第三百三十六話 5月15日/お風呂に入って髪を乾かし終えた後にログインして、GPを獲得する



晩ご飯を食べ終えて歯を磨き、お風呂に入り終えて髪を乾かしている最中に、悠里は下腹に痛みを感じた。

生理になったのかもしれないと思いながらトイレに入ると、やはり生理になっていた。

トイレから出た悠里はため息を吐き、再び髪を乾かす。


ポニーテールも好きだし、長い髪も好きだけれど、長い髪を洗うのも長い髪を乾かすのも面倒くさい。

幼なじみで仲が良い晴菜のようなボブヘアを羨ましく思うこともあるけれど、美人の晴菜と似た髪型をして晴菜の側にいる勇気は、悠里には無い。

顔の美しさ、首の長さ、華奢な肩と綺麗な鎖骨、くびれたウェストに膝下の長さ。

まつ毛が長く、くるりと上を向いていること、肌の白さ。

晴菜の外見の美点は、たくさんある。悠里は晴菜の外見も性格も大好きだ。

でも、時々、晴菜の隣に立つのが苦しくなることがある……。


「……」


ドライヤーで長い髪を丁寧に乾かしながら、悠里はこれから参加する女子会のことを考えることにした。

少し、気持ちが上向いた。


髪を乾かし、綺麗にブラシで梳かし終えた悠里は自室に行き、電気をつけて、スマホで今の時間を確認する。

19:45だ。女子会の開始時間の20:00には少し早いけれど、ログインしよう。

ベッドの上に出しっぱなしにしていたヘッドギアとゲーム機の電源を入れ、ヘッドギアをつけた。

それからベッドに横になり、目を閉じる。


「『アルカディアオンライン』を開始します」


サポートAIの声がした直後、悠里の意識は暗転した。


気がつくと、悠里は転送の間にいた。

悠里はパジャマ姿だった。下腹の痛みや身体の怠さを感じない。

そして生理用ナプキンをつけている感覚もない。


「えっ。すごい……っ」


リアルの悠里は生理が始まり、下腹が痛くて身体が怠かった。

でも今、悠里は痛みや怠さから解放されて、身体が軽い。


「プレイヤーの意識の定着を確認しました。『アルカディアオンライン』転送の間へようこそ。プレイヤーNO178549。高橋悠里様」


「こんばんは。サポートAIさん。私、今、リアルでは生理中でお腹は痛いし身体は怠いんですけど、今はどこも痛くないし身体も軽いんですっ。すごい……っ」


悠里はジャンプしながらサポートAIに喜びを伝える。


「転送の間では高橋悠里様が望む状態の高橋悠里様として存在することが可能です」


「生理中でもお腹が痛くなくて、身体も怠くない状態でいられるっていうこと?」


「左様です」


「『アルカディアオンライン』すごい……!!」


生理中なのにお腹の痛みからも身体の怠さからも解放されるなんて!!

悠里は嬉しくてその場でくるくると回っていたが、今は回っている場合ではないと気づいた。

女子会の開始時間に遅れてしまう……!!


「サポートAIさんっ。今何時ですか?」


「現在の日時は5月15日19:49です」


「そっか。まだちょっと時間がある……っ。サポートAIさんっ。私、今日、お昼ご飯と晩ご飯を食べましたっ。GPをください……っ」


「確認します。プレイヤーNO178549。高橋悠里様の脳波確認。確認中……。トゥルース。高橋悠里様にGP2が付与されました。高橋悠里様の現在の取得GPは11GPです」


「ありがとうございますっ。GPが増えたっ。じゃあ、私、ゲームを始めますね」


「それでは、素敵なゲームライフをお送りください」


サポートAIの声に送られ、悠里は鏡の中に入っていった。



***


高橋悠里の取得GP 9GP→11GP



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