第三百六十話 マリー・エドワーズは復活地点を港町アヴィラの教会に変更して『銀のうさぎ亭』に到着し、マギーとアーシャにお礼のポストカードを渡す



グリック村を出たマリーたち一行はマギーの『ウィンドウォール・キューブ』で雨を避けながらグリック平原を歩き、やがて港町アヴィラにたどり着いた。


東門で兵士の検閲を受けて街の中に入り、マリーたちは教会を目指す。

東門を出る時にアーシャが声をかけた若い兵士の姿はなかったが、検閲をしていた兵士が『兵士の中で死んだ者はいなかった』と言っていたのでおそらく無事なのだろうと思う。


街の中には猿の姿はなく、街灯の明かりに照らされた通りはプレイヤーやNPCで賑わっている。

港町アヴィラの教会前にたどり着いたマリーは復活地点をグリック村の教会から港町アヴィラの教会に変更して、ほっと息を吐いた。

アーシャはマギーを見つめて口を開く。


「マギー。ウチ、マギーのルームでロ……じゃなくてゲームをやめていい? 明日っていうか、もう今日かもしれないけど日曜日の午前中からゲームで遊ぶ予定。ゲームを始めたら死に戻るから、マギーに迷惑をかけずに済むかなと思うんだけど」


「いいわよ。マリーちゃんと真珠くんも私のルームでゲームをやめる?」


「いいえ。私と真珠はおうちに帰ります。お母さんが心配してると思うので」


「わんっ」


「そうね。マリーちゃんと真珠くんは心配してくれる家族がいるものね。家に帰った方がいいわね。雨に濡れないように、家まで送っていくわ」


マギーはマリーと真珠に微笑んで言う。


「もちろんウチも付き合うよ。一緒に行こう」


「ありがとうございますっ」


「わぅわううわううわっ」


マリーと真珠はマギーとアーシャにお礼を言って頭を下げる。

優しい人たちとパーティーを組んでゲームをプレイできて本当によかったとマリーは思った。


教会を後にしたマリーたちは、マギーの『ウィンドウォール・キューブ』に守られながら『銀のうさぎ亭』に到着した。


マリーはたくさんお世話になったマギーとアーシャにお礼がしたくてアイテムボックスから『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』と『ポストカード(緋色のローブを着たフレデリック・レーン)』を取り出した。

そしてマギーとアーシャに視線を向けて口を開く。


「あの、マギーさんとアーシャさんでじゃんけんをしてもらってもいいですか?」


「いいけど……。マギー。『最初はグー』でじゃんけんを始めてもいい? 一回勝負ね」


「わかったわ」


マギーとアーシャはマリーに言われるままにじゃんけんをした。

勝者はチョキを出したアーシャだ。

マリーはじゃんけんに勝ったアーシャに『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』を差し出す。


「これ、アーシャさんにあげます。どうぞ」


「えっ!? これフレデリック様のレアなポストカードでしょ!? いいの……っ!?」


「今日、一緒にゲームできてすごく楽しかったので、お礼です。マギーさんにはレアじゃないポストカードになっちゃうんですけど、よかったら貰ってください」


アーシャに『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』を渡し終えたマリーはマギーに『ポストカード(緋色のローブを着たフレデリック・レーン)』を差し出す。

マギーはマリーからポストカードを受け取って破顔した。


「ありがとう。マリーちゃん……っ。私、WPを全部『知らせの鳥』と交換したからポストカードを持ってないのよ。嬉しい……っ」


「えっ!? マギーってWP全部『知らせの鳥』と交換したの!?」


マギーの言葉を聞いたアーシャが驚いて目を丸くして言う。

マギーはポストカードを見つめながら口を開いた。


「当然でしょ? 『知らせの鳥』でフレデリック様に手紙を出すだけで彼の友好度が5上昇するのよ。攻略のマストアイテムじゃない」


そう言った後、マギーはポストカードを左腕の腕輪に触れさせて収納する。

マギーが乙女ゲームガチ勢だと見て取ったマリーは、ひそかにマギーを自分のソウルメイトに認定した。


「マギーさんはレーン卿からお返事貰えましたか?」


「貰ったわ。三十通書いて一通返事が来たの。彼、私の字が綺麗だと褒めてくれたわ。リアルで習ったペン習字がゲームで役に立つとは思わなかった。人生、何が役に立つかなんてわからないわね」


「三十通……」


マリーは呟いて考え込む。

レーン卿のマギーへの友好度は150上がっていることになる。

恋人確定イベントとか始まりそう……。


「うああっ!! ウチはマギーに大差をつけられてる……っ!!」


「友達でもフレンドでも容赦はしないわよ。恋の勝者はひとりだけだもの」


マギーの言葉を聞いたマリーは『アルカディアオンライン』のNPCがハーレムとか作らない設定でありますようにと祈った。

乙女ゲームガチ勢のプレイヤーは攻略対象がハーレムを作ることを許さない。


「フレデリック様。ウチも頑張りますからね……っ」


アーシャはレアなポストカードのレーン卿に話しかけ、ポストカードをアイテムボックスに収納した。

女装した幼少期の自分のポストカードに『恋愛を頑張る』と話しかけられたことをレーン卿が知ったらアーシャへの友好度が下がりそうだと思いながら、マリーと真珠はパーティーメンバーと別れて家に帰った。


***


※マリー・エドワーズは復活地点をグリック村の教会から港町アヴィラの教会に変更


※マリー・エドワーズは『ポストカード(女装して濃い青色のワンピースドレスを着た幼少時のフレデリック・レーン)』と『ポストカード(緋色のローブを着たフレデリック・レーン)』を譲渡。


マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇


祈り レベル0(30/100)→ レベル0(40/100)


紫月20日 朝(2時45分)=5月16日 0:45



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