第三百二十九話 マリー・エドワーズと真珠は侍女長の記憶力に驚き、クッキーを作るために作業台の前に移動する
マリーたちは厨房の入り口で待機していたナナと合流して、厨房内に足を踏み入れた。
「わあ……っ!!」
「わおん……っ!!」
マリーと真珠は広い厨房内を見渡し、白い厨房服を着て忙しく働く料理人たちを見て感嘆の声をあげた。
高級なレストランの厨房はこんな感じなのだろうか。
悠里はレストランの厨房をドラマ等でしか見たことがないので、実際に今目にしている光景がリアルのレストランの厨房の光景に近いのかはわからない。
「お待ちしていました。ユリエル様。お客様もようこそ」
白い厨房服を着た長身の男がそう言ってユリエルに一礼すると、付き従っていた二人の料理人が彼に倣って頭を下げた。
頭を下げている長身の男に視線を向けて、侍女長は口を開く。
「アールさん。晩餐前の忙しい時間に時間を割いてくださってありがとうございます。ユリエル様の補佐はわたくしが、ユリエル様の客人であるマリーさんの補佐はナナが担当致します」
「わんわんっ!! わんわぅ、くぅん……?」
真珠の補佐は?
そう思いながら真珠は侍女長を見つめて吠え、首を傾げる。
「真珠の補佐は……」
侍女長は真珠のきらきらした青い目に見つめられ、言い淀んだ。
「あのっ。そちらの可愛いテイムモンスターさんの補佐は私が担当させていただきますっ」
女性料理人が手をあげて言うと、侍女長は彼女に微笑んで肯く。
「それでは真珠のことはお任せしますね。エリンさん」
「わあっ。侍女長に名前を覚えて貰っているなんて、光栄です……っ」
エリンが感激した様子で頬を紅潮させて言うと、侍女長は口を開いた。
「わたくしは領主館の奥向きの責任者ですから、現在領主館で働いている者の顔と名前はすべて把握しています」
侍女長の言葉を聞いたマリーと真珠は目を丸くした。
「グラディス様。すごい……っ」
「わうう……っ」
悠里は吹奏楽部の部員全員の顔と名前が一致するかもあやしいし、クラスメイト全員の顔と名前も一致しない。
レーン卿や侍女長のように地位があるNPCはもしかしたらINT値が高いのかもしれない。
『INT値が高いと暗記する力が高まる』という説明を受けたような気がする……。
マリーが物思いに耽っていると女性の料理人の隣に立っている若い料理人が口を開く。
「では、僕の名前は……」
「そろそろ、お菓子を作り始めませんか?」
若い料理人の言葉を遮ってアールが言うとユリエルは肯いた。
「そうだね」
「本日はクッキーの材料をご用意しています。ユリエル様とお客様は作業台の前に移動していただけますか?」
「わかった」
「はいっ!!」
「わんっ!!」
ユリエルとマリー、真珠はアールの言葉に肯いて作業台の前に移動した。
***
紫月17日 夕方(4時52分)=5月15日 8:52
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます