第三百七十一話 マリー・エドワーズはポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』をお礼として渡してしまったことを思い出し、情報屋のフレンドから連絡が来る



「私のフレンドから連絡が来るまでは、マリーさんが私に売ろうとしていた情報を教えて頂けますか?」


「はいっ」


情報屋の言葉にマリーは力強く肯き、口を開く。


「えっと、まずはワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』の情報を売りたいと思いますっ。情報屋さんは男子キャラだからパーティーには参加してないですよね? ……もしかして『オトメの心』スキルを持っていて、パーティーに参加しているとか無いですよね……?」


「私が『オトメの心』スキルを所持しているかどうかの情報の対価は銀貨1枚になります」


「いいですっ。聞かないですっ。大丈夫です……っ」


マリーは激しく首を横に振り、そう言った。

そして言葉を続ける。


「えっと、ワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』の情報のことなんですけどっ」


「レーン卿の婚約者の名前と彼らが婚約解消をしたことはすでに知っています」


そう言った後、情報屋は背広の内ポケットから黒皮の手帳を取り出して開き、マリーに見せた。


「こちらは私が知っているワールドクエスト『鑑定師ギルドの副ギルドマスターの恋人選定パーティー』のWP交換リスト一覧です。こちらに無い物の情報があれば買い取ります」


マリーは情報屋から渡された手帳のページを目で追う。


「わうー。くぅん……?」


「あっ。そうだよね。真珠とユリエル様もリストの内容を知りたいですよね。読み上げますね」


マリーは手帳に書かれた内容を真珠とユリエルにわかるように読み上げる。

真珠はマリーの言葉を肯きながら聞いている。

ユリエルは情報屋の手帳に記載された内容をマリー以外に知らせてよいのか戸惑い、情報屋の表情を窺う。

情報屋はユリエルの問うような視線を受けて、微笑んで肯いた。


マリーはユリエルと情報屋の視線のやり取りには気づかず、リストを読み上げ続けている。

ユリエルは情報屋に小さく肯きを返し、それから、マリーの言葉を肯きながら聞き続けている真珠の頭を優しく撫でた。


情報屋の手帳に書かれていないものでマリーが知っているのは『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』しかないと思いながら、リストを読み上げ終えて口を開く。


「えっと、リストに無くて私がWP交換したのは『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』だけです」


マリーの言葉を聞いたユリエルはフレデリックの幼少時の黒歴史がプレイヤーに拡散された悲劇を知って言葉を失う。

情報屋はフレデリック・レーンの情報であればいくらでも金を払ってくれる顧客の顔を思い浮かべながら、マリーを見つめて口を開いた。


「マリーさん。そのポストカードを見せて頂けますか? 『鑑定』させていただけるのであれば銀貨5枚をお支払いします」


「もちろんっ!! ……ダメです」


マリーは『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』をお礼としてアーシャに渡してしまったことを思い出した!!


「ダメ? なぜですか?」


マリーの言葉を聞いた情報屋が首を傾げる。

マリーは情報屋に頭を下げて口を開いた。


「ごめんなさい。ポストカードをフレンドにお礼として渡してしまったことを忘れてました……」


マリーの言葉を聞いたユリエルは黒歴史がお礼としてやり取りをされる恐怖に震える。

真珠はしゅんとして項垂れるマリーを心配そうに見つめた。


「マリーさん。『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』を持っているフレンドを」


そう言いかけて情報屋は言葉を切った。


「私のフレンドからのメッセージが来たようです。確認しますのでお待ちください。ステータス」


情報屋はそう言ってフレンドからのメッセージを確認する。

マリーは情報屋から借りた手帳をテーブルに置き、わくわくしながら情報屋を見つめた。

真珠も『たんてい』に会えるかもしれないと思いながら、青い目を輝かせて情報屋を見守る。

ユリエルはイヴのメッセージを読んだフレンドがひとりでも、孤児院に行っているといいなと思った。


***


紫月21日 夜(5時26分)=5月16日 9:26



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