第三百四十話 マリー・エドワーズと真珠はみんなと『乾杯』をして、真珠はマリーやプレイヤーたちにクッキーを食べさせてもらう



女子会に参加しているプレイヤー全員の手に、赤ワインやオレンジジュースが入ったワイングラスが行き渡り、真珠の前にはミルクが入った平皿が置かれた。

真珠はソファーから下り、木目の床の上に置かれた平皿の前に、きちんとおすわりをしている。

マリーは真珠の主として、礼儀正しい真珠の振る舞いを誇らしく思った。

真珠は本当に可愛くてかっこよくて賢い!!


『ルーム』の主であるマギーは部屋を見回し、全員に飲み物が行き渡っていることを確認して、赤ワインが入った自分のワイングラスを掲げて口を開いた。


「じゃあ、乙女ゲーム好きが一同に会したことを祝して、乾杯!!」


「乾杯!!」


「……わんわう?」


プレイヤーたちの声と一拍遅れて真珠の声がマギーに追従し、部屋の中をワイングラスを触れ合わせる音が響く。

真珠も平皿を持ち上げて『かんぱい』をしたかったが、そうしたら中に入ったミルクがこぼれてしまうと思ってしょんぼりと項垂れた。

アーシャとワイングラスを触れ合わせたマリーはオレンジジュースが入ったワイングラスを持ってソファーから立ち上がり、真珠の側にしゃがみ込んで口を開く。


「真珠も私と乾杯しようね。乾杯っ」


「わんわうっ」


マリーは自分のワイングラスを真珠の平皿にそっと触れ合わせた。

真珠は『かんぱい』ができて嬉しくて尻尾を振る。

マリーが真珠と乾杯をしているのを見て、アーシャもオレンジジュースが入ったワイングラスを持ってソファーから立ち上がって真珠の側にしゃがみ込む。


「真珠くん。ウチとも乾杯しよっ。乾杯」


「わんわうっ」


アーシャが自分のワイングラスを真珠の平皿にそっと触れ合わせると、その様子を見ていた他のプレイヤーたちが真珠の周りに集まってきた。

そして真珠の側にしゃがみ込み、自分が手にしたワイングラスと真珠の平皿を触れ合わせる。

真珠はみんなと『かんぱい』できて嬉しくて尻尾を振った。

『じょしかい』は楽しい……!!


一通り、乾杯を終えたマリーは真珠に視線を向けて微笑み、口を開いた。


「真珠。乾杯が終わったから飲み物を飲もうね」


『かんぱい』が終わったらミルクを飲んで良い。

真珠はマリーの言葉に肯き、マリーがオレンジジュースを飲んでいるのを確認して、自分も平皿のミルクの匂いを嗅ぎ、ミルクを舐めた。

冷たい!! おいしい……!!

真珠は冷たいミルクを夢中で舐めた。


一足先に乾杯を終えていたマギーがカウンターテーブルに木皿と木のフォークを並べて、プレイヤーたちに取りに来るように呼び掛ける。

飲み物のおかわりが欲しい時はセルフで注ぐようにと言葉を添え、赤ワインが入ったボトルとオレンジジュースが入った瓶を指し示した。


「マリーちゃん。真珠くん。ウチが全員分の木皿とフォークを貰ってくるから待ってて」


アーシャは自分のワイングラスをテーブルに置いて言い、カウンターテーブルに向かう。

マリーはアーシャにお礼を言ってから、プレイヤーたちに自分と真珠が焼いたクッキーをすすめた。

数人のプレイヤーの手がクッキーに伸びる。

マリーは自分のワイングラスをテーブルに置いた後、真珠が焼いた星型のクッキーを手に取り、真珠の側に屈みこんだ。


「真珠。真珠が焼いたクッキー食べる?」


「わっうー!! わうう!!」


ミルクを舐めていた真珠は平皿から顔を上げ、目を輝かせて吠えた。

マリーは真珠に微笑み、クッキーを真珠の口元に寄せる。


「真珠。あーん」


真珠はマリーの手からクッキーをぱくりと食べた。

おいしい!!


「マリーちゃん。あたしも真珠くんにクッキーを食べさせてあげたいっ」


「ずるい!! わたしも!!」


プレイヤーたちがそれぞれにクッキーを手にして真珠に歩み寄る。


「真珠。お姉さんたちにクッキーを食べさせてもらう?」


「わんっ!!」


マリーに問いかけられて、真珠は力強く肯いた。

クッキーは甘くておいしい。真珠はクッキーをたくさん食べたい!!

真珠の意向を確認したマリーはプレイヤーたちに頭を下げて口を開いた。


「お姉さんたち、真珠にクッキーを食べさせてあげてください。よろしくお願いします」


「任されました!!」


「真珠くん。口を開けてね。はい。あーん」


真珠がプレイヤーたちに囲まれ、クッキーを食べさせてもらう様を見てマリーは思う。

これが……ハーレム……!!

マリーは真珠とプレイヤーたちからそっと離れてひとり静かにソファーに座り、オレンジジュースが入った自分のワイングラスを手にして一口飲んだ。


***


紫月19日 夕方(4時20分)=5月15日 20:20



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