第三百三十七話 マリー・エドワーズはナナからクッキーが入った箱を受け取り、真珠と共に教会に死に戻る
マリーは天蓋付きのベッドの上で目覚めた。
マリーの隣で寝ていた真珠も目覚めてマリーの頬に自分の顔をすり寄せる。
「わうー。わうわぅ」
「おはよう。真珠」
マリーは真珠に挨拶をしながらベッドから起き上がる。
『女子会に行くので、着替えさせないでほしい』とログアウト前にナナに頼んでいたので、マリーは丸襟のブラウスとキュロットスカート姿だ。
「お目覚めになったんですね。マリーさん。真珠さん」
いつも目覚めた時には部屋に誰もいないことが多かったので、声を掛けられてマリーは驚く。
テーブルの上にランプを置いてレース編みをしていたナナが、マリーと真珠が起きたことに気づいて声を掛けたのだ。
ナナはマリーと真珠に声を掛けた後に椅子から立ち上がり、部屋の明かりをつけた。
マリーはベッド脇に置いていた木靴を履いて立ち上がる。真珠はベッドから飛び下りた。
部屋の明かりをつけたナナはテーブルの上に置かれた箱を手にしてマリーに歩み寄る。
「マリーさん。こちらの箱にマリーさんと真珠さんが作ったクッキーと領主館の料理人が作ったクッキーが入っています。お茶会にお持ちください」
ナナはそう言いながら箱をマリーに差し出した。マリーはナナから箱を受け取って微笑む。
「ありがとうございますっ。ナナさん」
うっかりしている性格のナナから手渡されたということが若干不安だが、今、箱の蓋を開けて中身を確かめるのは躊躇われ、マリーは受け取った箱を左腕の腕輪に触れさせて収納した。
箱を収納し終えたマリーは真珠に視線を向けて口を開く。
「真珠。『女子会』に参加するために教会に死に戻りするからね」
「わんっ」
マリーの言葉に真珠は肯く。
そして『じょしかい』が楽しみで尻尾を振った。
マリーは『ライト』を発動させて、真珠と共に教会に死に戻った。
部屋にひとり残されたナナは、光に包まれて消えたマリーと真珠を見送り、ため息を吐いた。
「聖人というのは、本当に不思議……」
教会が最優先に保護し、いつでも意志を尊重する『聖人』という存在。
聖人は、幼い頃に両親を病で失い孤児院に身を寄せることになったナナが全く信じていなかった『神』や『女神』の存在を強く想起させる。
……聖人ではないナナに、奇跡は起きなかった。
でもマリーを見ていると奇跡は存在するのだと否応なく思う。
「……仕事をしよう」
侍女長からはマリーが目覚めるまで付き添い、目覚めたら用意した菓子の箱を持たせて送り出すようにと言いつけられていた。
マリーと真珠を見送ったから、ナナは通常業務に戻る。
ナナは部屋の明かりを消し、部屋の扉を開けてから右手でランプを、左手で編んでいた鍵針と編みかけのレース編みを持って、部屋を出た。
***
マリー・エドワーズのステータス値の変化
MP 36/36 → MP 0/37
ライト レベル2(115/200) → ライト レベル2(120/200)
紫月19日 昼(3時55分)=5月15日 19:55
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