第三百四十六話 マリー・エドワーズとパーティーメンバーは準備を整える



「みんな!! 悪いけど女子会はこれでおしまい!! 私の都合で終わりにするから会費はいらないわ。片付けもこっちでやっておくから」


ルームの主、マギー・ジレンホールがルーム内にいたプレイヤーたちに呼びかける。

椅子に座って料理を食べたり喋ったりしていたプレイヤーたちは少し迷った表情を浮かべたが、マギーにお礼を言ってルームを出て行く。

マリーと真珠、アーシャとマギーだけがルーム内に残った。

マギーはテーブルに残った料理を左手の腕輪に触れさせて収納しながら口を開いた。


「私たちの食べかけの料理だけどトングで取り分けていて清潔だから、グリック村の人たちへの差し入れにいいと思うの。NPCには食事が必要でしょ?」


「それ、すごくいい考えだと思いますっ」


マリーはそう言いながら、少しだけクッキーが残った箱の蓋をして左腕の腕輪に触れさせて収納した。

ノーマやノーマの家族にクッキーを食べてもらいたい。……クッキーの枚数がすごく少なくて申し訳ないけれど。

真珠はクッキーが食べたかったけれど、自分はさっきたくさん食べたのだからと思って我慢した。


「あっ。そうだ。『疾風のブーツ』を履こう。種族レベルが3になったからDEX値が上がったし、リボンをつけていなくても履けるかも……っ」


マリーはアイテムボックスから『疾風のブーツ』を取り出して木靴を脱ぎ、ブーツを履こうとした。

……履けない。ブーツの紐がほどけない……っ。

今のマリーのDEX値ではまだ『疾風のブーツ』をひとりで履くことができないようだ。


「マリーちゃん。ブーツ、履けないの? ウチ、手伝おうか?」


『疾風のブーツ』をひとりで履けなくてしょんぼりしているマリーに気づいてアーシャが言う。


「あ、えっと、ブーツじゃなくてリボンを結んでもらってもいいですか?」


「リボン? この前、パーティーに参加していた時に結んでたリボンかな?」


「はいっ。あのリボンをつけるとDEX値が上がって、ひとりでブーツを履けるんですっ」


「いいよ。ウチはDEX値が高いから、ゲーム内での器用さには自信あるよっ」


「ありがとうございますっ。今、リボンを出しますね」


マリーは出しっぱなしにしていたステータス画面を操作して『白薔薇蜘蛛糸のリボン』を取り出して手にした。

そして『白薔薇蜘蛛糸のリボン』をアーシャに渡す。


「アーシャさん。よろしくお願いしますっ」


「任せてっ」


アーシャはマリーから『白薔薇蜘蛛糸のリボン』を受け取り微笑む。

マリーはアーシャがリボンを結びやすいように、真珠を抱っこして一人掛けの椅子に移動することにした。


マリーは一人掛けの木の椅子に真珠を抱っこして座り、アーシャに、髪にリボンを結んでもらう。


「マリーちゃん。リボン、可愛く結べたよ。マギーに鏡を見せてもらう?」


「私、手鏡持ってますっ。今出しますね。ステータス」


マリーはアイテムボックスから手鏡を取り出して、自分の髪型を確認する。

アーシャはヘアバンドのようにリボンを結んでくれていた。可愛い。


「わうー!! わううわ!!」


真珠はリボンをつけたマリーを褒め、尻尾を振った。


「ありがとう。真珠。ありがとうございます。アーシャさん」


「どういたしまして」


アーシャはマリーが髪型を気に入ってくれてよかったと思いながら微笑む。

マリーは手鏡をアイテムボックスに収納した。

真珠は手鏡で自分の顔を見たかったが、今はノーマが心配だから我慢しようと思った。

それからマリーは真珠をそっと床に下ろしてソファーの前に置いていたブーツを履き、脱いだ木靴をアイテムボックスに収納する。


「準備はできた?」


ルーム内の片づけを終えたマギーが水晶をはめ込んだロッドを手にして問いかける。

マギーはとんがり帽子と魔防のマントを身に着けていた。


「あ、ちょっと待ってくださいっ」


マリーは出しっぱなしにしていたステータス画面を操作して『勇気のバッジ』を取り出して右胸につけた。

『勇気のバッジ』はワールドクエスト『狼王襲来・港町アヴィラ攻防戦』で付与されたWPで交換したバッジで、装備するとLUC値が10上昇する。

アーシャはアイテムボックスから矢が入った矢筒を取り出して背負い、それから弓を取り出して持った。


「準備はできたみたいね」


そう言うマギーにマリーと真珠、アーシャはしっかりと肯いた。


***


紫月19日 夜(5時22分)=5月15日 21:22



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