第三百十二話 マリー・エドワーズはユリエルの思惑を知り、皆で領主館に向かうことになる



ユリエルが登録を終え、商人ギルドのギルドカードを入手したその時、ギルド登録を担当するカウンターに並ぶ者は誰もいなくなった。

受付をしていたNPC女性はウェインを呼んだ。

ユリエルは受付のNPC女性と話すウェインを見ながら口を開く。


「ウェインは受付の彼女と知り合いみたいだね」


「マーキースがオークションに出品する話をしているんだと思います」 


マリーがユリエルを見つめて説明する。


「そうなんだ」


ユリエルはマーキースに視線を向けて口を開いた。


「マーキースは何をオークションに出品するつもりなの? よかったら教えてほしい」


ユリエルに問われてマーキースは口を開く。


「クソオヤジの書斎から持ち出した金庫の中に入っていたウォーレン商会の権利書とかいろいろです。たぶんそれがあれば『ウォーレン商会の後継者』になれると思います」


「……その権利書、オークションに出すのはちょっと待ってもらえないかな?」


「いいですけど。何か考えがあるんですよね?」


マーキースに問いかけられてユリエルは肯く。


「わかりました。じゃあ、お……じゃなくてウェインにオークションの出品はいったん取りやめるって説明してきます」


マーキースはそう言って受付の女性と話しているウェインの元に向かった。

マリーはユリエルの考えが知りたくて彼を見つめて口を開く。


「ユリエル様。どうしてマーキースにオークションに出すのを待ってほしいって言ったんですか?」


マリーの言葉を聞いた真珠は『おーくしょん』の意味がわからなかったけれどおとなしく話を聞く。

ユリエルはマリーを見つめて口を開いた。


「俺、お父様に『快癒祝いにほしい物があったらなんでも買ってやる』って言われてるんだ。だから、買ってもらおうと思って。『ウォーレン商会の権利書とかいろいろ』を」


ユリエルの言葉にマリーが驚いたその時、マーキースとウェインがカウンター前から戻ってきた。

ユリエルはマーキースとウェインにも領主である父親に『ウォーレン商会の権利書とかいろいろ』を買ってもらおうと考えているということを話した。


「へえ。領主に会えるのはレアイベントだよな」


ウェインはユリエルの提案に乗り気のようだ。


「ボクは大金を確実に入手できるなら誰に売ってもいい」


マーキースは誰が『ウォーレン商会の後継者』になっても構わないと思っている。

話し合いの末に、皆でユリエルの馬車に乗り、領主館に向かうことになった。

マリーはユリエルと一緒にゲームで遊べて嬉しいと思いながら、仕事をしてくれた『祈り』スキルに感謝の祈りを捧げた。



***


マリー・エドワーズのスキル経験値が上昇


祈り レベル0(10/100)→レベル0(30/100)


紫月3日 夕方(4時53分)=5月11日 20:53

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る