第三百五十五話 マリー・エドワーズと真珠はパーティーメンバーと合流し、教会に戻った後、ノーマにパーティーメンバーを紹介する
教会の外に出たマリーと真珠は、雨に濡れた。
死に戻ってすっかり乾いていた髪と服、身体がまた濡れてしまってマリーと真珠はがっかりする。
でも仕方がない。
NPCのノーマや村人たちが濡れてしまうより、プレイヤーのマリーとテイムモンスターの真珠が濡れた方がマシだ。
マリーと真珠は死に戻るか、リープするか、ログアウトすれば髪や身体、服はすぐに乾く。
村の中には、猿の姿はどこにもなかった。
マリーと真珠は息を吐き、互いに視線を合わせて微笑む。
よかった。ワールドクエスト『ウッキーモンキークイーンへの求婚騒動』は本当に終わっていたのだ。
「マリーちゃん!! 真珠くん!!」
村人の一団と一緒にやってきたアーシャとマギーが手を振る。
村人たちとアーシャ、マギーは『ウィンドウォール・キューブ』で雨から守られていて濡れていない。羨ましい。
ずぶ濡れのマリーと真珠はアーシャたちに駆け寄る。
「アーシャさん!! マギーさん!!」
「わんわんっ」
マリーと真珠はアーシャとマギーに合流した。
マリーと真珠も『ウィンドウォール・キューブ』に守られる。
マギーはずぶ濡れのマリーと真珠に『クリーン』をかけてくれた。
「ありがとうございますっ。マギーさん」
「わぅわううわううわっ」
「どういたしまして」
お礼を言うマリーと真珠にマギーが微笑む。
「いやあ。本当に、聖人様はなんでもできるんだなあ」
「猿の群れも魔法や連射で追っ払っちまったし」
村人たちはマギーとアーシャの強さを褒め称え、マリーと真珠はパーティーメンバーとしてマギーとアーシャを誇らしく思いながら肯く。
「何度も言うけど、猿の群れが撤退したのはウチらの手柄じゃないですからね。『ウッキーモンキークイーン』を倒したプ……じゃなくて聖人の手柄です」
生真面目な表情で言うアーシャに村人たちが大きな声で笑った。
「結局は聖人様のおかげじゃねえか!!」
「違いない!!」
アーシャは村人たちの言う通りかもしれないと思いながら、一緒に笑った。
『ウィンドウォール・キューブ』で守られた一団が教会に入ると、避難していた村人たちの一部がわあっと歓声をあげた。
歓声をあげたのはきっと村人たちの家族だろうとマリーは思う。
教会に避難していたのは女性と子どもだけ。神官たちが一緒にいても、不安は大きかっただろう。
「マリーちゃん!! シンジュくん!!」
マリーと真珠の姿を見つけたノーマが駆け寄ってくる。
「大丈夫!? 怪我とかしてない……っ!?」
心配そうに言うノーマにマリーと真珠は笑顔で肯く。
ノーマは教会を出たマリーと真珠が濡れていないことを不思議に思い、村人たちが誰一人濡れていないことに気づいた。
『聖人』はすごいとノーマは素直に思う。雨の中を出て行ったら髪も服もずぶ濡れになる。
ノーマたちが家から教会に避難した時間帯は『夜』だったから雨に濡れずに済んだのだけれど。
マリーはノーマを見つめて口を開いた。
「村の中には、もう猿はいないよ。おうちに帰っても大丈夫だよ」
「わんわんっ」
「本当!? あのね。お父さんが村の皆と果樹を守ってるはずなの。様子を見に行っても大丈夫かな?」
ノーマの問いかけを聞いたマリーは雨避けになる『ウィンドウォール・キューブ』を使える魔法使いのマギーに視線を向けた。
マリーと真珠、ノーマを温かく見守っていたマギーは微笑んで口を開く。
「私が『ウィンドウォール・キューブ』を使えば、皆で濡れずに様子を見に行けるわね」
「もちろん、ウチも行くよっ」
マギーの隣に立っているアーシャが親指を立てて、言う。
「ノーマさん。あのね。セクシーで魔法が上手なお姉さんがマギーさん。可愛くて頼りになるお姉さんがアーシャさんだよ。二人は私と真珠のパーティーメンバーで仲間なんだよっ」
「そうなのね。あの、マリーちゃんやシンジュくんと一緒にグリック村に来てくれてありがとうございます。私はノーマ・グリックです。グリック村の村長の娘です。『ラブリーチェリー』の果樹のところまで付き合ってくださるようで、本当にありがとうございます」
ノーマはマギーとアーシャにそう言って頭を下げた。
「ノーマちゃん。頭とか下げなくていいからっ。マリーちゃんと真珠くんの友達はウチらにとっても大事だしっ」
アーシャがそう言うと、ノーマは頭をあげて嬉しそうに微笑む。
「ノーマちゃんさえよかったら、私たちとも友達になってもらえると嬉しいわ」
マギーがそう言うとアーシャも大きく肯く。
「私でよければ、喜んで。友達になってください」
マリーと真珠は、ノーマとマギー、アーシャが友達同士になるところをにこにこしながら見守った。
***
紫月20日 早朝(1時32分)=5月15日 23:32
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます