第三百五話 マリー・エドワーズはマーキースとメッセージのやり取りをした後、雨にうたれながら『商人ギルド』に向かう
「ねえ。マリーは今、何をしてたの?」
ユリエルにメッセージを送信し終えたマリーを見つめてマーキースが問いかける。
「フレンドにメッセージを送ってたの。ステータス画面の『フレンド機能』を使うとフレンドにメッセージを送れるんだよ」
「そうなんだ。やってみよう。ステータス」
マーキースは虚空を見つめてメッセージを記載している。
マリーはマーキースを見守りながら『この動作をNPCが見たら不審者扱いされても仕方ないかなあ』という気持ちになった。
「今、マリーにメッセージを送ったよ」
マーキースがそう言うと同時に可愛らしいハープの音が鳴った。
メッセージが届いたようだ。
「メッセージを確認するね」
マリーは目の前に出しっぱなしにしていたステータス画面の『フレンド機能』をタップしてマーキースからのメッセージを確認する。
♦
マリーとフレンド登録できて嬉しい。一緒にゲームで遊べることも嬉しい。
♦
「は……じゃなくてマーキース可愛い……っ」
マリーは『私もマーキースとフレンド登録できてよかった!!』と記載して返信した。
「マーキース。返事を送ったよ」
「確認するね。でも返信来てもわかんないのは不便じゃない?」
マリーからのメッセージを確認しながらマーキースが言う。
マリーはマーキースの言葉を聞いて口を開いた。
「私は転送の間でサポートAIさんにフレンドからのメッセージが来たら通知音が聞こえるように設定してもらったよ」
マリーの言葉を聞いたウェインが口を開く。
「『フレンド機能』の『フレンド設定』からメッセージ通知設定を変えられるぞ」
「そうなんだ。やってみる」
マーキースがフレンド設定でメッセージ通知設定を変えたところで階段を上がり切った。
そしてマリーたちは『フローラ・カフェ港町アヴィラ支店』を後にする。
復活地点の魔法陣がある部屋を抜け、礼拝堂を通り過ぎて教会を出た。
教会を出ると雨が降っていた。
黒雲を見上げながらマリーは口を開く。
「ウェイン。傘って持ってる?」
マリーがウェインに問いかけると、ウェインは首を横に振って口を開いた。
「持ってない。俺たちはプレイヤーだし、真珠はテイムモンスターだし濡れても平気だろ?」
確かにウェインの言う通りだ。
ウェインは雨の中、足を踏み出した。
マリーは真珠を抱っこして、マーキースと並んでウェインの後にくっついて雨の中を歩く。
大通りを歩く人たちの多くは傘をさしていないが身なりがよいNPCの中には傘をさして歩く者もいる。
「雨に濡れながら歩くの、なんか楽しいね」
笑顔で言うマリーに、マーキースは顔をしかめた。
「あ……じゃなくてボクは傘が欲しい。服が濡れて肌に貼りついて気持ち悪い」
マーキースの言葉を聞いたウェインは振り返って口を開く。
「じゃあ、ちょっと急ぐか」
ウェインはそう言いながら真珠を抱っこしたマリーを右腕に、マーキースを左腕に抱き上げた。
そして、大通りの人波を縫って走り出す。
能力値が高いウェインは腕力が強く、足が速い。
「お兄……じゃなかったウェインすごい……っ」
「速いねえ。楽しいねっ」
「わんわんっ」
マーキースとマリー、真珠はウェインに抱きかかえられた移動をジェットコースターに乗った時のようにはしゃいで、楽しんだ。
***
紫月3日 昼(3時52分)=5月11日 19:52
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