第三百六十一話 マリー・エドワーズと真珠は『銀のうさぎ亭』に帰って祖父に抱きしめられ、メシマズなご飯を食べることを回避した後に『リープ』する



マリーと真珠が『銀のうさぎ亭』に足を踏み入れると、カウンターにいた祖父が駆け寄ってきた。


「マリー!! シンジュ!!」


「お祖父ちゃん……!!」


「わんわんっ!!」


祖父はマリーと真珠を抱きしめた。


「マリー。『銀のうさぎ亭』の土地と建物の権利書を取り戻してくれてありがとう。俺はアーウィンの野郎に騙されて、マリーを救うどころか『銀のうさぎ亭』の土地と建物すべてを奪われるところだった。マリー。ありがとう。無事に元気になってくれてよかった」


「お祖父ちゃん……」


「くぅん……」


祖父は泣いているようだった。マリーと真珠が祖父に抱きしめられたまま、おとなしくしているとカウンター奥から祖母が現れた。


「マリー。シンジュ。帰っていたのね。無事でよかった」


祖父は自分の拳で涙を拭い、マリーと真珠を解放した。


「アニス。マリーとシンジュに飯を食わせてやれ。腹を空かせているだろうからな」


「ええ。そうね」


「あのっ!! お腹空いてない!! 大丈夫!! 私と真珠はグリック村の人たちと、猿がいなくなったお祝いの食事会に参加させてもらったのっ。ノーマさんも村長さんも村の人たちも無事だったんだよっ」


「わんわんっ」


「そうなのか。よかった。街に猿の群れが現れた時はどうなることかと思ったが、短時間で事態が収束したな」


祖父の言葉に祖母とマリー、真珠が肯く。


「じゃあ、私と真珠は疲れたから寝るねっ。おやすみなさいっ」


「わんわんっ」


マリーと真珠は家族用の段差の大きい階段を駆け上がった。


メシマズなご飯を回避したマリーと真珠はベッドがある部屋に入り、扉を閉めた。

部屋の中にはマリーと真珠しかいない。


「真珠は先にベッドに行ってて」


「くぅん……」


「足が汚れてるのが気になるんだね。ごめんね。私、真珠のために魔術師ギルドに登録して『クリーン』の魔法を覚えるからねっ」


「わうー!! わんわんっ!!」


マリーの言葉を聞いた真珠は尻尾を振り、元気よくベッドに駆け寄る。

真珠がベッドに飛び乗ったのを見届けたマリーはブラウスにつけていた『勇気のバッジ』を外してアイテムボックスに収納した。

それからベッドに座って『疾風のブーツ』を脱ぎ、『白薔薇蜘蛛糸のリボン』を解いてアイテムボックスにしまってから『疾風のブーツ』も左腕の腕輪に触れさせて収納する。

その後、寝巻に着替えるか迷ったマリーは、面倒くさいのでそのまま寝てしまうことにした。


「真珠。一緒に寝ようね」


「わんっ」


マリーと真珠はベッドに隣り合って横たわり、そしてマリーは口を開いた。


「リープ」


マリーはリープして睡眠状態になった。


気がつくと、悠里は転送の間にいた。


「サポートAIさんっ。今の日にちと時間を教えてくださいっ」


「現在の日時は5月16日0:55です」


「うわあ……。もう日曜日になっちゃたんだ」


悠里はため息を吐いて呟いた。


***


紫月20日 朝(2時55分)=5月16日 0:55



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