第三百三十九話 マリー・エドワーズと真珠は女子会に参加する
動く階段が階下に下りきり、アーシャとマリー、真珠は動く階段を下りた。
アーシャは、正面の壁にある扉を開けた。
マリーと真珠はアーシャの後に続く。
マギー・ジレンホールのルームはカントリー調で、温かみがある木目の大きなテーブルの上にはおいしそうな料理やお菓子が並んでいる。
部屋には白いソファーといろいろな形の木目の椅子が雑多に置かれていて、室内には15人ほどのプレイヤーがいるようだ。
「みんなー!! マリーちゃんと真珠くんが来たよー!!」
アーシャが叫ぶと、室内にいたプレイヤーたちが歓声をあげた。
マリーは『マリー・エドワーズ様』と叫ばれる恐怖に身体を震わせたが、普通に歓迎されただけだった。よかった。
「マリーちゃん。真珠くん。ようこそ。私はこの『ルーム』の主、マギー・ジレンホールよ」
長身で赤毛、浅黒い肌のセクシーな女性がマリーと真珠に歩み寄り、微笑んで言った。
「はじめましてっ。マリー・エドワーズです。5歳です。おうちは『銀のうさぎ亭』という宿屋兼食堂です。よろしくお願いします」
マリーはマギーに頭を下げてそう言った後、自分の隣に立っている真珠を抱き上げた。
「この子は私のテイムモンスターの真珠です。白い毛並みと青い目が綺麗な男の子です」
「わんわぅわう。わうわうわぉん」
マリーに抱っこされながら、真珠はマギーに頭を下げた。
マギーは真珠を熱く見つめて口を開く。
「真珠くん、可愛いー!! 私にも抱っこさせて……!!」
マギーの言葉を皮切りに、室内にいたプレイヤーたちが真珠を抱っこしたマリーの周りに集まってきた。
幼女のマリーとマリーに抱っこされた真珠は、マリーに比べて長身なプレイヤーたちに囲まれて戸惑う。
アーシャはマリーと真珠を助けるために口を開いた。
「みんな、ストップ!! 落ち着いて!!」
アーシャの声を聞いたプレイヤーたちは真珠を抱っこしたマリーから距離を取る。
マリーと真珠はほっと息を吐き、感謝を込めてアーシャに会釈した。
アーシャはマリーと真珠に微笑んでプレイヤーたちを見回し、口を開く。
「女子会に参加するメンバーが全員揃ったんだから、まずは乾杯しようよ。マギー。みんなに飲み物を用意して」
「了解っ」
マギーはアーシャの言葉に肯いてカウンターテーブルに向かう。
マリーはマギーの背中を見つめて口を開いた。
「あのっ。真珠には平皿に入れたミルクをお願いします……っ」
「わうわうわぅん……っ」
マリーと一緒に真珠も頭を下げる。
マギーはマリーと真珠を振り返って肯き、右手の人差し指と親指で丸の形を作って微笑んだ。
アーシャは三人掛けの白いソファーに座ってマリーと真珠を手招きした。
「マリーちゃん、真珠くん。こっちにおいで。立ってると疲れちゃうから座ろう」
「はいっ」
「わんっ」
真珠を抱っこしたマリーはソファーに座るアーシャに歩み寄り、真珠をアーシャの隣に座らせ、マリーは真珠の隣に座った。
真珠はマリーとアーシャに挟まれて嬉しくて尻尾を振る。
マリーはアーシャに視線を向けて口を開いた。
「アーシャさん。私、真珠とクッキーを焼いてきたんです。今、クッキーの箱を出しますね。ステータス」
マリーはアイテムボックスからクッキーの箱を箱を取り出す。
アーシャはソファーの前にある木目のテーブルの上に乗った料理の皿を少しずつ避けて、箱を置くスペースを作ってくれた。
マリーはアーシャが作ってくれたスペースにクッキーの箱を置き、蓋を開けた。
アーシャは箱の中に並んだ色とりどりのクッキーを見て、目を輝かせる。
「うわあっ。おいしそうなクッキー!! これ全部、マリーちゃんと真珠くんが作ったの?」
「私が作ったのはハート型のクッキーで、真珠が作ったのは星型のクッキーです。その他のクッキーは領主館の料理人さんが作ってくれた物だと思います」
「わんっ」
マリーの言葉に真珠が肯いた直後に『ルーム』の主のマギーの声が部屋に響く。
「飲み物、赤ワインがいい人は手をあげて!!」
マギーの言葉に応えて9人が手をあげた。
お酒が飲めるということは社会人か大学生のプレイヤーなのかもしれない。
「9人ね。オッケー。ありがとう。手を下ろしていいよ」
マギーはそう言いながら、9個のワイングラスに赤ワインを注いでいく。
ワインを注ぎながら、マギーは口を開いた。
「赤ワインを飲みたい人はワイングラスを取りに来て!!」
マギーの言葉を聞いたプレイヤーたちはそれぞれが座っていた椅子から立ち上がり、赤ワインが入ったワイングラスが並ぶカウンターテーブルに向かう。
マリーはその様子を見つめながら、にこにこして口を開いた。
「なんか女子会の始まりって感じてでわくわくしますねっ」
「わんわんっ」
マリーの言葉に真珠が肯く。アーシャも笑顔で肯いた。
「そうだね。こんな風に仲の良い友達同士で集まって騒ぐのは久しぶりだよ。すごく楽しいし、嬉しいね」
リアルでは新型コロナのせいでステイホームが推奨され、外食は感染対策をしっかりしているお店で一人か家族、できれば4人以下でと推奨されている。
ホームパーティーも非推奨だ。非推奨にも拘わらず、複数の家族で集まってホームパーティーを行った結果、クラスターを発生させたという体験談がSNSに記載されていたのを悠里は読んだことがあった。
マリーが物思いに耽っているとアーシャは口を開いた。
「マスクしないで友達と集まって、大声で喋って、笑って、おいしい料理やお菓子を食べられるっていいね」
マリーはアーシャの言葉に肯く。
真珠はマリーとアーシャの笑顔を見て、嬉しそうなのになぜか悲しそうにも見えると思って首を傾げた。
***
紫月19日 夕方(4時07分)=5月15日 20:07
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます