第三百九話 マリー・エドワーズは商人ギルドのギルドカードを入手して、ユリエルに会えるようにと祈る
マリーの順番が回ってきた。
ウェインがマリーを抱っこしてカウンターの上に顔を出させる。
「あら。可愛らしいお嬢さん。商人ギルドに登録をご希望ですか?」
ウェインと親しくしているという受付のNPC女性は、マリーに笑顔で問いかける。
やはり、美人で胸が大きい。ウェインが選んで仲良くするだけのことはあると思いながらマリーは口を開いた。
「登録希望です。お金もちゃんとあります」
マリーは採取袋から銀貨5枚を出してカウンターに置いた。
「登録料銀貨5枚、確かに受け取りました。今、ギルドカードを発行するから少し待ってね。ウェイン。作業に少し時間が掛かるから彼女を地面に下ろして待っていて」
「わかった」
ウェインは受付の女性の言葉に従い、マリーを床に下ろした。
ウェインを見上げてマリーは口を開く。
「商人ギルドにも子ども用の受付カウンターはないんだね」
「マリーみたいに小さい子どもは商人ギルドの登録に来ないからな」
登録料銀貨5枚は大金だ。子どもが易々と払える金額ではない。
NPCの5歳児は悠里が憑依前のマリーがガラス瓶に貯めていた石貨や銅貨しか持っていないのかもしれない。
そして、銀貨5枚を払えるほどに裕福な家の子はそもそも働く必要がないのだと思う。
やがて、薬師ギルドや狩人ギルドでの登録手順と同じ工程を経て、マリーは商人ギルドのギルドカードを手に入れた。
「ギルドカード三枚目!! 嬉しい……!!」
「よかったな。マリー」
ウェインはそう言いながらマリーの頭を撫でた。
要に頭を撫でて貰っているようで嬉しいと思いながら、マリーは口を開く。
「抱っこしてくれてありがとう。ウェイン」
「マリー。今、絶対、先輩に頭を撫でてもらってる感じでウェインにお礼言ったでしょ?」
「くぅん?」
マーキースの突っ込みに真珠が『センパイって誰だろう?』と首を傾げる。
「違うもんっ。要先輩のことを考えてなんかいないからね……っ」
「はいはい」
マーキースはマリーの頭をポンポンと二度叩いた後、商人ギルドの受付で手続きを始める。
マリーは商人ギルドのギルドカードを左腕の腕輪に触れさせてアイテムボックスに収納した後、真珠を抱っこして列に並ぶ人たちの邪魔にならないように、列を離れた。
ウェインはマーキースに付き添う。
「ユリエル様、ログインしたかなあ」
列を離れて壁際に立ち、マリーは小さな声で呟く。
ユリエル様に会えたらいいのに。
そう思ったマリーは自分が『祈り』スキルを取得したことを思い出す。
ユリエル様に会えますようにって、祈ってみる……?
マリーは少し考えて小さく肯き、口を開いた。
「……祈ってみよう。真珠。ちょっと床に下ろすね」
「わん」
マリーは真珠の了承を得て彼を床に下ろした。
そしてマリーは胸の前で手を組み、目を閉じて祈る。
ユリエル様に会えますように……!!
「……」
祈るマリーを真珠が見つめる。
……何も起きない。
マリーは目を開けて胸の前で組んでいた手を解き、ため息を吐いた。
「私の『祈り』のスキルレベルは0だから、祈ってもダメだよね……」
「きゅうん……」
ため息を吐き、がっかりするマリーを真珠が心配そうに見つめて鳴いたその時、商人ギルドの入り口の扉が開いた。
***
マリー・エドワーズが商人ギルドに登録 スキルポイント5入手
マリー・エドワーズの現在のスキルポイント 94P→99P
紫月3日 夕方(4時25分)=5月11日 20:25
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