第三百五十四話 マリー・エドワーズと真珠は礼拝堂でノーマと再会し、ワールドクエスト『ウッキーモンキークイーンへの求婚騒動』が終了する
マリーと真珠は神官のカイラに案内されて、復活の間を出た。
復活の間は礼拝堂に続いている。
マリーと真珠がカイラの後に続いて礼拝堂に足を踏み入れると、礼拝堂に避難していたグリック村の村人たちが一斉に視線を向けた。
「マリーちゃん!! シンジュくん……!!」
村人の一団の中からマリーと真珠の名前を呼ぶ少女の声がした。
声の主はノーマだ。
ノーマはマリーと真珠に足早に歩み寄る。
ノーマの姿を見たマリーと真珠は歓声をあげた。
「ノーマさん!! 無事でよかった!!」
「わんわんっ!!」
「どうしてここにいるの!? 今、村は猿の群れに襲われて大変な状況なのに……っ!!」
「だから来たんだよっ。あのね『ラブリーチェリー』を全部収穫して」
マリーの言葉を遮るように、甲高い悲鳴のような声が響き渡る。
その悲鳴を聞いた瞬間、マリーの心を恐怖が苛んだ。
真珠はマリーの足元で後ろ足の間に尻尾を挟み、耳をぺたりとくっつけて身体を丸め、震える。
ノーマや村人は両耳を両手でおさえて蹲った。
神官のカイラは両足に力を込めて踏ん張り、恐怖を押し殺して口を開く。
「魔力操作ON!! エリアマインドピュリフィケーションON!!」
カイラが呪文を唱えると礼拝堂にきらきらした金粉のようなものが舞い落ちる。
金粉のようなものに触れると、マリーの心から恐怖の感情が消え去った。
金粉のようなものに触れ、真珠の身体の震えも止まり、真珠はほっと息を吐く。
カイラはマリーと真珠、村人たちが『恐怖』の感情から解き放たれたことを確認して口を開いた。
「魔力操作OFF」
教会内を舞っていた金粉のようなものが緩やかに消えたその直後、サポートAIの声が響いた。
「プレイヤーが『ウッキーモンキークイーン』を討伐しました。クエスト達成条件を満たしたため、ワールドクエスト『ウッキーモンキークイーンへの求婚騒動』を終了致します。
『ウッキーモンキークイーン』を討伐したことにより『ファントムウッキーモンキークイーン/ファントムウッキーモンキー/ファントムラッキーウッキーモンキー』が『夜』『真夜中』の時間帯に西の森とグリック平原に出現します。
『ウッキーモンキークイーン』を討伐したプレイヤーには『ウッキーモンキークイーンの怨念』が付与されます。
これより、ワールドクエストを受諾したプレイヤー各位にワールドクエストポイント(WP)が付与されます。
詳しくはステータス画面の『クエスト確認』をご確認いただくか、転送の間でサポートAIにお尋ねください」
「ワールドクエスト達成されたんだ。『ウッキーモンキークイーンの怨念』とか怖い……」
サポートAIのアナウンスを聞いたマリーは呟く。
「わうー。くぅん?」
「真珠。お疲れさま。たぶん、猿の群れは村からいなくなると思うよ」
マリーは真珠を抱っこして微笑む。
「マリーちゃん。猿の群れが村からいなくなるって本当?」
不安げな顔で問いかけるノーマに肯き、マリーは口を開いた。
「プ……じゃなくて聖人が『ウッキーモンキークイーン』を討伐したんだって。猿たちが『ラブリーチェリー』をあげたかった『ウッキーモンキークイーン』が討伐されたから村から出て行くと思うよ」
「マリー様。わたしが様子を見てきます」
神官のカイラの言葉にマリーは首を横に振った。
「私と真珠が様子を見てきます。カイラさんは村人の皆さんと一緒にいてあげてください。真珠、行こうっ」
「わんっ」
マリーと真珠は教会を出ようとして、扉の前で立ち尽くす。
マリーは気まずい顔をして、カイラを振り返り口を開いた。
「すみません。私と真珠、教会の扉を開けられないので開けてもらってもいいですか……?」
そもそもマリーは教会の扉が開けられなくて、復活地点をグリック村の教会に変更したのだ。
マリーの言葉に、教会内を一瞬、沈黙が支配する。
「失礼しましたっ。わたしが扉を開けますね」
聖人でも『アンロック』が使えないのかと思いながら、カイラは『アンロック』の呪文を唱えて教会の扉を開けた。
マリーと真珠はカイラにお礼を言って教会を出て行った。
***
紫月20日 早朝(1時26分)=5月15日 23:26
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