第三百六話 マリー・エドワーズたちは商人ギルドの建物に入り『リープ』して濡れた身体を乾かす
道を覚える間もなく、マリーたちは『商人ギルド』という看板を掲げた建物の前に到着した。
ウェインは抱きかかえていたマリーと真珠、マーキースを下ろした。
『商人ギルド』の建物はレンガ造りで上品な印象だ。
濡れまくっているマリーたちが入っても大丈夫だろうかと心配になったが、ウェインは特に躊躇うこともなく商人ギルドの中に入っていく。
真珠を抱っこしたマリーとマーキースはウェインの後を追った。
商業ギルドに入ったウェインは壁際を歩き、人がいない隅に座り込む。
ウェインは後をついてきた、真珠を抱っこしたマリーとマーキースに視線を向けて口を開いた。
「転送の間に行ってすぐにまた戻るから、ちょっと待ってて。リープ」
座り込んだウェインが眠り込む。
「お……じゃなくてウェインはどうしちゃったの?」
マーキースの問いかけにマリーが考え込んだその時、ウェインが目を覚まして立ち上がった。
濡れて雫が落ちていた髪がすっかり乾いている。服もだ。
「いい感じに乾いた。マリーとマーキースも転送の間に行って、またすぐに戻って来いよ」
「そういうことね。了解っ。真珠、濡れたのを乾かすためにリープ」
真珠に説明をしている途中でマリーは『リープ』状態になり、寝た。
真珠を抱っこしたままぐらつくマリーの身体をウェインが支える。
マリーの腕から零れ落ちた真珠をマーキースが抱き止め、そっと床に横たえた。
「マリーは本当にうっかりしてるよなあ。言ったら発動するのにさ」
ウェインはそう言いながら、床に座り込み、マリーの頭を自分の膝に乗せる。
「そうやってるとマリーが藤ヶ谷先輩に膝枕をされてるように見える」
マーキースはウェインに膝枕されているマリーを見つめてぼそっと呟く。
「藤ヶ谷先輩?」
マーキースの呟きを聞いたウェインが首を傾げた。マーキースはただ首を横に振り、その場に座る。
それから口を開いた。
「リープ」
悠里は真珠に説明をしている途中で『リープ』して転送の間に戻ったことに気づいて、自分の『うっかり』にがっかりした。
マリーが抱っこしていた真珠を落とさないか心配だったが、あの場にはウェインとマーキースがいる。
きっと、なんとかしてくれているはずだと悠里は思う。
そして、ゲームに戻る前に、サポートAIに現在の時間を聞こうと口を開いた。
「サポートAIさん。今何時ですかっ?」
「現在の日時は5月11日19:58です」
サポートAIの言葉を聞いた悠里は項垂れた。
「うう。20:00に領主館に戻るのは無理っぽい……。ユリエル様にメッセージを送ろう。ステータス」
悠里は『今、商人ギルドにいます。20:00に領主館に戻るのは無理そうです。ユリエル様と遊べないのはすごく寂しいですけど、今日はマーキースと遊びますね。また明日、部活で会えるのを楽しみにしています』と記載してユリエルにメッセージを送信した。
「送信終わり。サポートAIさん。私、もう行きますね」
「それでは、素敵なゲームライフをお送りください」
サポートAIの声に送られ、悠里は鏡の中に入っていった。
***
紫月3日 昼(3時58分)=5月11日 19:58
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