第三百六十四話 高橋悠里は祖父と父親の態度に釈然としないものを感じながら祖母が作ってくれた朝食を食べる
枕元でアラームが鳴っている。……うるさい。
うるさいけれど、起きなくちゃ……。
悠里はスマホのアラームを止めて、スマホを枕元に置き、のろのろと起き上がる。
……お腹が痛い。
「トイレに行こう……」
生理二日目は、キツい……。
悠里はベッドから起き上がり、部屋を出てトイレに向かった。
トイレから出た悠里が自室に戻り、部屋のカーテンを開けてパジャマから部屋着に着替えていると母親が部屋に入ってきた。
「悠里。お祖母ちゃんが朝ご飯作ってくれたからダイニングに来なさいね」
母親が元気無く言う。顔色も悪い。
「お母さん。具合悪いの? 大丈夫?」
「大丈夫じゃない。今朝、生理になったのよ……」
「お母さんも? 私も昨日生理になった」
「そうなの。嫌よねえ。生理。でも生理があるから女性ホルモンが出てるとか言う話も聞くし……。お腹が痛くなるのと血が出るのがなければ生理があってもいいのに」
「それ、もはや生理じゃないよね……」
母娘でくだらない会話をしながら悠里は着替えを終えた。
母親は先に部屋を出て行き、悠里は母親の後に続く。
ダイニングでは祖父と父親が朝食を食べていた。
炊き立てのご飯のいい匂いがする。
祖父と父親のテーブルには焼き鮭とだし巻き卵、きんぴらごぼうに豆腐とネギの味噌汁が並んでいる。
「おはよう。悠里。今、お母さんと悠里のご飯を用意するわね」
「お祖母ちゃん。私、自分でご飯をよそうよ」
「悠里。お母さんの分もご飯をよそってちょうだい。よろしくね」
「はあい」
母親は何もせず、さっさと自分の席に座ってしまった。
生理でお腹が痛いのに階段を上がって悠里を起こしに来てくれたので、少しは親孝行をしよう。
生理じゃない祖父と父親はさっさと朝ご飯を食べ始めてしまっているし……。
悠里は母親の分のご飯をよそってテーブルに置き、自分の分のご飯をよそう。
祖母が手際よく母親の分のおかずと味噌汁をテーブルに置き、それから悠里の分のおかずと味噌汁を置いた。
祖母自身の分のおかずやご飯、味噌汁は、まだテーブルに置かれていない。
「お祖母ちゃんはご飯食べないの?」
「私は皆が食べ終わってからゆっくり食べるわ」
「麗奈。お茶をくれ」
「はい」
「母さん。俺もお茶が欲しい」
「わかったわ」
祖母は祖父と父親に微笑んで、電気ケトルでお湯を沸かす。
祖父と父親はご飯を作ってくれた祖母が朝食を食べていないことに全く疑問を抱いていないようだ。
悠里は祖父と父親の態度に釈然としないものを感じながら、祖母が作ってくれた朝食をおいしく食べた。
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