第三百四十四話 マリー・エドワーズはリープして、高橋悠里は転送の間でワールドクエスト『ウッキーモンキークイーンへの求婚騒動』のクエスト内容を確認してクエストを受注する



「マリーちゃん!! ワールドクエストだって!! しかもモンスター討伐系っぽくない……!?」


マリーの隣に座っているアーシャが興奮して、頬を上気させて言う。

アーシャの言葉に肯き、マリーは口を開いた。


「とりあえず、転送の間に行きませんか? サポートAIさんにいろいろ確認とかした方がいいと思うんです」


今、この場にいるのはプレイヤーとテイムモンスターだけなので、プレイヤーが一斉にリープして睡眠状態になっても全く問題ない。

プレイヤーであるマギー・ジレンホールのルーム内というのも、睡眠状態になった時にNPCに持ち物等を奪われるリスクを考えずに済むのでマリーにはありがたかった。


「そうだね。ウチ、転送の間に行くよ。リープ」


アーシャはリープして睡眠状態になった。

睡眠状態になったアーシャは目を閉じ、身体をソファーの背もたれにあずけている。

マリーは真珠にこれからリープすると説明するために『リープ』と口にして、説明の途中でリープした。

リープと言うと転送の間の飛ぶ仕様に、悠里はまだ慣れない……。


気がつくと、悠里は転送の間にいた。


「私、真珠に説明している途中で転送の間に来ちゃったんだ。とりあえずさっきアナウンスがあったワールドクエストの内容を確認しよう。ステータス」


悠里はステータス画面を呼び出して『クエスト確認』をタップした。

新たな画面が表示される。





汎用クエスト  固有クエスト  ワールドクエスト【NEW】





『ワールドクエスト』のところに【NEW】の記載がある。

悠里は『ワールドクエスト』をタップして『ウッキーモンキークイーンへの求婚騒動』に指で触れた。

新たな画面が表示される。





クエスト名 ウッキーモンキークイーンへの求婚騒動【NEW】【未受注】



『孤王の領域』でウッキーモンキークイーンが誕生した。

たった一匹しかいない女王の心を射止めるため、ウッキーモンキーとラッキーウッキーモンキーたちは『ラブリーチェリー』を求めて西の森からグリック村に向かう。


このクエストを受注する場合は【未受注】の部分をタップして【受注する】を選択する必要があります。


クエストの受注期間は下記のクエスト達成条件が達成されるまでとなります。


このワールドクエストはチェーンクエストになる可能性があります。





「ウッキーモンキーたちがグリック村に向かうの!? ノーマさんが大変……っ!! でも『ラブリーチェリー』が欲しいだけだから村の人に危害は加えないのかも……?」


「グリック村の村人に死傷者が出るかどうかは状況次第です」


悠里の問いかけに答えてサポートAIが言う。


「怖……っ。……でも、ここで怖がってても仕方がないよね。クエスト発生条件を見てみます」


悠里は表示されているワールドクエストの説明文を読み進める。





クエスト発生条件


プレイヤーがウッキーモンキーを100000匹以上、ラッキーウッキーモンキーを1000匹以上討伐する。


グリック村で栽培している『ラブリーチェリー』が完熟する。





「うわあ。このワールドクエストが発生したのってプレイヤーのせいなんだ。グリック村の村人NPCはめちゃくちゃ迷惑だよね。ごめんなさい……」


悠里は西の森でウッキーモンキーを(パーティーメンバーが)討伐した経験があるので謝罪した。

グリック村の村人NPCには届かない、自己満足100パーセントの謝罪だという自覚はある。


「クエスト達成条件はなんだろう……?」


悠里は表示されているワールドクエストの説明文を読み進めた。





クエスト達成条件(①~④のどれかの条件が達成された時点でクエスト達成)



①ウッキーモンキークイーンが『ラブリーチェリー』を受け取る


②ウッキーモンキークイーンの討伐


③ウッキーモンキー100万匹の討伐・ラッキーウッキーモンキー1万匹の討伐


④グリック村のすべての『ラブリーチェリー』を食べ尽くす・破棄する・アイテムボックス内に収納する


クエスト達成に貢献・協力したと見做されたプレイヤーにはクエスト達成後にワールドクエストポイント『WP』が付与されます。


ワールドクエストポイントはリズ、スキルポイントの他、様々な装備品や装飾品、アイテム等と交換できます。

ワールドクエストポイントには交換期限があります。


交換期限が過ぎたポイントは1wp=1リズとして自動変換され、該当プレイヤーのアイテムボックスに、通貨が自動的に付与されます。





「うわっ。クエスト達成条件がいっぱいある。①が平和でいいんじゃないかと思うけど……」


「グリック村の村人NPCはウッキーモンキーやラッキーウッキーモンキーから『ラブリーチェリー』を守ろうと奮闘しています。現在のウッキーモンキー討伐数は51匹/ラッキーウッキーモンキーの討伐数は3匹です」


「グリック村の村人NPCが頑張ってるんだね。ノーマさんと村長さん、ノーマさんの家族は無事でいる?」


「ゲームのネタバレについては返答しかねます」


「サポートAIさんは相変わらずゲームのネタバレに厳しい……っ。とりあえず、このワールドクエストを受注しよう」


悠里は画面の【未受注】の部分をタップした。

新たな画面が現れる。





このクエストを受注しますか?



受注する/受注しない





悠里は『受注する』をタップした。

そしてワールドクエスト『ウッキーモンキークイーンへの求婚騒動』の項目を確認する。


「【未受注】からちゃんと【受注】になってる。よかった。ユリエル様やマーキースはこのワールドクエストを受注したのかな?」


悠里は少し迷ったが、二人にメッセージを送るのはやめることにした。

ゲームに戻ったら、マリーは真珠と一緒にすぐにグリック村に向かいたい。

悠里はマリーと友達になったNPCのノーマが心配だ。


ユリエルやマーキースと一緒にパーティーを組めたら嬉しいと思うけれど、でも、彼らはクエスト達成を目指すかもしれない。クエストの達成よりNPCの友達の安否を確認することを優先するマリーとは意見が分かれる可能性がある。

ゲームは自由に好きなように遊ぶのが楽しい。

だから、今はメッセージを送るのはやめようと悠里は思う。


「あとは、確認することとかないかな。……大丈夫なはず。たぶん。クローズ」


悠里はステータス画面等を消して口を開いた。


「サポートAIさん。私、そろそろ行きますね」


「それでは、素敵なゲームライフをお送りください」


サポートAIの声に送られ、悠里は鏡の中に入っていった。



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