第三百三十一話 マリー・エドワーズと真珠はハンバーグのおいしさに感動し、水玉豚はどこに行けば討伐できるか侍女長に尋ねる



クッキー生地を作り終えたマリーと真珠、ユリエルはユリエルの部屋でテーブルを囲んでいた。

侍女長とナナはユリエルたちの食事の用意をするために退室し、ユリエルの護衛騎士はユリエルの部屋の前に立って護衛をしている。

マリーはにこにこしながら口を開いた。


「クッキー生地を作るの、楽しかったですねっ。私は上手にできなかったけど、ユリエル様と真珠はちゃんとできてすごいと思いますっ」


「わおんっ!!」


マリーに抱っこされた真珠は、マリーに褒められたことが嬉しくて吠え、ユリエルはすでに用意された材料を木のボウルに入れただけで褒められたことを少し気まずく思ったが、マリーが嬉しそうなので水を差すことは言わないと決めて微笑む。


夕食に供されたのはハンバーグと甘く煮たニンジン、それからコンソメのスープだった。

パンは、白くてふわふわの触感のものが出された。

真珠はマリーの膝を下りて絨毯の上でハンバーグを食べ、そのおいしさに震えた。

マリーはリアルのおいしいハンバーグをさらに超えたおいしさのハンバーグを食べて感動する。


「ユリエル様。このハンバーグ、すごくおいしいです……っ」


「わうわう……っ」


マリーと真珠はそれぞれにハンバーグのおいしさをユリエルに伝える。

ユリエルはマリーと真珠……真珠はテーブルの影に隠れて姿は見えなかったが……に微笑み、侍女長に視線を向けて口を開いた。


「グラディス。このハンバーグは何の肉なの?」


「モーモー肉と水玉豚の合い挽き肉と聞いています」


淀みなく答える侍女長の言葉を聞きながら、マリーはパーティーで食べた水玉豚のローストポークのおいしさを思い出し、深く肯く。

水玉豚。ハンバーグでもローストポークでもおいしいなんて素晴らしい。

ぜひ、水玉豚を討伐してみたい。お肉がドロップしたら家族にも食べさせてあげたい。


「グラディス様。水玉豚はどこに行けば討伐できますか?」


マリーは何でも知っていそうな侍女長に尋ねる。

マリーの質問を聞いた侍女長は眉をひそめて口を開いた。


「マリーさん。幼い淑女がモンスター討伐をするなど、いけません」


侍女長の言葉を聞いたマリーは衝撃を受けて固まる。

淑女はモンスター討伐したらダメなの……っ!?

悠里が楽しんでいる一人プレイ用のRPGではお姫様キャラやお嬢様キャラがドレスを装備してめっちゃフィールドを歩き回ってモンスター討伐をしてるのに……っ!!

フリーズしたマリーを見かねたユリエルは、マリーをフォローするべく口を開く。


「グラディス。マリーちゃんは水玉豚の生息域を聞きたかったんじゃないかな?」


「せいそくいき」


マリーはユリエルの言葉の意味が一部わからなくて首を傾げる。


「ええと、生息域っていうのは『どの区域に生息するか』ということで……モンスターがどのフィールドで出るかっていう意味だよ」


マリーはユリエルの説明を聞いて『生息域』について理解した。真珠も『せいそくいき』の意味がわかって肯く。

『生息域』について理解したマリーは、自分と真珠で水玉豚を討伐する気満々だったのだが、ユリエルの助け舟に乗ることにして口を開いた。


「そうですっ。水玉豚はどこにいるのかなあと思って!!」


「マリーさんと真珠で水玉豚を討伐に行くことはないですね?」


「……っ。無いですっ」


今は無いです!!

でも今後は討伐に行くかもしれないです……!!

マリーは心の中で言い訳をしながら侍女長を見つめる。

侍女長はマリーに疑惑の目を向けて、口を開いた。


「返事をする時に若干の間があったことが気になります。真珠。マリーさんが無茶なことをしないように、テイムモンスターのあなたがしっかり見ているのですよ」


「わんっ!!」


侍女長にマリーのことを頼まれた真珠はしっかりと肯く。

マリーのことは真珠が守る……!!

マリーは侍女長が自分より真珠を信頼している気がして少し落ち込んだ。

マリーは真珠の主なのに……。

でも真珠が侍女長に信頼されているのは嬉しいし誇らしい。

真珠は可愛くてかっこよくて賢い、マリーの自慢のテイムモンスターだ。


真珠の元気な返事を聞いた侍女長はユリエルに視線を向けて口を開いた。


「領主館で使用している水玉豚肉は、グリック村で飼育されたものです。グリック村はグリック平原にあります」


「グリック村には私のお友達がいますっ。グリック村の村長さんの娘さんですっ」


「以前、マリーさんと一緒にいたお嬢さんですね。覚えています」


侍女長の驚異の記憶力が、ここでも証明された。

短時間しか会っていない侍女長がノーマのことを覚えているのは本当にすごい。

グリック村に行ってノーマに会った時に、水玉豚のことを詳しく聞いてみよう。

マリーはそう思いながらおいしいハンバーグを堪能した。


***


紫月17日 夜(5時35分)=5月15日 9:35



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