第三百七十四話 マリー・エドワーズと真珠はカフェオレを飲み、マリーは『ラブリーチェリー』の鑑定結果を知る
情報屋は小鍋でミルクを温め、マリーと真珠のためにカフェオレを作ってくれた。
情報屋はカフェオレに砂糖をたっぷり入れて銀のスプーンでかき回し、マリーと真珠の前に置いてくれた。
真珠は初めて見るカフェオレを興味深く見つめる。
カフェオレは真っ黒じゃない……。
「お待たせしました。どうぞ召し上がってください」
情報屋は客人にコーヒーとカフェオレをすすめてから、空になっている自分のコーヒーカップにコーヒーを注ぐ。
「良い香りだ。奢ってもらうコーヒーの香りはまた格別だな」
ロアーノはそう言いながらコーヒーの香りを楽しみ、それからコーヒーを口にした。
ユリエルもおいしいブラックコーヒーを堪能している。
マリーは真剣な顔でカフェオレを見つめ、そして真珠に視線を向けて口を開いた。
「真珠。これから私がカフェオレを飲んでみるからね。甘くておいしかったら真珠も飲んでいいからね」
「わんっ」
真珠はマリーを見つめて肯く。
「じゃあ、飲むね」
マリーは自分の目の前に置かれた、カフェオレが入ったカップを手にして飲んだ。
熱い。甘くておいしい。
カフェオレの味を確認したマリーはカップをソーサーに置き、口を開いた。
「真珠。甘くておいしかったから、真珠がカフェオレを飲んでも大丈夫だと思う。でも熱いから、ふーふーして冷ましてから飲むんだよ」
「わんっ」
「情報屋さん。真珠をテーブルに乗せていいですか?」
「ええ。どうぞ」
情報屋はマリーに微笑んで肯いた。
「ありがとうございますっ」
「わぅわううわううわっ」
マリーと真珠は情報屋にお礼を言い、真珠はソファーからテーブルに飛び移る。
そして木の平皿に入ったカフェオレに顔を近づけて匂いを嗅いだ。
「真珠。カフェオレ、熱いから気をつけてね」
「わんっ」
真珠はマリーに肯き、マリーに言われた通りにカフェオレをふーふーしてから飲んだ。甘くておいしい!!
ユリエルとロアーノはマリーと真珠のやり取りを微笑ましく見守り、情報屋は『ラブリーチェリー』の鑑定をして鑑定内容を黒皮の手帳に書き込んでいる。
「でも嬢ちゃんと子犬は本当に仲がいいんだなあ。嬢ちゃんと子犬を見てると、オレの『主従の絆』の色が濁ってぶっ壊れて、テイム解除になってテイムモンスターが逃げ出したのも納得する」
「ええっ!?」
「ぎゃうんっ!?」
ロアーノの言葉を聞いて驚いたマリーと真珠が叫ぶ。
「テイムって解除されちゃうことがあるんですか!?」
「わうわ!?」
「あるぜ。っていうかオレがそうなった」
「マリーさん。『ラブリーチェリー』の鑑定が終わりました。こちらが鑑定内容です。ご確認ください」
情報屋はロアーノと雑談をしていたマリーに『ラブリーチェリー』の鑑定結果を記載したメモ帳を破り取ったものを差し出す。
「ありがとうございますっ」
マリーは情報屋にお礼を言って、鑑定結果を確認した。
♦
ラブリーチェリー
食品/Bランク。
甘酸っぱくておいしいさくらんぼ。
グリック村で育てられたもの。
一房に二つのハート型の実がつき、片方の実には種が入っている。
一房を分け合って食べた二人の友好度が互いに5上昇する。
♦
「すごいっ!! 『ラブリーチェリー』すごい……っ!!」
マリーは『ラブリー』で『ラブ上昇』な『ラブリーチェリー』の効能に感動した。
『一房を分け合って食べた二人の友好度が互いに5上昇する』なんて、全乙女ゲーマーが歓喜する……!!
「うまそうなさくらんぼだな」
ロアーノは情報屋がテーブルに置いていた『ラブリーチェリー』を裂いて、一つを口に入れた。
「ああああああああああああああああああっ!!」
「ぎゃうううううううううううううううううっ!!」
まだマリーも真珠も食べていない『ラブリーチェリー』を、ロアーノが勝手に食べた!!
マリーと真珠は絶叫した。
ロアーノの大人げない行動にユリエルは唖然とし、情報屋はため息を吐く。
『ラブリーチェリー』を食べたロアーノは笑顔になり、口を開いた。
「うん。うまい」
「『ラブリーチェリー』は一房、銀貨5枚もするのに……っ!!」
「ぎゃわああああああああんっ!!」
涙目になって怒るマリーと真珠を見て、ロアーノは頭を下げた。
「悪かったよ。怒るな。泣くなよ。金なら払う」
ロアーノはそう言って頭を上げ、言葉を続ける。
「銀貨2枚でいいか? 一個しか食べてないからな」
「ダメ!! 銀貨5枚払って!!」
マリーはまなじりをつり上げて叫んだ。
***
紫月21日 真夜中(6時02分)=5月16日 10:02
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