第三百十四話 マリー・エドワーズたちは領主館に到着し、それぞれの部屋に案内されてログアウトする



マリーたちが乗った馬車が領主館前に到着した頃、雨が止み、夜空に紫色の月が輝く。

領主館の多くの部屋には明かりが灯っている。


御者が馬車の扉を開け、まずは馬車内にいた護衛騎士が一番先に下りた。

そして次に護衛騎士の手を借りてユリエルが馬車を下りる。

その後、マリーは馬車を下りたユリエルに真珠を渡し、マリー自身は御者の手を借りて下りた。

マリーは馬車を下りた後にユリエルから真珠を受け取り、抱っこする。

その後、マーキースとウェインが馬車から下りた。


御者席から下りた護衛騎士がユリエルが戻ったことを伝えるために小走りで領主館の中に入って行く。

御者は馬車を馬車置き場に戻しに行った。


領主館の中から現れた侍女長と侍女たちが整然と並び、一礼をしてユリエルとユリエルの客人たちを迎える。

ユリエルは雨が止み、紫色の月が出た夜空を見上げて口を開く。


「もう夜になったみたいだから、今夜はそれぞれに部屋で休んで明日か明後日の朝か昼に目覚められたらいいんだけど……」


ユリエルの言葉を聞いたウェインはアイテムボックスから懐中時計を取り出して時間を確認した。


「明日の朝だったら、リアル時間の三時間後ぐらいかな」


「今、リアル時間は何時くらい?」


マーキースはウェインに視線を向けて問いかける。

ウェインは少し考えて口を開いた。


「たぶん21:00は過ぎてると思う」


「じゃあ三時間後は、今日は無理かな……。明日も学校だし、お風呂に入りたいし」


マーキースの言葉にマリーも肯く。

マーキースとマリーの言葉を聞いたユリエルは侍女長にマーキースとウェインを客室に、マリーと真珠をユリエルの叔母であるレイチェルが幼少時に使っていた部屋に案内するように命じた。


侍女に案内され、それぞれの部屋に分かれたマリーたちは、それぞれにベッドに横になり、ログアウトした。


悠里は自室のベッドの上で目を開けた。

無事にログアウトできたようだ。

ヘッドギアを外して起き上がる。

それから悠里はヘッドギアとゲーム機の電源を切ってベッドから下りた。


「今、何時だろう? ウェインは『21:00は過ぎてると思う』って言ってたけど……」


悠里がそう言いながらスマホで時間を確認しようとしたその時、突然、自室の扉が開いた。


「お母さん。どうしたの?」


悠里は『ゲームをログアウトしようと決めたマリーたち、グッジョブ!!』と思いながら部屋に入ってきた母親に問いかける。

あと数分ログアウトが遅かったら、悠里が勉強をせずにゲームで遊んでいたことが母親にバレるところだった。


「お風呂が空いたから入りなさいって言いに来たのよ。まさか、ゲームで遊んでいたんじゃないでしょうね」


母親はベッドの上に放り投げてあるヘッドギアとゲーム機に視線を向けて言う。

……目ざとい。

悠里は『今、まさにゲームをやめたところだと知られるわけにはいかない!!』と心の中で気合を入れながらへらりと微笑む。


「勉強が一段落したから、今からゲームで遊ぼうと思って……」


大嘘である!!

今、まさにゲームを止めたところなのだ!!

母親は悠里に疑惑の眼差しを向けながら口を開く。


「勉強をサボって困るのは悠里なんだからね。……ゲームで遊ばずにお風呂に入りなさいよ」


「はあい!!」


大人の気を逸らすには、返事は元気よく!!

母親はそれ以上悠里に何も言わず、部屋を出て行った。


***


紫月3日 夜(5時17分)=5月11日 21:17



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る