第三百四十一話 マリー・エドワーズはアーシャのために木皿に料理を盛った後、自分のために料理を盛る
カウンターテーブルに行っていたアーシャが人数分の木皿とマリーとアーシャの分の木のフォークを持ってマリーが待つソファーに戻ってきた。
「お待たせ。マリーちゃん。木皿とフォークを持って来たよ」
「ありがとうございます。アーシャさん」
マリーはアーシャにお礼を言って、差し出された木皿とフォークを受け取る。
アーシャは真珠と自分の分の木皿をテーブルに置いて、真珠を囲むプレイヤーたちに視線を向け、苦笑した。
「真珠くん、めちゃくちゃ囲まれてるね」
「あれがハーレムか……と思いました……」
マリーは美女、美少女プレイヤーたちに囲まれている真珠を見つめて微笑み、言った。
マリーに小さく肯いた後、アーシャはテーブルの上にあるクッキーの箱に目を向け、口を開く。
「あっ。結構クッキー減ってるね」
「みんなが真珠に食べさせるために持って行ったので……。アーシャさんもクッキーを食べてくださいっ。私はアーシャさんの分の料理を小皿に取ってきますね」
「いいの?」
「はいっ。アーシャさんは食べられないものとか嫌いなものとかありますか?」
「特にないよ。『アルカディアオンライン』での食事ってなにも気にせず食べたいものを食べられるし、食べすぎてもお腹痛くなったり気持ち悪くなったり太ったりしないから、いろんなものを食べたいなって思う」
「了解ですっ」
アーシャの希望を聞いたマリーはテーブルを回って大皿に盛られた料理を、添えられている木のトングで少しずつ小皿に取り分け、アーシャの元に戻る。
「アーシャさん。どうぞっ」
料理を取り分けてアーシャの元に戻ったマリーは料理を盛った木皿を差し出す。
から揚げ、フライドポテト、ポテトサラダとグリーンサラダ、それから四等分にカットされたオレンジを二切れ乗せた。
我ながら、上手に盛れたとひそかにマリーは胸を張る。
アーシャは手にしていたナッツクッキーを口の中に放り込んで咀嚼し、飲み込んでからマリーが差し出した木皿を受け取り、笑顔になる。
「うわあ。綺麗に盛ってるね。ありがとう。マリーちゃん」
「どういたしましてっ」
マリーはアーシャに『綺麗に盛ってるね』と言われて嬉しくて微笑み、それから真珠に視線を向けた。
真珠はまだプレイヤーたちに囲まれてクッキーを食べさせてもらっている。
終わりなきハーレム……と思いながらマリーは自分の木皿に料理を盛ることにした。
料理が並ぶテーブルを回り、アーシャとまったく同じ盛り付けをして、マリーはアーシャが座るソファーに戻った。
真珠はまだハーレム状態だ。
……真珠。モテ期が来たんだね。真珠は可愛くてかっこよくて賢いからモテて当然なんだけど……。
マリーは真珠の主として寂しい気持ちを抱きながら、でも真珠のハーレムの邪魔はしないと心に決めてアーシャの隣に座った。
***
紫月19日 夕方(4時35分)=5月15日 20:35
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