかった。
「真珠っ。ちゃんと種を吐き出せて偉いね……っ」
マリーは真珠が無事に種を吐き出せたことに安堵しながら、真珠を褒めた。
マリーに続いてユリエルも真珠を褒める。
真珠はおいしい『ラブリーチェリー』を食べ終えて種を吐き出せたことが誇らしくて、マリーとユリエルに褒めて貰えたことが嬉しくて胸を張り、尻尾を振った。
***
マリー・エドワーズが情報を売って受け取った対価とラブリーチェリー1個の対価 銀貨9枚 ※第三百六十九話・第三百七十話分も含む ※銀貨1枚は真珠の分
紫月21日 真夜中(6時09分)=5月16日 10:09
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