【高橋悠里の母親と祖母の名前】第三百十六話 高橋悠里は寝過ごして母親に起こされ、学校に行っている間に『アルカディアオンライン』のゲーム機器を母親に没収される



「悠里!! 起きなさい!!」


母親に怒鳴られ、悠里はベッドの中で身を縮めた。

まだ眠い……。


「起きなさい!! 学校に遅刻するわよ!! 晴菜ちゃんを待たせることになるわよ!!」


母親は悠里の身体を揺すりながら言う。


「はるちゃんを待たせるのはダメ……」


悠里はそう言いながら眠い目をこする。

まだ眠いけれど起きよう……。

悠里が目を開けたので母親は悠里の身体を揺するのをやめた。

悠里はのろのろと起き上がる。

母親がすでに部屋のカーテンを開けているので部屋の中は明るい。

母親は仁王立ちをして悠里を睨み下ろし、口を開いた。


「早く支度をして一階に下りてくるのよ。いいわね?」


「はあい……」


母親は部屋を出て行き、悠里は制服に着替えるためにクローゼットからブラウスを手にした。


着替えを終えた悠里は朝食を食べて歯を磨き、顔を洗って髪をポニーテールに結い、そして通学鞄を持って家を出た。


悠里が学校に行った後、母親は悠里の部屋に入り、悠里が充電していた『アルカディアオンライン』のゲーム機器を段ボール箱に入れて持ち出した。

段ボール箱を持って階段を下りる母親と、悠里のメッセージを読んで包装紙と自分が作ったマスクケースを悠里の部屋に持っていこうとしている祖母が行き会う。


「緑さん。その段ボール箱は?」


祖母は悠里がいる時には母親を『お母さん』と呼ぶが二人きりで話す時には彼女の名前の『緑さん』と呼ぶ。


「悠里のゲームの機械です。あの子、今朝起きられなかったでしょう? きっとゲームで遊んで夜更かししたせいだと思うの」


悠里は昨夜は全く夜更かしをせずに眠ったのだが『夜更かししていないのだから朝起きられる』と油断してスマホのアラームをセットしなかった。

そして寝坊したため、母親に『ゲームで遊んでいたから起きられなかった』と誤解されてしまった。

緑の言葉を聞いた祖母は眉をひそめて口を開く。


「勝手に持ち出してきたの? それはよくないんじゃない?」


「中間テストも近いから、悠里は少しゲームから離れた方がいいの」


緑は頑なにそう言って階段を下りきり、段ボール箱を持って夫婦の寝室に引っ込んでしまう。

祖母は……麗奈はその姿を見てため息を吐き、呟く。


「悠里、学校から帰ってきたら驚くでしょうね。ゲームの機械が部屋からなくなっているんだもの」


だが、悠里の保護者である緑が決めたことなら仕方がない。

悠里が『ゲームで遊んでいることを母親に言わないで』と言ったので緑に黙っていたことも、麗奈の中で小さなしこりになっている。

とりあえず、麗奈は悠里が欲しいとメッセージに記載していた包装紙と麗奈が作ったマスクケースを悠里の部屋に持っていくことにした。



***


高橋悠里の母親の名前は高橋緑。


高橋悠里の祖母の名前は高橋麗奈。



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