第三百七話 マリー・エドワーズは目覚め、自分とマーキースの商人ギルドの登録料を準備する



マリーが目を開けると、ウェインがマリーを見下ろしていた。

悠里は一瞬、ウェインのことを要と勘違いしてパニックになる。


「マリー。起きたか?」


ウェインに話しかけられて、マリーは二度瞬いた。

今、マリーを見つめているのは要ではない。


「……ウェイン」


マリーは呟いて、自分が真珠を抱っこしたまま『リープ』してしまったことを思い出す。


「真珠っ!!」


「わうーっ!!」


マリーがウェインの膝枕から、真珠の名前を叫びながら起き上がると真珠がマリーの側に駆け寄る。

マリーは身を屈めて真珠を抱きしめた。


「真珠!! よかった……!! 私、うっかりミスで真珠に状況を説明してる途中で寝ちゃったんだけど、真珠を落としたりしなかった……っ!?」


「くぅん……?」


マリーの言葉に真珠は首を傾げた。

真珠は気づいたら床に寝ていたのだ。マリーに落とされたかどうかはわからない。


「真珠のことはマーキースが受け止めてくれてたよ」


マリーの疑問にウェイン答える。マリーはほっとして微笑み、口を開いた。


「そうなんだ。よかった。ウェインも膝枕してくれてありがとう」


「どういたしまして。マーキースはまだ寝てるよ」


ウェインがそう言った直後、マーキースが目を覚ました。


「すごい。髪が乾いてる。濡れた床に寝っ転がってたから服は少しは濡れてるけど」


マーキースはそう言いながら起き上がる。


「プレイヤーはこういう裏技が使えるからNPCより便利だよな。じゃあ、商人ギルドの登録に行こうか」


ウェインはそう言いながら立ち上がった。


「商人ギルドの登録料っていくらなの?」


マリーは真珠を抱っこしながらウェインに問いかけた。


「銀貨5枚。5000リズだな」


「そっか。じゃあお金を取り出しておこうかな。真珠、床に下ろすね」


「わんっ」


マリーは真珠を床に下ろして口を開いた。


「ステータス」


マリーはアイテムボックスから採取袋を取り出して身に着けた。

それから銀貨5枚を取り出して採取袋の中に入れる。


「あ……じゃなくてボクはお金持ってないんだよな。先に家から持ち出した商品を売ればお金を作れると思うんだけど」


「じゃあ、マーキースには私がお金を貸すよっ。ギルド登録しないと商人ギルドでの売買とかできない感じなんでしょ?」


マリーはうなるほど持っているお金を今こそ、幼なじみのために使おうと張り切る。

本当は『貸す』のではなく『あげる』のでも良いのだが、それでは晴菜が気にするかもしれない。

銅貨5枚なら気兼ねなく奢られるかもしれないけれど、銀貨5枚は大金だ。


『アルカディアオンライン』はプレイヤーレベルを上げればゲーム内通貨をリアルマネーに変換できる。

だから銀貨5枚は5000円になる。貰うには大金だとマリーは思う。


「マーキースの登録料は俺が出すよ。兄貴だからな」


「お……じゃなくてウェインの施しは受けない。リアルで貸しにされると面倒くさいから。マリーに借りる」


「任せてっ」


マリーはマーキースに頼りにされて嬉しくて、胸を張る。

そしてアイテムボックスから銀貨5枚を取り出してマーキースに渡した。


「ありがとう。マリー。へえ。銀貨ってこんな感じなんだ」


マーキースは手の中の銀貨を眺めて呟き、銀貨5枚をベストのポケットにしまった。



***


※マリー・エドワーズの所持金から10000リズ(銀貨10枚)が減る


マリー・エドワーズの所持金 6580601リズ→ 6570601リズ


紫月3日 夕方(4時03分)=5月11日 20:03



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