第三百七十話 マリー・エドワーズは情報屋にイヴからのメッセージを伝えて『探偵』のロールプレイをしている情報屋のフレンドを待つ
「それで、今日はどのような情報を売って頂けるのでしょうか?」
情報屋はマリーを見つめて問いかける。
情報屋にコンタクトを取ってきたのはマリーだ。
マリーは面白い情報を売ってくれる顧客なので、レアな情報を売ってくれるかもしれないと情報屋は期待している。
マリーは情報屋と視線を合わせて口を開いた。
「えっと、情報を売りたいと思ってたんですけど、今は情報を買いたいんですっ」
マリーの言葉に情報屋は眉をひそめた。
真珠もマリーの言葉に肯いている。
情報屋はマリーの言葉の意味を掴めず、真珠の隣に座っているユリエルに視線を向けた。
情報屋の困惑を察したユリエルが苦笑して、彼に事情を説明するために口を開く。
「さっき、マリーちゃんのフレンドから彼女に『一斉送信』でメッセージが届いたんです」
「『一斉送信』ですか。誰でもいいからパーティーを組みたいという内容ではなかったんですよね?」
情報屋はユリエルにそう言った後、マリーに視線を向けた。
情報屋と視線を合わせてマリーは肯く。真珠も肯いた。
マリーはイヴからのメッセージの内容を確認するためにステータス画面を出現させて、彼女からのメッセージを表示させた。
そして、その内容を読み上げる。
「『たすけて。いま、こじいんにいる』っていうメッセージでした。全部ひらがなで書いてありましたっ」
「それは興味深い内容ですね。銀貨1枚をお支払いします」
「ありがとうございます!!」
情報屋はマリーに銀貨1枚を差し出した。
マリーは銀貨1枚を大喜びで受け取り、アイテムボックスに収納した。
真珠とユリエルは嬉しそうなマリーを微笑ましく見守る。
情報屋はマリーを見つめて口を開いた。
「それで、そのフレンドとは今、連絡が取れない状況なのですか?」
「そのメッセージが来た後は、全然メッセージが来ないので……。連絡を取った方がいいですか? バトル中とかだと迷惑かなって思ったんですけど……」
マリーの言葉を聞いた情報屋は少し考えて口を開いた。
「今から私のフレンドをこちらに呼んでもいいですか? 彼にマリーさんから聞いた情報を販売したいのですが。了承していただけたら、マリーさん、真珠くん、ユリエルさんにそれぞれ銀貨1枚お支払いします」
「私はオッケーです!!」
対価につられたマリーが即答した。
真珠は即答したマリーに困惑しながらユリエルに視線を向ける。
ユリエルは真珠の頭を優しく撫でて肯き、口を開いた。
「俺もいいですよ。真珠くんは?」
ユリエルに問いかけられた真珠は肯く。
マリーとユリエルが良いというのなら、真珠もそれでいい。
全員分の了承を得た情報屋は、マリーに、マリーと真珠の分を合わせた銀貨2枚を、ユリエルに銀貨1枚を手渡した。
マリーは真珠に情報屋から貰った銀貨を見せて真珠の分も預かると言い、真珠が肯いたことを確認してから銀貨をアイテムボックスにしまう。
ユリエルは受け取った銀貨1枚をアイテムボックスに収納した。
情報屋はフレンド機能を使って呼び出したいフレンドにメッセージを送り、ステータス画面を消してマリーたちに視線を向ける。
「今呼び出したフレンドは『探偵』のロールプレイをしているんです。マリーさんから聞いた情報を彼に売り、一緒に『孤児院』に向かいながらメッセージの謎を解いてもらおうかと思っています」
「確かに謎のメッセージですよね!! プレイヤーだから危険とか無いはずなのに『たすけて』っていうのがすごく謎だと思いますっ!!」
「わんわんっ!!」
情報屋の言葉を聞いて目を輝かせるマリーと真珠を見つめながら、ユリエルは『イヴは自分自身ではなくNPCの孤児を助けてほしかったのではないだろうか』と思った。
プレイヤーには危機でない状況でもNPCには生命に関わることもある。
「真珠。もうすぐ探偵さんに会えるよっ」
「わんわんっ」
「彼は土日は午前中からログインしているので、おそらくメッセージを見てくれると思います」
ユリエルは探偵と合流して孤児院に向かうまで時間が掛かりそうだと思いながら、今、フレンドのイヴが危機的状況にあるかもしれないということを忘れ去って笑っているマリーと真珠に苦笑した。
***
マリー・エドワーズが情報を売って受け取った対価 銀貨4枚 ※第三百六十九話分も含む ※銀貨1枚は真珠の分
紫月21日 夜(5時15分)=5月16日 9:15
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