第三百十話 マリー・エドワーズと真珠は祈りが通じてユリエルと会えたと大喜びをして、ユリエルは商人ギルドに登録するために列に並ぶ
見覚えのある、白地に赤いラインが入った制服を着た男たち二人が商人ギルド内に姿を現す。
マリーと真珠を領主館で門前払いしようとした男たちだ。
「……っ!!」
「ううううううううう……っ」
マリーは男たちを見て怯え、真珠はマリーの前に出て男たちを睨んで唸る。
だがマリーの恐怖は次の瞬間、霧散した。真珠はマリーの表情が晴れたのを見て、唸るのをやめる。
男たちが一礼をして迎え入れたのは、ユリエル・クラーツ・アヴィラ。
港町アヴィラの領主の子息で、マリーが会いたいと願った人だ。
「ユリエル様……っ!!」
「わうわう……っ!!」
マリーと真珠はユリエルの名前を呼びながら、彼に駆け寄る。
領主の子息らしい上品な装いをしたユリエルはマリーと真珠に視線を向けて微笑んだ。
「マリーちゃん。真珠くん」
「すごいっ。ユリエル様に会いたいって祈ったら本当に会えた……!!」
「わんわんっ!!」
マリーと真珠はユリエルに会えたことを喜び、はしゃぐ。
マリーの言葉を聞いたユリエルは首を傾げた。彼の美しい金髪が揺れる。
ユリエルが戸惑っていると感じたマリーは状況を説明するために口を開いた。
「私、さっき『ユリエル様に会いたい』って祈ったんですっ。『祈り』スキルを取得したから、祈ったら会えるかなって思って。そうしたら本当に会えた……!!」
「わうーっ!! わうう!!」
ユリエルは19:45にログインしてマリーからのメッセージを読み、商人ギルドに行けばマリーに会えるかと思って領主館から商人ギルドに向かったのだが、マリーと真珠が『マリーが祈った』ことでユリエルと会えたと大喜びしているので『祈ったから会えたっていうことでいいかな』と思いながら微笑む。
「ユリエル様も商人ギルドのギルド登録をしに来たんですか?」
「わおん?」
同じ方向に首を傾げるマリーと真珠を可愛いと思いながらユリエルは口を開く。
「うん。せっかく来たからギルド登録しようかな」
ユリエルの目的はマリーに会うことなのだが、商人ギルドにギルド登録するのも面白そうだ。
「登録受付カウンターはこっちですっ」
「わんわんっ」
マリーと真珠はユリエルをさっきまで自分たちが並んでいた列に案内する。
ユリエルの護衛騎士たちは『領主の子息』であるユリエルを列に並ばせてよいものか逡巡したが、ユリエルが楽しそうなので口出しをせずに黙って付き従うことにした。
マリーと真珠がユリエルにくっついて列に並んでいると、ギルド登録を終えたマーキースとウェインがマリーたちに歩み寄る。
ユリエルと、ユリエルの中の人である要にそっくりなグラフィックのウェインが初めて出会い、要は衝撃を受けた。
***
紫月3日 夕方(4時32分)=5月11日 20:32
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