第三百四十七話 マリー・エドワーズと真珠はパーティーメンバーと『銀のうさぎ亭』に向かう
マリーたちはマギーの『ルーム』を出て、マギーが『ルーム』の扉を管理者権限でロックする。
そして、マリーたちは動く階段に乗った。階段に一番に乗り込んだ真珠が意気揚々と吠える。
「わうう、わんっ!!」
すると、階段が上に向かって動き始めた。
「今、真珠は『上りON』って言ったんですよっ」
マリーはドヤ顔で真珠の偉業をパーティーメンバーに知らしめる。
「今のをくみ取るとかすごいね。『アルカディアオンライン』のゲームシステムを尊敬する」
「正しい発音じゃなくてもゲームシステムが『魔法スキル』と判定したら魔法は発動するのかも? 試してみる価値はありそう」
アーシャは真珠ではなく『アルカディアオンライン』のゲームシステムを尊敬し、マギーは詠唱の新たな可能性を見出したようだ。
パーティーメンバーが真珠を称えなくて、マリーは少しがっかりした。せめてマリーだけは真珠の賢さを褒め称えよう。
「真珠っ。階段を動かせてすごいねっ」
「わおんっ」
真珠はマリーに褒められて嬉しくて尻尾を振る。
階段を上がり切ったマリーたちが『フローラ・カフェ港町アヴィラ支店』のカウンターに出るとカウンター内にいた神官が話しかけてきた。
「聖人様方。聖獣様。今、港町アヴィラの西門から東門へ向かって猿のモンスターが怒涛のごとく押し寄せているそうです。教会を出た際は十分に気をつけてください」
「わかりました。ありがとう」
パーティーを代表してマギーが答える。
マリーと真珠は、改めて気を引き締めた。アーシャは特に気負う様子がない。
プレイヤーはHPが0になっても教会に死に戻って全快するから気楽にクエストに臨んでも良いのだ。
そしてマリーたちは『フローラ・カフェ港町アヴィラ支店』を後にする。
復活地点の魔法陣がある部屋を抜け、礼拝堂を通り過ぎて教会を出た。
マリーたちが教会を出ると空は暗く、紫色の月が浮かんでいる。
今、ゲーム内時間は『夜』のようだ。
鐘の音が鳴り響き、教会の前には猿の襲来に怯えたNPCが集まっている。
まだ礼拝堂はいっぱいになっていなかったから、きっと受け入れてもらえるだろうとマリーは思った。
「なんかワールドクエスト『狼王襲来・港町アヴィラ攻防戦』みたいだね」
教会の前に集まる人々を見て、ぽつりと言ったアーシャの言葉を聞いたマリーは家族の安否が気になった。
「あのっ。私と真珠はおうちに、『銀のうさぎ亭』に一度戻って家族の様子を見てもいいですか? わがままを言ってごめんなさい。アーシャさんとマギーさんは先にグリック村に行ってください」
マリーはアーシャとマギーにそう言って頭を下げた。
真珠はアーシャとマギーに頭を下げるマリーを見て、自分も頭を下げる。
アーシャはマリーと真珠に微笑み、口を開いた。
「ウチはマリーちゃんや真珠くんと一緒に『銀のうさぎ亭』に行くよ。ウチら、パーティー組んでるんだし」
アーシャの言葉を聞いたマギーが肯き、口を開く。
「私も一緒に行くわよ。私にはゲーム内に家族はいないけど家族が心配な気持ちはわかる。家族はNPCなんでしょ?」
マギーに問われてマリーは肯く。
「みんなで『銀のうさぎ亭』に行こうっ。ウチらは今、パーティーを組んでる仲間だからねっ」
笑顔で言うアーシャに感謝しながら、マリーと真珠は肯いてお礼を言った。
***
紫月19日 夜(5時30分)=5月15日 21:30
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